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森林研究所たより ブナ母樹林の種子生産量調査について(林業にいがた2016年9月号記事)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0058597 更新日:2019年3月29日更新

1 はじめに

ブナは樹木の中でも豊凶の周期が長いものに分類されており、5~7年に1回程度豊作となり、その他の年は並作や、種子がほとんどならない凶作になると言われています。また、豊凶の周期は広い範囲の個体間で同調して生じることが知られており、その現象は「成り年現象」や「マスティング(masting)」などと呼ばれています。

新潟県は、県内産ブナ苗育成のための母樹林を県内各地に指定しており、「豊凶状況と生産種子の質を把握し、森林整備対象地の自然条件に適した県内産優良種苗の計画的供給を可能にすること」を目的に、母樹林での種子生産量調査を行っています。調査は、各母樹林に設置した種子トラップ(網)で落下種子を採取するシードトラップ法(写真)で行い、毎年秋に落下種子を回収し、健全、粃(しいな)、虫害等に分類して落下種子密度や乾燥重量などを測定しています。これまで、全国的に大豊作となった平成17年に調査し、その後は平成21年から毎年調査していますので、今回は調査期間中の豊凶状況について紹介します。

シードトラップ法(設置状況)の画像
写真 シードトラップ法(設置状況)

2 これまでの調査結果

昨年度までの各母樹林(8林分)における総落下種子数の年変動を図に示しました。県内では、全国的に大豊作となった平成17年以降、23年、27年の2回豊作となっています。

ブナ母樹林における総落下種子数の年変動(凡例は各母樹林の指定番号、「×」は欠測)の画像
図 ブナ母樹林における総落下種子数の年変動(凡例は各母樹林の指定番号、「×」は欠測)

ブナの種子生産に関する文献や、平成17年の調査結果を参考として、総落下種子数が1平方メートルあたり10個未満の林分を「凶作」、10個以上200個未満を「並作」、200個以上を「豊作」と区分すると、平成17年は全調査林分、23年は8林分中6林分、そして27年は7林分中5林分が「豊作」に区分される結果となりました。また、平成23年と27年の種子生産量を17年と比較すると、母樹林によって比率は異なるものの、全体的には両年とも17年の60パーセント程度の生産量でした。これらの結果から、平成23年、27年については、並作に近い豊作であったと考えられます。

3 豊凶現象の変化

近年、ブナの豊凶状況をモニタリングしている全国各地で、マスティングの変化(同調性の低下)や豊凶周期の拡大などが報告されています。当県の調査でも、例えば平成25年のような、母樹林間で種子生産の同調性が低い年が確認されています。

豊凶現象の変化のメカニズムを解明することは、県内産優良品種の計画的供給のためだけではなく、ブナ種子を主要なエサとするツキノワグマ等野生動物の保護・管理のためにも重要です。今後も引き続き、ブナ母樹林での種子生産量調査を実施し、豊凶現象についての知見が得られればと考えておりますので、関係機関の皆様のご協力をよろしくお願いします。

森林・林業技術課 伊藤幸介

 

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