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森林研究所たより コンテナ苗と育苗試験について(林業にいがた2016年3月号記事)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0058600 更新日:2019年3月29日更新

コンテナ苗とは根鉢つき(用土つき)苗の一種で、根鉢が差し込み栓のような細長いプラグ状で根巻きがなく、土に棒などで穴を開けたら根鉢を差し込むだけで植栽できるというものです。ヨーロッパなどでは主流のスタイルとなっており、日本でも植栽効率の向上に期待が寄せられるようになってきました。

育苗に際しては、その特徴でもあるコンパクトで固い根鉢を発育させるために、細長いキャビティ(育苗容器)、保水性・通気性に優れ軽い培養土(ココピートなど)を用います。キャビティは、内壁に根を底に向かって誘導するリブ(畝のような縦筋上の突起)やスリットがあり、底は開いて培養土が空気層に触れるようになっています。こうすることで機械的な根切りのかわりになり(空気根切りと言います)、根の分枝が増え、根巻きのない充実した根鉢ができます。

ただし、これはマツ属やブナ科などが主な造林樹種となっている地域で開発された方法という経緯もあって、スギ苗の育て方ではわからないことも多くありました。たとえば、キャビティの種類(側面のスリットの有無、容量など)、設備(ハウスや空気根切りのための架台など)、肥培方法などです。さらに、新潟県のような積雪地帯では冬期間の管理をどうするかなども問題でした。

そこで、森林研究所では平成25年度から新潟県の環境に適した育苗の資材・施設選びに取り組みました。その結果、スリットの有無は苗の成長に大きな影響を及ぼさないこと、架台は必要だけれどもハウスは必ずしも必要ではない、冬の間は雪の下にならないようにする方が良いことなどがわかりました。

そして現在は試験育苗した苗を植栽し、成長経過を調査しています。コンテナ苗のサイズ規格は苗長30~50cm上までの6段階ですが、その標準形状比(苗長/根元径)は85と、裸苗規格の形状比35~64に比べてずいぶん細長いものです。植栽時期については、裸苗のように「根を大きく広げ、土をかけ、踏みつける」という手間がない分、雪のグライド(葡行)による引き抜けが起きやすいという報告もあります。そうであれば気温が下がって根の成長が止まる前に十分な成長期間を確保する必要があるでしょう。育苗方法についても個々の苗の成長差や徒長など新たな課題が見つかっています。今後も生産者との情報交換、植栽事例の収集を続け、より使いやすい苗形状や造林方法を検討する予定です。もしコンテナ苗を使ってみたい方がいらっしゃいましたらご相談ください。

シングルキャビティコンテナを壊して根の発達を見たところ (左:スリット型、右:リブ型)の画像
シングルキャビティコンテナを壊して根の発達を見たところ (左:スリット型、右:リブ型)

マルチキャビティコンテナ ※底面が空気に接するように架台に載せて育てるの画像
マルチキャビティコンテナ ※底面が空気に接するように架台に載せて育てる

森林・林業技術課 塚原雅美

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