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【農業技術・経営情報】6次産業化(加工):漬物の保存性向上に向けた微生物制御について

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0398818 更新日:2021年2月1日更新

 漬物の主な変敗の状態は、調味液の濁り、酸敗、粘性化、変色、軟化、膨張等が見られ、細菌や酵母の発育が主な原因です。特に浅漬け類は塩分濃度が2%前後と低いため原料野菜由来の細菌が発育し、変色、酸敗、調味液の濁りなどが生じて商品価値が失われてしまいます。このような漬物の劣化を防ぐ微生物制御には、原料野菜の洗浄・殺菌剤による殺菌、加熱殺菌、低温流通等の方法があります。劣化の抑制は保存性の向上にもつながります。

1 原料野菜の洗浄・殺菌剤による殺菌

 初発菌(加工前の原材料の表面に付着している菌)を低減させることは、賞味期限の延長等の商品性の向上が期待されます。そのためには、原料野菜の洗浄・殺菌がとても重要であり、次亜塩素酸ナトリウム液や酢酸などの有機酸液に浸漬する等の方法がとられています。次亜塩酸ナトリウムは、pHが低いほど殺菌力は大きくなりますが、微生物以外の原材料に付着している有機物と結合し殺菌力を低下させるので、土が付いている大根や白菜、カブ等は特に水洗いで丁寧に洗い流した後、次亜塩酸ナトリウム液に浸漬して殺菌するとよいでしょう。

 特に浅漬けは、平成24年に発生した食中毒事件により、漬物の衛生規範が改正され、浅漬けの殺菌要件等が追記されました。

以下は追記項目のうち、浅漬けの殺菌方法の記載箇所

~ 略~
第5 食品の取扱い
(8) 次のいずれかの方法により殺菌を行うこと。
[1]次亜塩素酸ナトリウム溶液( 100mg /リットルで10分間又は200mg /リットルで5分間)又はこれと同等の効果を有する亜塩素酸水( きのこ類を除く。)、次亜塩素酸水並びに食品添加物として使用できる有機酸溶液等で殺菌した後、飲用適の流水で十分すすぎ洗いすること。塩素濃度の管理を徹底し、確認を行った時間、塩素濃度及び実施した措置等を記録すること。
[2] 75℃ で1分間の加熱、又はこれと同等以上の効力を有する方法で殺菌すること。
温度管理を徹底し、確認を行った時間、温度及び実施した措置等を記録すること。
【漬物の衛生規範より 平成25年12月13日改正】

2 加熱殺菌

 漬物の保存性向上のためには、白カビ(産膜酵母)、酸敗の原因となる乳酸菌、湧きの原因となる酵母を死滅することが重要です。プラスチック製の袋詰製品の変敗の中で比較的多いのが膨張であり、原因のほとんどが酵母、ガス生産性の乳酸菌です。いずれの菌も熱に弱く短時間で殺菌できます。酵母類は50~55℃ 、乳酸菌は76.5℃ で死滅します。
 また、加熱することでは酵素が不活性化し、変色や軟化を防止するとともに風味保持の効果もあります。

【殺菌温度と時間の目安】

60℃ 15分・・・・・胞子を含めた一般のカビ、酵母
80℃ 15分・・・・・細菌の芽胞以外の微生物

 但し、漬物の加熱殺菌温度や時間は、殺菌する微生物の種類や食品のpH、商品の形態、内容物の熱伝導等によって変わります。一方で加熱による食感等の変化も考慮しなければなりません。

【具体的な加熱殺菌の留意点】

( 1 )
 漬物の種類や袋の大きさによっては熱伝導が異なるので、製品の内部まで熱が行き届くよう殺菌を行うことが大切です。漬液の多いものは熱伝導が早く、固形物や半流動物の漬物、味噌漬等は熱伝導が悪く加熱時間を長くしなければいけません。実際は、サンプルとした小袋に温度計を差込み、温度測定をします。

( 2 )
 所定の加熱温度の温水にシールした袋詰を入れると、いったん水温が下降するため、再度加熱して所定の温度に達温してから、所要時間加熱殺菌します。殺菌する漬物量に対し、お湯の量が少ないと水温の低下幅も大きいので、なるべく短時間で達温とするようたっぷりのお湯で殺菌します。

( 3 )
 加熱殺菌中に袋が重りあうと、袋の間に挟まれた製品が加熱不足となり、規定の温度に達温せず、変敗することがあります。ラック等に等間隔に縦に並べて加熱するとよいでしょう。

( 4 )
 脱気を十分行いましょう。脱気不足の場合、加熱中に袋内の空気が熱膨張するために部分的に熱伝導が不足となり、殺菌が不十分になります。

( 5 )
 ヒートシールを確実に行いましょう。シール部分に隙間ができると、殺菌後の冷却時に包装内部が減圧となるために冷却水とともに有害菌が吸入され、それが原因となって変敗する恐れがあります。

( 6 )
 加熱終了後は速やかに水冷し、袋の中心温度が30℃以下になるまで冷却し、細菌類が繁殖する至適温度(35℃前後)をすばやく通過させます。

表 漬物の種類別加熱殺菌時間について(120~150g詰小袋の場合)

「漬物の種類別加熱殺菌時間について」の表

3 低温管理

 最近、嗜好の変化や健康管理のため食塩の摂取量を減らす等、漬物も低塩化傾向にあります。低塩分の浅漬けは、加熱殺菌では食感が失われるため適当でないので加熱殺菌しない状態での低温流通が求められます。製造中の品温の上昇により、乳酸菌や酵母が増殖し、漬液が白濁すると商品価値が失なわれてしまうことから、原料野菜類の鮮度保持、一次原料野菜の貯蔵、製造工程、製品の保管と流通・販売に至るまでできるだけ一貫して低温管理することが望まれます。一般的には、3℃以上で5℃を中心とする10℃以下の温度帯で管理することが重要です。

 漬物は直売所での人気も高く、生産者にとって原材料の調達が容易で比較的取り組みやすい品目です。殺菌工程を加えることで賞味期限の延長も可能です。適切な品質管理で付加価値向上と商品性の向上を目指しましょう。

 

【経営普及課 農業革新支援担当 河内 由紀子】
引用・参考文献: 小川敏男著 漬物製造学 (光琳テクノブックス)

 

 

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