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『林業にいがた』平成28年2月号で報告した、マツノザイセンチュウ抵抗性クロマツ(以下抵抗性クロマツ)の選抜状況は、平成28年度末時点で一次検定合格木は約400本、うち前回報告から1本増えた13本が二次検定合格しており、それらは研究所構内で定植・管理しています。引き続き合格木を増やすべく試験研究を続けています。
今回はそれら合格木の着花傾向について報告します。
クロマツは、例年4月下旬から5月中旬、アカマツは5月上旬~下旬が開花時期となり、クロマツのほうが先に開花します。平成21年から27年までの7年間、個体毎に雄花と雌花(写真)の開花数を目視で確認し、6段階で評価しました。
クロマツの雄花
クロマツの雌花
調査の結果、「雌花がつきやすい個体」のように個体ごとに決まった着花傾向があることが分かりました。(表1)
調査した259本のうち約35%の個体は着花について何らかの傾向があることが確認できましたが、約65%はまだ若いためか明確な着花傾向は確認できませんでした。
着花分類 | 合格本数 | 構成比 |
---|---|---|
雌花系 | 46本 | 17.8% |
雄花系 | 27本 | 10.4% |
両性系 | 18本 | 6.9% |
無傾向 | 168本 | 64.9% |
合計 | 259本 | 100.0% |
個体毎の抵抗性クロマツの着花傾向が分かると何に役立つのでしょうか?実はマツ類はスギのように薬剤を噴霧して着花を促進させることは簡単にはできません(注)。そのため、着花は自然着花になります。着花が制御出来ないマツ類の採種園を造成する場合、着花が良い個体を選んで採種園を造成できれば安定した種子生産に役立つものと考えています。
さて、現在村上市内に造成中のクロマツ採種園を主に構成している抵抗性クロマツの着花特性はどうなのかというと、表2のとおりでした。幸いなことに2個体だけが無傾向で、さらにそのうちの1個体(※印)は最近雄花着花が多く認められるようになって来ましたので、雄花木と判断できそうです。
(注:特殊な薬剤をペースト状にして塗布ないし液体に溶かして材内に注入することにより着花を促進させる方法があります。)
個体名 | 着花傾向 |
---|---|
新潟(新潟)クロマツ 8号 | 両性木 |
新潟(新潟)クロマツ40号 | 雄花木 |
新潟(相川)クロマツ27号 | 無傾向 ※ |
新潟(長岡)クロマツ15号 | 雌花木 |
新潟(村上)クロマツ11号 | 両性木 |
新潟(村上)クロマツ16号 | 雌花木 |
新潟(村上)クロマツ 1号 | 両性木 |
新潟(村上)クロマツ 9号 | 雄花木(準) |
新潟(長岡)クロマツ 8号 | 無傾向 |
新潟(新潟)クロマツ 3号 | 雌花木(準) |
新潟(上越)クロマツ 1号 | 両性木 |
新潟(上越)クロマツ10号 | 雄花木(準) |
新潟(村上)クロマツ 3号 | 雌花木 |
抵抗性クロマツの着花傾向については、若いうちから明確な傾向を示す「早生系」と、成熟してから徐々に傾向が明らかになってくる「晩成系」という性質があることも分かってきました。今後さらに継続調査をしていき、そのメカニズムを明らかにしたいと考えています。
森林・林業技術課 岩井淳治