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スギ枝葉は重量でスギ林全体の10~20パーセントを占めています。一般的な造材作業では、スギ枝葉は林内に散在するため収集にコストがかかりますし、林内から持ち出すことは自己施肥系である森林内から養分を剥奪する事になります。
しかし、全木集材では造材前にスギ枝葉が林外に持ち出されることになり、土場に集積されるスギ枝葉は造材作業の支障になったり、豪雨で流出する危険性もあります。そこでスギ枝葉の活用方法について検討してみました。
以前スギ枝葉の燃料特性を調べたところ、灰分は3~4パーセントとスギ樹皮のように多いのですが、発熱量は1キログラム当たり約5,300~5,500キロカロリーで、市販のペレットと比較すると1割程度高いことがわかりました。そこで、スギ枝葉を原料に通常の間伐材に適した厚さのダイスでペレットを製造しました(写真)。
しかし、個々のペレットの密度は市販の木質ペレットが1.0~1.4グラムであるのに対し、スギ枝葉ペレットは1.0グラム以下でした。また、強度の指標である機械的耐久性は90パーセント以下で、基準である97.5パーセント以上を満たしませんでした。
このようにスギ枝葉を原料にペレットを製造するには、通常の間伐材に適した厚さのダイスでは圧縮力が足りなく、密度が低く強度が弱い品質になることがわかりました。そのため、間伐材に適したダイスよりも厚いダイスを用いて圧縮力を高くする必要があると思われます。
また、製造したスギ枝葉ペレットは強い香りがしたため、新潟大学の協力を得て、精油成分について検討しました。
精油の抽出方法にはいくつかありますが、一般的な水蒸気蒸留法で生のスギ枝葉、乾燥したスギ枝葉、スギ枝葉ペレットの3種類を原料に精油を抽出しました。
その結果、精油抽出量を生のスギ枝葉と比較すると乾燥したスギ枝葉は約3分の1、スギ枝葉ペレットは約5分の1に減少していました。乾燥やペレット製造過程における熱によって、精油が揮発して減少したと考えられます。
さらに、それぞれの精油から主要成分について濃度を調べました(図)。図は主要成分の濃度を3種類の原料ごとに並べたもので、左側ほど分子量が軽い精油成分となっています。
この図のとおり、左側の分子量の軽い精油成分では乾燥、ペレット化によって濃度の減少が大きいのに対し、右側の相対的に分子量が重い精油成分では減少は小さくなっていました。このように、乾燥やペレット化によって精油量が減少するだけでなく、精油成分の構成が変化していました。
「香りのするペレット」は、燃料として使用する前に室内に置くことで芳香剤として、抗菌性や消臭効果を期待できます。しかし、採取時期や品種によって精油成分の濃度が異なる事が知られていることから、ペレットの強度も含めてさらに品質安定のための検討が必要と考えられます。
写真 スギ枝葉ペレット
図 精油成分の濃度変化
森林・林業技術課 武田 宏