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森林研究所たより 一次検定合格クロマツ挿し木の発根性(林業にいがた2019年06月号記事)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0181842 更新日:2019年8月3日更新

1 はじめに

抵抗性クロマツ実生苗の供給に至るまでには抵抗性採種園の造成から数えて7年程度は必要となります。現在の計画では平成35年頃からの供給見込みとなっており、それまでは苗供給は出来ません。その間の需要に応える方法として挿し木が注目されています。
従来困難とされていたマツの挿し木は九州を中心に研究が行われ、挿し穂への植物ホルモン処理と電熱温床を用いることによって技術的に可能となりました。それを受け、本県の一次検定合格クロマツ(以下クロマツ)について、発根率の高い個体の探索を行いました。

2 調査の方法

森林研究所構内に定植されているクロマツ196個体から通常の枝(以下普通枝)や、剪定箇所から出た萌芽枝(以下萌芽枝)を各個体21本ずつ用い、発根の有無について調査を行いました。
なお、調査は九州での方法そのままではなく、県内種苗業者への普及を想定し、電熱温床は用いず、簡易な設備で行える方法(挿し木床全体をビニールハウス内に設置し、不織布で覆う方法)としました。また、発根向上に効果があるとされる冬芽の除去も試しに行ってみました。

3 調査結果

簡易な設備としたため、発根率の低い個体が最も多く(図1)なりましたが、最高発根率は85.7%でした。挿し木苗を事業供給するには発根率が50%を超えるような個体を選抜する必要があり、本試験では23個体が選抜されました。なお、萌芽枝と普通枝では萌芽枝の発根率が良好でした。
また、冬芽除去にははっきりと発根率が向上する傾向が確認できました。
図1 調査個体全体の発根率 

          図1 調査個体全体の発根率

4 着花傾向と発根性

当県のクロマツは着花傾向を調査しています(林業にいがた平成30年5月号に掲載)ので、発根率との関係を解析したところ興味深い結果を得ました。
雄花も雌花も着花しやすい「両性系」に属する個体は発根率が低く、また雄花が付きやすい「雄花系」個体は冬芽除去の効果が強く表れていました(図2)。これらの結果から穂木に着花している「雄花」自体に何らかの発根を阻害する要因があるのではないかと考えています。
樹体内での発根阻害機構については今後の課題とし、継続試験したいと考えています。

 

 図2 冬芽除去試験における着花傾向別発根率の変化

    図2 冬芽除去試験における着花傾向別発根率の変化

5 おわりに

挿し木の利点は、母樹と同じ性質が苗木にも引き継がれることです。この成果は確実な抵抗性が望まれるクロマツの増殖のために活用できるものと考えています。

森林・林業技術課 岩井淳治

 

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