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【農業技術・経営情報】花き:連作が可能なアスターの簡易養液栽培

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0350841 更新日:2021年2月1日更新

1 はじめに

 アスターは盆花に不可欠な切り花で、盆前出荷では比較的有利な品目です。近年は、花束や盛り花に利用できるアレンジメントアスターと呼ばれる小輪タイプの品種が増加しており、年間を通した需要も期待できます。しかし、土耕栽培では連作を嫌い、5年以上の作付け間隔が必要なため、ほ場の確保が課題となります。

 そこで、園芸研究センターでは、連作の影響を受けにくい簡易な装置による養液栽培法を確立しましたので、ご紹介します。

「花」の画像

2 栽培装置の概要

(1)

 木材、丸形鋼管、農ビ等を使用してできるだけ水平に栽培槽を作製します(図1)。チューリップ切り花の養液栽培用の栽培槽があれば、そのまま活用できます。

「図1栽培槽の設置例」の画像
図1 栽培槽の設置例

(2)

 栽培槽に発泡スチロール板を置き、その上に長繊維不織布(注1)を敷いて栽培床とします。また、栽培床の乾燥防止用に定植用の穴を開けた白黒ダブルマルチを浮きがけで被覆します(図2)。

(3)

 培養液は、給排液タンクに入れた電動ポンプにより揚水し、栽培床上に設置した点滴チューブ2)から給液します。余剰の培養液はふたたび給排液タンクに集められ、再利用されます。給排液タンクの培養液が不足してくると、ボールタップ式給水弁により追加培養液タンクから自動給液されます(図2)。

(4)

 土耕栽培と比べると根元の支持が弱く倒伏しやすいので、栽培に際しては支柱を立てた上でフラワーネットを張ります(図2)。

「図2栽培装置の概要」の画像
図2 栽培装置の概要

3 栽培管理

(1)は種

 ミツバ栽培用ウレタンキューブを充填した発泡スチロール製育苗箱(内径575×275×30mm)に飽水し、キューブのスリットに種子を軽くはさむ様にしては種します(図3)。
 は種後、育苗箱をふたにして遮光し、根がキューブのスリットの中に差し込むのを確認してからふたの育苗箱を取り除きます(図3)。

「図3ウレタンキューブへのは種方法」の画像
図3 ウレタンキューブへのは種方法

(2)育苗・定植

 発根後は、園試処方に準じた培養液(注3)(以下培養液)をEC:0.8dS/m 程度で2~3週間育苗し、根がキューブの底面に突き出た頃にキューブを切り離し栽培床に定植(置床)します(図4)。この時、アルギン酸ナトリウム0.5 %溶液を底部に付けて静置すると固着させることができます。

「図4定植直後の苗」の画像
図4 定植直後の苗

(3)栽培管理

 培養液は、日中は毎時4 L/平方メートル程度の連続給液、夜間は3時間程度の間隔で間断給液しますが、天候や栽培床の水分状況を見ながら調整してください。

 培養液濃度は、当初EC:0.8dS/m 程度とし、茎伸長始め頃から1.1dS/m 程度に高め、分枝が伸長して花蕾が肥大を始める頃からは水のみの給水とします。

 アスターは倒伏すると花首が曲がって商品価値が低下するので、生育に従ってフラワーネットを上げてやります。その他の栽培管理は、一般の土耕栽培に準じます。

「図5 栽培風景(花弁着色期)」の画像
図5 栽培風景(花弁着色期)

4 期待される導入効果及び留意事項

  1. 連作の影響を受けにくいため、同一施設で継続した安定生産が可能となります(表1)。
  2. 簡易な栽培装置で栽培できるため水稲育苗ハウスの利用や、チューリップ養液栽培装置の後利用等、既存施設の有効活用が図られます。
  3. 使用済みの不織布等資材は資材用の消毒剤や煮沸で消毒を行えば再利用が可能です。
  4. 養液栽培は土耕のような緩衝作用がないため、生育異常などが確認された場合は直ちに培養液を交換してください。
表1 試作結果の概要(品種:ステラローズ)
年度 は種日 定植日 平均
開花日
採花率
(%)
切り花
長(cm)
切り花
重(g)
平成24 4月29日 5月15日 8月12日 100.0 77.9 119.6
平成25 4月10日 5月1日 8月4日 91.9 76.5 115.4
平成26 4月16日 5月7日 7月24日 97.5 75.4 103.5

 

(注1)長繊維不織布:ポリエステル製、商品名:マリエースを使用
(注2
点滴チューブ:10cm ピッチ、吐出量0.08 ~ 0.11L/分/m、0.06MPa のものを使用
(注3
培養液:大塚A処方を使用(3/10 単位:EC0.9dS/m、4/10 単位:EC1.2dS/m)

 

【経営普及課 農業革新支援担当(花き) 小竹 修】

 

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