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森林研究所たより ナメコ種菌が若返る ―細胞選抜による活性化―(林業にいがた2015年3月号記事)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0058578 更新日:2019年3月29日更新

はじめに

 食用きのこ類の中には、短期に品種の寿命を終えるものがあります。その代表例がナメコやエノキタケです。新品種を開発しても、その特性である収量や形質を維持できなくなってしまう劣化がおきます。これは、変異した細胞が徐々に増えていくことが原因と考えられています。
 その対策として、1997年に福島県林業試験場より報告された細胞選抜という技術があります。劣化した種菌の細胞をバラバラ(菌糸断片)にして単細胞化し、再生させることで、その中から元の特性に復帰(活性化)した菌株を選抜できる可能性があるというものです。
 そこで当所では、この細胞選抜の効率化のため、菌糸断片に高温のストレスを与えることで劣化した細胞を選択的に死滅させ、正常細胞を得られないか試験を試みました。材料はナメコを使用しています。

温度と暴露日数の検討

 適正な高温ストレスの強度について、温度と日数を変えて検討しました。最初は手探り的に38℃で行いました。1日の処理で菌糸断片の再生が約1%のみで、生育異常(写真)を示す割合が多くなってしまいました。これを踏まえ、次に32℃と35℃で各1~5日の処理を行いました。各処理によって得られた菌株の平均収量を比較した結果、35℃で1日の処理を行った菌株が最もよい結果を示しました。この強度が劣化種菌の活性化の効率的な選抜に有効と考えられます。

38℃処理での生育異常(左手前は正常)の画像
写真 38℃処理での生育異常(左手前は正常)

培養日数の検討

 種菌の劣化に伴い一般的に培地熟成に必要な培養日数が長くなる現象が見られます。そこで、前述の高温処理(35℃1日)により得られた菌株の培養日数について検討を行いました。試験は10-~13週の培養を行い、2番収穫までの平均収量について比較をしました。結果は表のとおりです。標準的な培養日数は12週程度ですが、高温処理菌株では、10~12週で対照区よりも多く収穫できました。このことから、劣化種菌の細胞選抜により、培養日数を短縮できる可能性があることがわかりました。

表 選抜菌株の培養期間別の収量
培養期間[週] 試験区 平均累積収量(2番収穫)[g]
10 対照 203.8g
10 処理 215.2g**
11 対照 195.6g
11 処理 206.5g***
12 対照 196.5g
12 処理 206.3g**
13 対照 211.9g
13 処理 213.8g

**  有意差あり(t検定 P<0.01)

*** 有意差あり(t検定 P<0.001)

きのこ・特産課 池田裕一

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