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【農業技術・経営情報】環境保全型農業:GLOBALG.A.P.について

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0394557 更新日:2021年2月1日更新

 食の安全・安心に加え、環境負荷の軽減や労働安全の確保に配慮し、適正に農業生産を行う事が農業者に求められています。この適正な(良い)農業生産活動そのものを 「GAP(Good Agricultural Practice:ギャップ)」 と言います。

 この GAP に取り組むためには 「農産物の安全性確保」、「環境の保全」、「作業者の安全確保」 などの幅広い分野を対象に、農業者自らが農業生産活動に潜むリスクを見つけ出し、それを未然かつ効果的に排除する、または軽減していく改善活動を持続的に行う 必要があります。

 欧州では、1970年代から GAP の基本的な 考え方 (以下 「 GAP 規範 」 という )や GAP が行われているかどうかの評価規準(以下 「 GAP 規準 」 という) を定め、 2000 年はじめには GAP の第三者認証制度が構築されました。
 この第三者認証制度の中で国際的に最も多く取り組まれ、事実上の国際標準として普及しているのが GLOBALG.A.P. (グローバルギャップ)です。

1 GLOBALG.A.P. の成り立ち

 欧州では、1970年頃から環境汚染対策が重視されるようになり、環境保全(持続型農業)や景観維持などを基軸とするGAP規範が各国で作られました。
 一方、欧州連合(EU) として農産物の輸出入が広域に行われるようになり、食品の安全性の確保が大手小売業者にとっては重要な課題となりました。

 そこで、欧州各国の大手小売業者、農業者、農業者団体、食品製造業者等が連携し、欧州小売業団体EUREP(Euro-Retailer Produce Working Group:ユーレップ)という組織を作り、各国にあるGAP規範の共通部分を統合するとともに、その農場が農産物の安全性と環境保全、労働安全等の確保を図って生産しているかを保証する第三者認証制度を構築しました。
 これによって2001年から始まった認証制度が GLOBALG.A.P. の前身である EUREPGAP(ユーレップギャップ) 認証制度です。

 その後、この認証制度はEUREP 加盟小売業者が農業者との取引条件として、指定したことから世界中に認証取得農場が広がりました(2007年に GLOBALG.A.P. と改称)。
 現在、この認証制度の基となる GAP 規範や GAP 規準は、ドイツの非営利会社GLOBALG.A.P. c/o FoodPLUS GmbH(以下 「フードプラス」 という)が管理 ・運用しており、これに基づき認証機関(会社)が審査や認定を行っています。

 なお、フードプラスが各認証機関を「GLOBALG.A.P. 認証機関」として認定しているわけでは無く、国際的な認証機関同士が指針を定め、そこで認められた認証機関が審査・認定を行う事で国際的な認証としての信頼性を確保しています 。

 2016年2月現在、世界 125 ヶ国、約 15.5 万経営体が認証されており、日本では同年 3 月末現在、340 件が認証されています。

2 GLOBALG.A.P. 認定制度について

 GLOBALG.A.P. を取得するためには、国際的な審査・認証機関との契約や、様々な事務処理を行う必要があることから、一般的に外部専門家とコンサルタント契約を結び、指導してもらう事例が多く見られます。
 特に、認証の基準となる文書は、「総合農場認証基準(IFS)」としてまとめられていますが、その内容はヨーロッパの気候・風土・思想を反映しているため、一読しただけでは「何を求められ、何をすれば審査に合格するのか」が理解できない項目が多く見られます。その点からも、外部専門家の協力を得ることが重要になります。

 GLOBALG.A.P.の総合農場認証基準は、認証の規則をまとめた 「一般規則」 と各生産分野や生産活動毎に 「管理点と適合基準」 等 をまとめた基準文書で構成されています。
 なお、基準文書には、まず全農場を対象とした事項(All farm base 、 AF) が記載されており、その下に 、作物(Crops base、CB )、水産養殖 (Aquaculture standard 、 AB )、家畜 (Livestockbase、 LB) に分けて具体的事項が記載されています。
 さらに、作物 を対象とした事項の下に、青果物(Fruit & Vegetables 、 FV) 、花き及び 観賞用植物(Flowers & Ornamentals 、FO )、穀物 (Combinable crops 、 CC )、茶 (Tea 、 TE )、繁殖苗(Plant propagation material 、 PPM )に関する 詳細事項が記載されています。

 この基準文書 (GLOBALG.A.P. 基準文書 5.0-1 版) は、「GLOBALG.A.P.協議会」のホームページからダウンロードできます。
 基準文書に書かれている管理点と適合基準は最大で 230 項目以上あり、上位の義務(Major Must)、 下位の義務(Minor Must)、推奨事項 (Recommendation)に分かれており、上位の義務は100%、下位の義務は95%以上取り組んでいないと認証が取得できません。
 管理点と適合基準は、おおまかに(1)食品安全、(2)環境・生物多様性、(3)トレーサビリティー、(4)労働者の福祉に分かれています。なかでも、食品安全に関する項目が半数を占め、食中毒につながる微生物汚染を防止するための項目が多く見られます。

3 今後の情勢

 農林水産省では農産物の輸出促進や、 東京 2020 オリンピック・パラリンピック競技大会の食材調達要件を満たす農産物として、GLOBALG.A.P. 等の認証GAPの取得を推進しています。
 今後、日本への外資系食品流通企業の進出も予想されることから GLOBALG.A.P. 認証取得の必要性は、徐々に高まると思われます。

 このような情勢の中、本県の農業大学校では、平成28年春から稲作経営科の1学年が中心となり、 GLOBALG.A.P. 認証取得に取り組みました。その結果、9月28日に認証機関の審査を受け、11月 21日付けで認証を取得しました。農業大学校のGLOBALG.A.P. 認証取得は、全国初となります。

 

【経営普及課 農業革新支援担当 石沢 隆明 】

 

 

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