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今年の3月末から、現在品種登録出願中の「雪ぼうしN-1」の種菌をJAしおざわの種菌センターから購入できるようになりました。
これまでは、試験栽培を希望する生産者さんに、森林研究所で作った種菌を配布していたのですが、大量に作成することはできず、また、配布までに約2ヶ月程度かかることもありました。
これからは、気軽に注文・購入が出来るようになりましたので、興味がある生産者さんはJAしおざわ種菌センターにお問合せください(025-782-9893)。
さて、これまでも時々、「きのこの新品種ができました」と紹介してきましたが、きのこの品種開発がどのように行われているのかは、ほとんど知られていないと思います。
そこで今回は、きのこの品種ができるまでの道のりを紹介します。
きのこは菌類ですので、動物や植物とはちょっと異なる方法で次世代を作ります。
まずは、親きのこの「胞子」を1個ずつ別々に採取します。この胞子を菌類用寒天培地で育てると、菌糸が伸びてきます。この菌糸は遺伝情報を持つ染色体が1組しかない「一核菌糸」と呼ばれるもので、このままではきのこを作ることはできません。言ってみれば、半人前の菌糸です。
そこで、もう1つ別の胞子から伸びた一核菌糸を用意して、同じ寒天培地の上で伸ばします(交配)。
すると、菌糸同士が出会ったときに「接合」して、2組の染色体を持つ「二核菌糸」ができるのです。
これでようやく一人前の菌糸となるのですが、一核菌糸同士には相性(交配型)があるので、全て接合するとは限りません。雌雄があるわけではないので、同じきのこの胞子同士でも接合することもありますし、別のきのこの胞子同士でもダメなこともあります。
胞子を見ただけでは、交配型の違いは分からないので、とにかく交配してみるしかありません。
無事に接合した菌糸は実際に栽培してみますが、まともにきのこを作るものもあれば、きのこの芽さえ出ないものもあります。
その中から、少しでも良いものを選んでいき、徐々に選抜の基準を上げていきます。そして、最後まで残ったたった1つが、栄えある新品種になれます。
雪ぼうしN-1は、約5千組の交配を行った中から選抜した品種です。
一次選抜に残った系統が約400、二次選抜で22系統まで絞り込み、その中でも成績の良かった5系統を生産者さんの施設で作ってもらって、最終的に1つを選びました。
図 「きのこ」ができるまで
きのこの品種開発期間は植物に比べればずっと短いですが、実用性の高い品種を作るためには、ある程度の年数と膨大な作業が必要です。
品種開発は、本当に地道な作業の積み重ねなのです。
きのこ・特産課 武田綾子