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【農業技術・経営情報】6次産業化(加工):食品の期限表示の設定について

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0400203 更新日:2021年2月1日更新

 6次産業化に取り組む農業者の方から、販売する農産加工品の期限表示の設定の仕方についての相談が多く寄せられます。
 また、消費者庁の調査(食品表示に関する消費者の意向等調査)によると、店頭で食品を購入する際に、容器包装やPOP等で表示されている表示項目のうち主に見る項目は、「価格」が81.5%と最も多く、次いで「消費期限・賞味期限」が71.0%となっており、大半の消費者が期限表示をチェックしていることになります。
 今回は、消費者に安全な加工品を提供するための消費期限・賞味期限等の期限表示設定について解説します。
 平成17年に厚生労働省と農林水産省が共同で策定した「食品期限表示の設定のためのガイドライン」によると「食品の特性に配慮した客観的な項目に基づき期限を設定する必要がある」とされています。具体的には、客観的項目「理化学試験」、「微生物試験」において数値化することが可能な指標や主観的項目である色や風味等の「官能検査」を実施し、科学的、合理的根拠をもって期限設定をする必要があります。
 食品の特性や品質変化の要因や原材料の衛生状態、製造・加工時の衛生管理状態を一番よく知っている製造業者や販売者が責任を持って期限表示を設定し表示しなければなりません。

1 消費期限と賞味期限

 期限表示には、消費期限と賞味期限があります。食品表示法において、以下のとおり定義づけがされています。

(1)消費期限

 「定められた方法により保存した場合において、腐敗、変敗その他品質の劣化に伴い安全性を欠くこととなるおそれがないと認められている期限」とされ、開封前の状態で定められた方法により保存すれば食品衛生上の問題は生じないと認められるものです。弁当やそうざい等の品質が急速に劣化しやすい食品に表示され、比較的短い期限を示します。

(2)賞味期限

 「定められた方法により保存した場合において、期待される全ての品質の保持が十分に可能であると認められる期限」とされ、当該期限を超えた場合であってもこれらの品質が保持されていることがあるため、賞味期限を過ぎた食品であっても、必ずしもすぐに食べられなくなるわけではありません。スナック菓子や缶詰等の品質の劣化が比較的緩やかな食品に表示され、比較的長い期限を示します。

「消費期限と賞味期限」の表

 ただし、これらの期限はいずれの場合も「未開封の状態」かつ「定められた保存方法を守った場合」の期限として設定する必要があります。

2 保存試験条件の設定

 食品の保存試験において、理化学的試験、微生物試験、官能試験を実施し、科学的、合理的な根拠を持って設定する必要があります。保存試験を始める前に以下の試験条件を設定しましょう。

(1)保存温度及び試験期間

 保存温度は、販売者や消費者が実行可能な温度に設定し、試験期間は、その保存温度で見込まれる消費(賞味)期限を考慮して設定します。

(2)試験項目

 その食品の特性に応じて試験項目を設定します。
 理化学試験:水分、pH、酸度等
 微生物試験:一般細菌、低温細菌、大腸菌群、カビ、酵母等
 官能試験:外観、色調、臭い、風味等

(3)判定基準

 試験の結果を判断するための基準を設定します。下表の新潟県食品指導基準等を参考に判定基準を定めます。

「判定基準」の表

3 実際の消費期限設定の考え方(検査機関での実施の例)

(1)試験を始める前に

 漬物(浅漬)の保存試験を例にあげ、期限設定について解説します。
 商品が持っている特性から、保存温度、試験期間、試験項目、判断基準を決定します。

「実際の消費期限設定の考え方」の表

(2)保存試験の実施

 サンプルとして42袋抜き取り、21袋は微生物検査、残り21袋を官能検査用として10℃の冷蔵庫に保存します。
 3袋×7日(検査期間)×検査項目数(微生物検査、官能検査)=42袋

(3)合格の判定

 各検査の結果、次の場合を合格とします。
 ・微生物検査:全製品が判定基準に適合した場合
 ・官能検査:外観、色調、臭い、風味等異常なしと判断した場合

「合格の判定」の表

 ロットのばらつきや流通段階での温度上昇のリスクなどを加味して、合格判定日の最終日から余裕を持って期限を設定します。
 試験を実施した結果、5日までは合格となり、6日目からは官能検査において変化が見られたので不合格としました。試験から得られた5日に対して、1未満の安全係数をかけて試験で得られた期限よりも短い期限を消費期限に設定します。

  5日×0.8(安全係数)=4.0 → 4日  (小数点以下切り捨て)

 以上の試験により、「10℃以下の冷蔵保存で製造日から4日間」を消費期限に設定します。

4 おわりに

 期限設定についてのポイントをまとめると以下のとおりとなります。

  • 期限設定の責任者は製造者または販売者です。
  • 問い合わせがあった場合、根拠はいつでも説明できるようにします。
  • 保存試験は想定される期限よりも長期間実施します。
  • 検査項目は、微生物、理化学、官能検査を組み合わせて考えます。
  • 表示する期限は、保存試験の結果に安全率を見込んで20~30%程度短く表示します。(安全係数0.7から0.8)

 各種検査の詳細については民間検査機関に、期限設定の詳細については最寄りの地域振興局健康福祉(環境)部(保健所)、(新潟市の場合は、保健衛生部(保健所)食の安全推進課)にお問い合わせください。

 

参考:にいがた食の安全インフォメーションより「よくわかる食品の期限設定」(新潟県HP)
   期限設定のための試験をしましょう(新潟市保健所食の安全推進課)
   加工食品の表示に関する共通Q&A(消費者庁食品表示課)

 

【経営普及課 農業革新支援担当 河内 由紀子】

 

 

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