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当県では、平成3年度からナメコ優良品種の育成試験を行っており、収量が多く、また、栽培期間の短縮などの、栽培コストを低減することができる品種の開発に取り組んでいます。
育成試験は、収集した野生菌株の栽培試験から菌床栽培に適した菌株を選抜し、それらの野生菌株と、県内在来品種等の交配育種によって優良品種を選抜する、という方法で進めています。野生菌株はこれまでに600菌株以上を収集し、栽培試験を行ってきました。
今回は、平成21~24年度にかけて、主に県内で採取、または当所に同定依頼のために持ち込まれたナメコの野生菌株について、菌床栽培試験を行ったので紹介します。
広葉樹オガ粉に、栄養材としてフスマを添加した菌床培地を用いて、栽培試験を行いました。
これまでの野生菌株の菌床栽培試験結果をみると、対照区として使用した市販種菌に匹敵するほどの収量が獲れる菌株の割合は少ないという傾向がありました。今回の試験でも同様の結果となり、対照区より収量が上回ったものは、栽培した35菌株中1菌株のみでした(写真1)。なお、その菌株は、対照区よりも約2日早く収穫することができました。
その他、形質面では、ナメコの傘の色が薄いという特性を有する菌株がみられました(写真2)。当課の職員で、傘色が薄い特性をもったナメコと通常の茶色(褐色)のものを食べ比べてみたところ、傘色が薄いものの方が味も淡白であるという意見が多数ありました。
写真1 良好な結果となった野生菌株(左上:発生状況)
写真2 左の対照区と比較し右の野生株の傘色が薄い
今回の菌床栽培試験の結果から、対照区よりも収量が多く、栽培期間が短かった1菌株について、今後の育種素材として取り入れていけるものと考えられました。また、形質面においても特徴がある菌株を得ることができました。
ナメコ菌株は他のきのこに比べても劣化が早く、それにより収量の減少や、形質不良が起きたりします。これは近年のナメコの育種において、自家、近親交配や、組織分離の繰り返しが行われるようになったためといわれており、このことからも、野生菌株を交配に取り入れることは有効と考えられます。
今後も引き続き、早期発生型や、高温下でも栽培可能な菌株、また、大型の子実体を形成する菌株など、育種素材として有望な特性や形質を持った菌株の獲得を目指して、野生菌株の収集、栽培試験を行い、ナメコ優良品種の育成試験を進めていきます。
きのこ・特産課 伊藤幸介