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【農業技術・経営情報】6次産業化(加工):農産加工品の品質管理のポイントについて

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0398980 更新日:2021年2月1日更新

 農業の6次産業化の推進により農産加工に取り組んでいる経営が徐々に増えています。消費者に提供する加工食品は、「安全・安心」が重要な要件として求められ、消費者の健康危害を防止するためには、食の安全性は最優先されなければなりません。
 今回は、加工食品の安全性・品質を左右する上で重要な管理ポイントである異物混入対策、製造工程中の温度管理について紹介します。

1 異物混入の防止対策

 全国の消費生活センターに寄せられている食品の異物混入に関する相談件数は、2009(平成21)年以降累積で約16,000件、そのうちけがや病気などの疾病を受けたという情報は約3,000件で、異物混入防止は重要な課題となっています。(2015(平成27)年1月10日までの登録分)
 異物の内容別でみると、ハエなどの昆虫が最多となっており、次いでホチキスの針などの金属類、毛髪などの人の身体に係るものの順になっています。(図1)
 異物が混入する原因は、「原材料に由来する場合」と「製造工程に由来する場合」に大別され、混入防止対策は以下の通りです。

「図1異物の内容について」
独立行政法人国民生活センター資料より引用

(1)原材料に由来する場合

 原材料の一部にもともと昆虫や小石・動物の骨等が混ざっている場合や段ボールや運搬容器など外部業者が持ち込んでしまう場合があります。防止対策としては、選別の強化、洗浄の徹底、外部からの第3者の立ち入りを制限し、段ボールや運搬容器の納入場所を決めておくことが重要です。

(2)製造工程に由来する場合

 施設環境に問題がある場合が多く、特に清潔な作業を行う区域(非汚染区域)を明確にして、そこを重点的に衛生管理を行う必要があります。
 昆虫混入防止対策として、昆虫の餌となる排水溝や床等に付着する有機質の汚れを徹底的に清掃することや防虫用のカーテン・捕虫器の設置も有効です。また、混入事例として多い毛髪は、身だしなみを徹底することで防止することができます。頭髪を覆う帽子やポケットのない白衣を着用し、粘着性ローラーで毛髪・埃などを取り除きます。さらに全身を映し出せる鏡を設置し、入室前に身だしなみチェックしましょう。着替えは、帽子、上着、ズボンの順に行います。
 異物の中でも健康危害を及ぼすカッターや針金、ガラスや陶器片、金属片は特に注意を払わなければなりません。ホチキス、カッター、クリップ、画鋲などの文房具は施設内への持込みを禁止しましょう。輪ゴムやクリップ等、無くなっても分かりにくいものはなるべく持ち込まず、仮に持ち込んでも置き場所を決め、数を確認しておきましょう。また、スチール製タワシや木製の桶等、破損や摩耗しやすい器具や消耗品の管理を徹底しましょう。ほとんどの食品企業では金属探知機が設置されています。今後、農業者が百貨店やスーパーマーケット等との取引を開始する際にも、金属探知機の設置を検討すべきと考えます。

「身だしなみチェック」の画像

2 温度管理について

 総菜や弁当類、菓子等の加工に取り組む事例も増えてきましたが、製造する過程の中で、「加熱」・「冷却」の工程は、食中毒の発生を防止する重要なポイントとなります。特に、有害微生物の殺菌を目的として加熱する場合は、温度と時間を適切に管理しなければなりません。

「有害微生物の殺菌」の画像

 表1に示した通り、ほとんどの有害微生物は75℃1分で死滅しますので、加工品の中心温度が75℃1分以上加熱できるよう温度管理します。(ノロウイルスは、85~90℃ 90秒以上)
 そして、加熱工程後に残存した微生物の増殖を防止するため、中心温度を5℃以下までできるだけ早く冷まし、微生物が繁殖する温度帯(10~60℃)を素早く通過させ食品の安全性を守ります。
 また、急冷することにより、食材の香り、鮮度、色合い、栄養の保持を保つことができます。ブランチングした野菜等は、5℃以下の冷水または流水で、総菜などは小さな容器等に小分けにして氷を張った水槽で冷やします。なお、この作業にはブラストチラー(急速冷却機) があると便利です。
 急冷後は、有害微生物の二次汚染や異物混入を防止するために保管容器にフタをし冷蔵庫内で保管します。食品フィルムでカバーする方法もありますが異物混入の原因となる可能性もあるので取扱いに注意しましょう。また、冷蔵庫内の温度(5℃以下)も定期的に測定しましょう。

表1 : 主な病原菌の死滅温度と時間
「表1:主な病原菌の死滅温度と時間」

最後に ~5S活動のとりくみ~

 安全な加工食品を提供するためには、加工食品を衛生的な環境で取り扱わなければなりません。5S活動とは、その名のとおり5つの「S」がつく活動で、「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「習慣づけ」で構成されています。

・整理
必要なものと要らないものを区分して、要らないものを処分します。

・整頓
必要なものが必要な時にすぐにとり出せるよう、定位置定数管理を行います。使用頻度、作業動線等を考慮して定位置に保管します。保管している器具の名前や数量を明記して管理しやすくしましょう。

・清掃
掃除をしてきれいな状態にすると同時に、不具合な箇所の点検を行います。日常的に掃除ができない所は計画をたてて行いましょう。

・清潔
整頓され、かつきれいな状態を維持することが重要です。施設整備だけでなく、作業者の服装や身だしなみも清潔にします。

・習慣づけ
決められたことを決められたとおりに実行できるよう習慣づけましょう。

 加工現場で、5S活動を定着させることによって、異物混入や有害微生物による汚染リスクを低減させると共に衛生・品質管理が向上し、安全性の確保ができるといえます。

 

参考文献等
 食品の異物混入に関する相談の概要  (独立行政法人国民生活センター)
 衛生・品質管理実践マニュアル      (一般財団法人食品産業センター)

 

【経営普及課 農業革新支援担当 河内 由紀子】

 

 

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