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樹木の成長は土壌や標高などの立地条件と気温や降水量などの環境条件によって大きく左右されます。「地位」はそれらの条件の違いによる林地の生産力を示し、適地適木の検討には、地位の把握が重要です。地位の指標の1つに「地位指数」がありますが、これは、ある定められた林齢(スギでは一般的に40年生時)における林分の上層木平均樹高のことで、林地の生産力を分類、評価する場合によく用いられます。樹高成長は林地の生産力を比較的鋭敏に反映し、肥大成長と異なり立木密度に影響されることが少ないため、地位指数の指標として用いられています。
地位指数を推定する方法の1つに「地位指数推定スコア表(以下、スコア表)」があります。スコア表は、標高、地形、土壌など、林地の生産力に大きく影響する立地、環境要因から地位指数を推定するもので、これまで多くの地域で作成され、全国各地の適地適木調査事業にも応用されてきました。1981年に取りまとめられた当県の適地適木調査報告書では、標高、方位など計九つの要因から推定するスコア表が使用されています(表)。なお、スコア表は、それぞれの要因項目ごとに該当する点数を加算することで地位指数が推定できるモデルになっています。
表 スギの地位指数推定スコア表
林業にいがた764号の「森林研究所たより」でも紹介しましたが、当所では長伐期化に対応した林分の成長予測手法の開発を目的として、県内各地のスギ高齢林の調査を実施しています。それらの調査地データ(26箇所)を使用して、前述の当県スコア表から地位指数を推定しました。そして、推定地位指数を、現実林分材積(蓄積)表(2010)をもとに地位級区分し、地位級ごとの高齢林分における樹高成長を比較しました。その結果、調査地の地位級はI~V級の五つに区分され、地位級の違いによる樹高成長には一定の傾向はみられず、調査地の多くが区分された地位級II、III級において、成長にばらつきが多くみられました(図)。スコア表をより詳細な成長予測に使用するには、推定精度の向上が必要と考えられます。
図 各調査林分における地位級区分別の林齢と上層木平均樹高
(上層木平均樹高とは、被圧木や枯損木を除いた立木の平均樹高)
近年、ドローンや航空レーザ測量などのリモートセンシング技術が急速に発展し、それにより得られた詳細な地理情報を用いて、地位指数の推定精度向上を図る手法も報告されています。今後、当所でもそれらの技術を活用し、スコア表の調整を検討していきたいと考えています。
森林・林業技術課 伊藤幸介