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【農業技術・経営情報】果樹:セイヨウナシ褐色斑点病の発生状況と防除方法について

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0355121 更新日:2021年4月1日更新

 西洋なし「ル レクチエ」は、にいがたフード・ブランド品目であり県内で104ha(令和2年度農林水産統計)栽培されています。「ル レクチエ」の栽培において、褐色斑点病の初発が平成18年に確認され、徐々に県内全域に発病が広がりました。県では平成25年に褐色斑点病対策としての研究成果「殺菌剤散布と早期袋掛けの組み合わせによるセイヨウナシ褐色斑点病の果実被害低減法」を公表しましたが、平成26、27年と多発生となりました。
 本病には特効的な薬剤がないため、いったん菌密度が上がると薬剤散布だけでは発病を抑えることができません。そこで平成27~28年に実施した耕種的防除を含めた取組について紹介します。

1 褐色斑点病の感染経路

 褐色斑点病は糸状菌を病原とし葉や枝、果実で発病します。発病のサイクルは(1)3月以降病落葉から胞子が飛散し、最初に果そう葉や幼果に感染、(2)果そう葉や幼果の感染後、新梢の新葉に感染、(3)新梢の新葉に感染すると、新梢での感染を繰り返し被害葉が増加、(4)落ちた被害葉や被害果、新梢の枝病斑が翌年の感染源になります。翌年の感染源のうち病落葉が最も大きな割合を占めるため、落葉収集を中心とした耕種的防除(他に被害果、枝病斑の園外への持ち出し)が重要になります。

2 耕種的防除について

 耕種的防除について、これまでトラクターによる落葉のすき込み等を実施してきましたが、落葉をきれいに土中に埋設させるには至らず、発病を減らすことができませんでした。
 一方、佐渡市羽茂地区では平成25 年以降落葉収集後土中に埋設することで、翌年の発病を軽減させた園地があり、発病抑制に有効な手段であるが確認されました。そこで、平成27年11月から3月までの間、関係機関・団体が一体となって落葉収集の取組を進めました。
 この結果、平成28年の発病状況は県内13カ所の調査地点で図1、2のとおりとなりました。発病葉率、発病果率とも前年(平成27年)が少発生の園地では発病率が低く推移しましたが、前年多発生であっても落葉収集をした園地は、発病を抑えることができました。

「図1前年の発病状況と落葉処理が」の画像
図1 前年の発病状況と落葉処理が褐色斑点病の発病葉率に及ぼす影響

 

「図2」の画像
図2

 落葉収集前には落葉数は900~1,000枚/平方メートル程度ありますが、集葉後のほ場残葉数を50枚/平方メートル以下にすると、発病率が低くなる傾向が見られました。落葉収集は(1)集葉前に除草剤散布し葉を集めやすくする、(2)ブロワーで集めやすい場所に葉を吹き出す(図3)、(3)熊手や収集機等で集葉し園地内に埋設または園外に持ち出す(図4)、の手順で行うと効率的です。
 また、効率的に集葉するために機械利用や防草シート等の設置を行っている園地(図5)もあり、今後より効率的な集葉に向けた実証等を行っていく必要があります。

「図3ブロワーで葉を集めやすい場所に吹き出す」の写真
図3 ブロワーで葉を集めやすい場所に吹き出す

「図4集めた葉を機械で収集」の写真
図4 集めた葉を機械で収集

「図5防草シートを用いた落葉収集」の写真
図5 防草シートを用いた落葉収集

3 薬剤防除

 平成27年に防除暦を根本的に見直し、褐色斑点病対策を重点に置いたものに変更しました。また、褐色斑点病に登録のある新規殺菌剤3剤が平成 28 年 12 月に登録(あと2剤が登録申請中)され、防除暦に追加しています。
 また、発病が少なかった生産者へ褐色斑点病対策として注意した点を聞いたところ、「定期的な薬剤散布」「薬剤の降雨前散布」が最も多く「日本なしの収穫が始まっても褐色斑点病防除を実施した」「SSの走行路を代えるなど散布ムラが出ないようにした」があげられました。ていねいにムラなく薬剤散布することが、重要であることが再確認されました。

4 おわりに

 果樹栽培において、褐色斑点病と同様に病落葉が翌年の感染源になる病気に「なし黒星病」や「かき落葉病」があり、これらの病害においても落葉収集は重要な耕種的防除法です。しかしながら、これらの取組があまり行われていないのが現状です。
 富山県では平成27年に「なし黒星病」が多発生し、出荷量が減少しました。そこで、地域全体で落葉処理を進めたところ、処理後はほとんど黒星病の被害がなかったとの報告がありました。このような事例を考えると、薬剤だけで防除が徹底できない病害こそ、耕種的防除が必要であると考えられます。引き続きこれらの防除法の重要性を踏まえた防除対策を実践していきたいと考えています。

 

【経営普及課 農業革新支援担当  大村 宏和】

 

 

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