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【農業技術・経営情報】6次産業化(加工):農家レストラン開設・運営に関する留意点

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0398532 更新日:2021年2月1日更新

 農業の6次産業化に伴い、直販、加工等に取り組む農業者が増えており、直食(以下「農家レストラン」)への関心も高まりつつあります。今回は、農家レストランに取り組むための留意点について紹介します。

1 農家レストランとは

 農林水産省の定義によれば、「農業を営む者が、「食品衛生法」に基づき都道府県知事の許可を得て、不特定の者に自ら生産した農産物や地域の食材をその使用割合の多寡にかかわらず用いた料理を提供し料金を得ている事業」となっています。
 このような農家レストランが全国的に増えている理由としては、食の安全・安心が求められている中、産地へのこだわりや自然豊かな農村文化に触れながら郷土食を通じて交流するグリーン・ツーリズムが盛んになっていることが背景として考えられます。

2 メニューづくりの原則~逸品料理を作ろう~

 農家が飲食店事業に取り組むメリットは、新鮮な食材料が原価で入手できることと農村の地域資源が活かせることです。ありのままの自然や伝統的な食文化や歴史、農家の佇まい(居住空間)等が地域資源であり、その地域でのストーリーと共に郷土料理や家庭料理を提供できることが最大のメリットです。
 農家レストランに求められるものは、農村地域で普通に食べられている手作りの暖かな家庭料理や現在ではなかなか食べられなくなったその土地にしかない郷土料理等です。これらに創意工夫を加えて現代風にアレンジすることもよいですが、「安全・安心」と「食文化」は、メニューづくりの重要なコンセプトになります。
 また、メニュー数を多くするより、自慢の逸品である名物料理(郷土食等)を絞り込んで提供した方が特徴を出せます。そして、料理の由来や調理の手順やコツ、盛り付け方などを記載したレシピ(料理の処方箋)を整備しましょう。

「郷土食をメインにしたメニュー」の写真
郷土食をメインにしたメニュー

3 農家レストランの計数管理

 経営規模や営業体制にもよりますが、開業するとなると 1人でできるものではなく、複数人のスタッフ確保や店舗の運営や接客、労務管理等の経営管理の知識と実践が必要になってきます。農家レストランが利益を出すためには、飲食業経営の大原則が実践できていなければなりません。
 飲食業の二大費目は、食材費と人件費です。この経費の合計が売上げの60%以内でなければ利益が出ないと言われています。また、食材原価率は30%程度を目安にして価格設定をしなければなりません。その他、水道光熱費、施設の維持管理にかかる費用、税金などすべて売上から捻出しなければならないからです。

表1 農家レストランの経費割合
費用項目 理想的な比率
食材費(食材、包装資材含む) 30 %
人件費 30 %
家賃 8 %
水道高熱 6 %
消耗品 1 %
備品(ホール、キッチン、事務備品) 1 %
機材・修理費 1 %
販売促進費 3 %
雑費(有線放送) 1 %
その他 1 %
減価償却費 8 %
営業利益 10 %
合計 100 %

 

4 開業に向けて

 飲食店を新規に開業するとかなりの資金が必要になります。建物にかかる費用は、なるべく抑える工夫をしましょう。廃校になった校舎を改築し、給食室設備の機材を入れ替えそのまま活用し、農家レストランとして開業している事例も多く見られます。また、築100年余の自宅を古民家風に改築し、古い家具や農具などをインテリアとして活用している方もいます。

「村上市大毎の「こころまい」築150 年の自宅を改築し営業」の写真
村上市大毎の「こころまい」築150 年の自宅を改築し営業

 そして、経営計画づくりは、メニュー研究や店舗の雰囲気、材料の調達等、その名にふさわしいサービスを提供できるよう十分に時間をかけ慎重に練らなければなりません。客単価や予測入込人数、1日の見込売上高と営業時間や日数等を設定し、年間の売上高を見込み人件費、施設管理費、減価償却費等の経費を算出し、損益分岐点等を予測しながら計画をたてていきます。ここでの留意点は、客単価は決して安くしないことです。イベント等へ参加し、ターゲットとなるお客へアンケートを取るなどして(テストマーケティング)意見を取入れ、満足感の得られるメニューを決定しましょう。

農家レストラン開店手順
「農家レストラン開店手順」の表

 また、飲食店営業は、食品衛生法による営業許可が必要となります。食品衛生法上の施設要件を満たすことが重要となりますので、店舗設計の段階で保健所への相談をおすすめします。
 そして、施設整備後、実際の開店にあたりいきなりオープンするのではなく、関係者を招待したプレオ-プン・レセプションの段階を数回踏むことにより、スタッフの調理や接客等のトレーニングの機会を作ることができます。最初からスムーズにいかないことはあたり前ですが、プレオープンを通じて出された問題点はすぐに改善策をたて、ルールとして徹底しておくことが重要です。
 農家レストランは、飲食店営業をベースにした経営ノウハウが必要であり、適正な利益を生み出すためにも先進地の視察 や綿密な事業計画の作成に時間をかけましょう。地元の農業者・商工業者のネットワークづくりも有効です。農家レストランの取組が活発になり地域活性化につながることを期待します。

【引用文献】
・高桑 隆著『農家レストランの繁盛指南』

 

【経営普及課 農業革新支援担当 河内 由紀子】

 

 

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