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近年、人工林を天然更新によって広葉樹林化するための間伐や抜き伐りが行われるようになりました。そこで、作業後10年間の広葉樹の更新状況と下層植生の変化の事例から、作業後の管理方法を考えてみたいと思います。
調査地は新潟県村上市に位置するスギ人工林です。2006年に材積率40%の抜き伐りが実施されており、その時の林齢は60年生、林分材積約800立法メートル/haでした。ここに0.1haの固定調査区を設置し、樹高2m以上の広葉樹の樹種、樹高、胸高直径と、2m以下の植生の階層別の植被率、植生高、種名を毎年記録しました。
その結果、伐採後2年で2m以上の広葉樹の現存量は、伐採の影響を受ける以前の水準に回復し、草本層の植被率も最大となりました(図・ii)。そして、その後は徐々に低木層が発達して草本層の植被率は低下してきました(図・iii、iv)。
更新した広葉樹のうち高木性樹種は伐採前から林内に分布していたケヤキ、ミズキ、ホオノキ、イタヤカエデなどの伐根から萌芽・再生したもので、本数密度も400本/haほどと十分とは言えないため、当面は広葉樹林ではなく混交林を目標に管理して行くのが適当と思われます。また、図・ii齡の頃はモミジイチゴなどの茨や背丈ほどもある草本、葉の大きなシダ類によって林床が厚く覆われ、歩くのもやっとという状態でした。したがって、次の作業を計画するのは階層構造が発達し草本層の植被率が低下した後の方が効率的なようです。
図 抜き伐り後の下層植生の変化の様子
このように天然更新は自然力によるところが大きいことから、うまく行かない場合も想定して進める必要があります。そこで、目標の設定や計画の立て方を支援するためのシミュレーションソフト群が森林総研(注1)を中心とするグループによって開発され現在インターネット上に公開されました(注2)。大変わかりやすい動画も2本用意されていますので、広葉樹林化に取り組もうとする方は是非ご覧になってください。
(注1)国立研究開発法人森林研究・整備機構
(注2)広葉樹林化技術の実践的体系化研究
広葉樹林化技術の実践的体系化研究<外部リンク>
森林・林業技術課 塚原雅美