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【農業技術・経営情報】花き:トルコギキョウの土壌病害防除を目的とした「糖含有資材を用いた土壌還元消毒法」のポイント25

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0354025 更新日:2021年2月1日更新

令和2年3月・農業革新支援担当情報(新潟県 農林水産部 経営普及課)

 県内のトルコギキョウ産地では、連作等の影響で青枯病・茎枯病等土壌病害の発生が問題となっています。本資料は令和元年度研究成果情報に基づき県内2か所の切り花ハウスで現地実証を行い、糖含有資材を用いた土壌還元消毒の手順やポイント◆をとりまとめたものです。ポイントの多くは、ユリ切り花等で普及している米ぬかを用いた通常の土壌還元消毒にも応用できる内容ですので、効果的な土壌消毒の実施に向けてご活用ください 。

トルコギキョウの花の写真
トルコギキョウの花

トルコギキョウ青枯病の写真
トルコギキョウ青枯病

1 メリット

(1)米ぬかを用いた方法に比べて、より深く(地下60cm程度)まで消毒が可能
(2)糖蜜を用いた方法に比べて、液肥混入機が不要で、処理労力が軽減
(3)窒素含有量が少ないため消毒時の悪臭(ドブ臭)が少ない

2 処理条件

(1)地下40~60cmの平均地温が30℃以上(実施可能期間6月~9月)
(2)湛水状態になるまで注水(1平方メートル当たり標準150L)して還元状態を維持
(3)処理期間3週間以上(地温が低い場合は長めに)

3 作型と処理のタイミング

作型と処理のタイミングの表

4 糖含有資材について

(1) 糖蜜吸着資材

大豆の薄皮に糖蜜を吸着させた畜産飼料25kg/袋、粒状)
[成分%:N-P2O5-K2O=1.3-0.18-3.2]

糖蜜吸着資材の写真
糖蜜吸着資材

(2)糖含有珪藻土

珪藻土にタピオカ澱粉を付着させた資材(25kg/袋、粉状)
[成分%:N-P2O5-K2O=0.7-0.14-0.03]

糖含有珪藻土の写真
糖含有珪藻土

5 処理の実際とポイント

(1)糖含有資材の散布

糖蜜吸着資材もしくは糖含有珪藻土を10a当たり1トン以上ほ場全面に散布

◆手作業で散布する場合、ハウスの骨の数などを目安に一定面積ごとに資材袋を配置しておく。
◆ハウス規模が大きい場合はブレンドキャスタ等の散布機を使って均一になるように散布する。

糖含有資材の散布の写真

(2)耕うん

 丁寧に2回耕うんし、資材を土壌に混和

◆できるだけハウスサイドの際まで耕うんすると土壌消毒の効果が高まる。
◆ハウスサイドや出入口側は凸凹がないように均等にならしておく。

耕うんの写真

(3)かん水チューブの設置

60cm間隔で穴を上向きに散水チューブを配置

◆注水ムラが生じないよう60cm間隔を目処に設置する。
◆被覆前に散水し、目詰まりや漏水等は補修しておく。

「かん水チューブの設置」の画像

(4)ビニール被覆

廃ビニール等で土壌表面を被覆

◆空気を遮断するため穴があればふさいでおく。
◆ビニールを2枚使う場合は十分な重なりを設ける。
◆ハウス両端は鉄パイプ等を重しにして固定する。

「ビニール被覆」の画像

(5)注水・ハウス密閉(3週間以上)

1平方メートル当たり150Lの水を注水(土壌条件によって増減あり)し、ハウスを密閉

ハウスの写真
◆水圧が不足する場合は散水チューブを数ブロックに分けて、時間差で注水する。
◆水のかかり具合がわかりにくい場合は、注水後にビニール被覆してもよい。

暗渠の写真
◆暗渠が敷設されている場合は、あらかじめ排水口を閉めておくか、L字管で水位を上げておく。

スコップで水道をつくっている写真
◆ハウスの前後等水のかかりにくいか所はスコップで水道(みずみち)をつけてやる。

水の浸透状況を確認するためイボ竹をさしている写真
◆イボ竹を小刻みに刺して水の浸透状況を確認する。60~80cmの深さまで挿入できればOK。

(6)再注水

注水から3~7日後、1平方メートル当たり50L程度再注水(前回浸透が不十分なか所から優先的に浸水する)

◆地温の低下を防ぐため、晴天時を選んで実施する。
◆水のかかりの悪かったか所はチューブを移動させるなどして確実に注水・浸透させる。
◆還元状態が始まっていると特有のドブ臭がしてくるので確認する(米ぬか施用時ほどはきつくない)。

(7)ハウス解放・マルチ除去・耕うん

3週間の処理が終了したらハウスを解放し、マルチを除去
水が引いてトラクターが入れるようになったら20cm深で1回耕耘(酸化状態に戻す)

◆暗渠排水を止めている場合は忘れずに解放する。
◆病原菌持ち込みによる再汚染を防止するため、トラクターのタイヤやロータリー、長靴、クワ等の農具類は事前によく洗浄しておく。

(8)その他のポイント

◆処理後最初の3日間の地温が重要であるため、天気予報を確認して晴天が続く日を選んで処理を開始する。
◆晴天時のハウス内は高温となるため、体調管理に十分注意し、高温時は複数人で作業を行う。
◆暖房機のあるハウスでは、高温による故障を避けるため、制御盤や付属コード類は外して涼しい場所に保管する。
◆資材の分解が早いため、資材すき込み後は、速やかに注水作業を行う。
◆処理後は利用できる窒素成分が増加するため、作付前に土壌診断してから基肥を施用する。

6 他の土壌還元土壌消毒との経費、特徴の比較

還元土壌消毒との経費、特徴の比較
  糖含有珪藻土 糖蜜吸着資材 糖蜜 米ぬか・ふすま ダゾメット剤
経費 13万円見込/10a 15万円前後/10a 10万円前後/10a 5万円前後/10a 6~8万円/10a
特徴 ○環境にやさしい。
○地下60cm程度まで消毒できる。
○処理労力・時間が軽減。
○消毒時の臭いが少ない。
▼資材価格が高い。
○環境にやさしい。
○地下60cm程度まで消毒できる。
○処理労力・時間が軽減。
○消毒時の臭いが少ない。
▼資材価格が高い。
○環境にやさしい。
○地下60cm程度まで消毒できる。
▼処理労力・時間が必要。
○消毒時の臭いが少ない。
▼液肥混入器等が必要。
○環境にやさしい。
○資材を入手しやすい。
▼深耕ロータリーを使わないと地中深くまで消毒できない。
▼消毒時のドブ臭が強い。
○冬期間でも消毒効果が得られる。
○処理時間が短い。
▼地中深くまで消毒できない。

※新規土壌還元消毒を主体としたトマト地下部病害虫防除体系マニュアル(農研機構)を一部改変。
※○はメリット、▼はデメリットを表す。

 

 

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