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【農業技術・経営情報】果樹:モモせん孔細菌病の発生状況と対策について

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0355243 更新日:2021年2月1日更新

 新潟県では近年、モモせん孔細菌病の多発生が問題となっており、平成17年から10年間の県病害虫防除所の調査を見ても、少発生年が1回のみで、中発生年3回、多発生年3回、甚発生年3回です。細菌が病原となる本病は難防除病害とされており、様々な要因から発病の軽減が難しいのが現状です。
 そこで、病害虫防除所の平成17年から10年間のデータを基に、新潟地域における近年の発生状況を踏まえ、防除対策について検討を行いました。

1 近年の発生状況

 新潟地域(新潟市南区、西蒲区)のせん孔細菌病の発生状況は多発生だった6年の発病葉率を図1に示しました。多発生年の傾向として7月後半から発病が急増している傾向が見られます。

「図1せん孔細菌病の多発生年の発病葉率の推移」の画像
図1 せん孔細菌病の多発生年の発病葉率の推移

2 発病状況と気象要因の関係

(1)生育期間中の気象要因との関係

 一般的に、せん孔細菌病は風が強い地域で雨が多いと発病が多くなると言われており、和歌山県では生育期(4月下旬~5月下旬)において、最大風速10m/s以上でかつ降水量2mm以上の条件を満たす風雨日数と7月中旬の発病葉率に有意な正の相関が見られたと報告しています。
 そこで新潟地域での発病と風雨(アメダス地点:新津)の関係を見たところ、7月前半の発病葉率と最大風速3m/s以上かつ降水量2mm以上の日数に相関が見られました(図2)。
 新潟県では和歌山県よりも風速が弱くても、降雨日数が多いと発病が多くなることがうかがわれます。

「図25~6月の風雨の条件と7月前半の発病葉率の関係」の画像

図2) 5~6月の風雨の条件と7月前半の発病葉率の関係

(2)収穫後の気象要因との関係

 収穫後、秋季の降水量が多いと2次感染が増加し、この時期の感染が越冬細菌量の増加につながり、翌年春の春型枝病斑が増加すると言われています。
 そこで、新潟地域の秋季の降水量と翌年5月の発病葉率の関係を見たところ、9月~10月中旬の降水量と5月下旬の発病葉率に高い相関が見られました(図3)。

「図39月~10月中旬の降水量と5月後半の発病葉率の関係」の画像

図3) 9月~10月中旬の降水量と5月後半の発病葉率の関係

3 これらの結果を踏まえた防除対策

(1)薬剤防除

 県内のももの防除暦は、せん孔細菌病対策を重点として作成されていますが、せん孔細菌病が多発生の状態では防除効果も期待できないため、効果的な防除を行うには初期発生を軽減させることが重要です。初期発生を軽減させるためには春型枝病斑を減らすことが必要で、秋季の降水量と翌年春の発病程度に関係があることから、秋季防除の徹底が重要です。特に、秋季の降水が多い場合は、収穫後10月中旬頃まで必ず定期的に防除を実施します。

(2)耕種的防除

○春型枝病斑のせん除
 春型枝病斑が感染源になるので、病斑の除去が発病の軽減につながります。4月下旬頃から病斑のある枝をせん除します。

○防風対策
 今回の調査から、県内平坦地では5~6月は風速が弱くても7月の発病と関係があることから、防風施設の設置は必須となります。

 また、この時期の風向は一定方角だけではないので、防風施設設置方角には注意が必要です。

「春型枝病斑」の写真
春型枝病斑

 今回はデータの関係から新潟地域の平成17年から10年間の検討を行いましたが、今後も発病状況を踏まえ、県内のせん孔細菌病の発病軽減に向けた取組を進めていきます。

 

【経営普及課 農業革新支援担当 大村 宏和】

 

 

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