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森林研究所たより 出荷規格サイズ維持のためのブナ苗木の切り戻し剪定(林業にいがた2025年10月号記事)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0783075 更新日:2025年10月1日更新

1 はじめに

ブナは新潟県の主要な広葉樹であり、毎年一定の苗木需要があります。しかし、苗木生産に必要な種子は、5から7年に1度とされる豊作年以外は採取できません。苗木生産者が毎年の苗木需要に対応するためには、苗畑で苗木をストックし、徐々に出荷する必要があります。

通常の苗木生産では、毎年種を播き、2から3年育てたものを出荷しますが、ブナの場合は、2から3年以上育苗することになるため、出荷規格サイズを上回る大きく育った苗木が出現し、それらは廃棄されています。

そこで、大きくなりすぎたブナ苗木に切り戻し剪定(伸びすぎた枝を途中で切る作業)を施してサイズを小さく抑え、出荷可能な苗木を増やすことができるか検証しました。

なお、本稿におけるブナ苗木の出荷規格サイズは、県の苗木規格に基づき、根元直径4mm以上、苗長30cm以上かつ70cm未満としました。

2 調査方法

ブナ苗木生産者の苗畑において、通常どおり育苗する区(対照区)と、育苗2年目の7月に切り戻し剪定する区(7月切り戻し区)、同年10月に切り戻し剪定する区(10月切り戻し区)を設定しました。切り戻し剪定はハサミにより手作業で行い、苗長40cmの高さで苗木の主軸および枝を切断しました(写真)。

 

写真 切り戻し剪定を施したブナ苗木

写真 切り戻し剪定を施した苗木

※〇囲み内は切断部

切り戻し剪定によりサイズが抑えられたか確認するため、対照区では1から5年目まで、各切り戻し区では2から5年目まで苗長と根元直径を測定しました。なお、測定の対象は、2年目に各試験区内で苗長が40cm以上となったものとしました。

また、切り戻し剪定により出荷可能な苗木が増加したか確認するため、サイズと樹形の両面を考慮して出荷可能数の割合を算出しました。ここで、樹形不良苗木は、剪定後、水平方向に主軸が出るなどして見栄えが悪くなった苗木としました。

3 調査結果と考察

育苗3年目(剪定翌年)から5年目(剪定3年後)まで、対照区よりも各切り戻し区で苗長が小さく抑えられ(図1)、その効果は7月切り戻し区よりも10月切り戻し区で大きかったと考えられました。

 

図1 試験区ごとのブナ苗木の苗長推移を示したグラフ

図1 試験区ごとの平均苗長の推移

切り戻し3年後の出荷可能数の割合も、10月切り戻し区で最も高くなりました(図2)。

図2 試験区ごとの出荷可能数の割合を示したグラフ

図2 出荷可能数の割合

以上より、ブナ苗木の切り戻し剪定は苗長の抑制に有効であり、7月より10月の作業がより効果的であると考えられました。

なお、切り戻し剪定した苗木は、令和4年に研究所構内に試験的に植栽しました。現在経過観察中ですが、令和7年9月現在も問題なく生育しています。

 

 

森林・林業技術課 田中 樹己

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