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森林研究所たより スギ秋挿しに適した穂木の形状,時期および育苗方法の検討(林業にいがた2018年11月号記事)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0058631 更新日:2019年3月29日更新

1 はじめに

新潟県では、平成28年度から無花粉スギの穂木の供給が開始され、平成29年10月には山地への植栽が開始されています。挿し木の発根には15~25℃の温度が必要で、発根適温は地温20℃程度ということもあり、穂木取り・挿し付けの適期は、春の他に秋が知られています。しかし、東北地方や北海道などの秋の温度低下が早い地域では、秋に自然温度条件下で挿し付けて年内に発根させることは難しいといわれています。このことから、新潟県では、無花粉スギ挿し木苗の生産(穂木取り、挿し付け)を、現在、春(3~4月)に行っています。ただ、温暖な地域では秋挿しは春挿しよりも発根がよい場合があるともいわれています。さらに、もし秋挿しが可能であれば、苗木生産者の労働量の分散化や、育成期間の短縮などが期待できます。このような背景から、新潟県でのスギの秋挿しの可能性と適切な穂木の形状、時期、育苗方法を検討するために精英樹3品種を用いて挿し付け試験を行いましたので、内容と結果について紹介します。

2 調査方法

挿し付け試験は平成26年と平成27年の2年連続で行いました。各年の穂木取り・挿し付け月と穂木(図1)の切断位置、供試本数は表1の「A.挿し付け試験」のとおりです。
平成27年に挿し付けた穂木を、2年生の春から秋まで畑畝に植え付けて育苗しました。育苗の際に、追肥を行った群と行わなかった群を設けて、成長を比較しました。各群の本数は表1の「B.追肥試験(2年生次)」のとおりです。

試験の概要の画像
表1 試験の概要

スギ穂の模式の画像
図1 スギ穂の模式図

3 結果

2ヶ年にわたる挿し付け試験の結果から、穂木中に前年枝を含む穂木の発根率が有意に高い(図2)こと、穂木の発根率は9月が有意に低いことがわかりました。また、育苗試験によって、挿し月に関わらず追肥をすれば苗長が大きくなること、同じ方法で育苗すれば、4月挿しと8月挿しでは苗長、直径、根の体積といった形質は最終的に差がなくなることがわかりました。これらのことから、8月に前年枝を含めた位置で切断し、育苗時に追肥をすることで秋挿しも可能であると考えられます。ただし、2年生秋期までに新潟県の出荷規格(苗長30cm以上、直径7mm以上)を満たす苗木の割合を高めるためには育苗方法や用いる系統・資材の更なる検討が必要と考えられます。

平成26年挿し穂の前年枝有無別の発根率の画像 図2 平成26年挿し穂の前年枝有無別の発根率

森林・林業技術課 戸塚聡子

 

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