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近年の屋内環境の変化や施工期間の短縮により、越後杉ブランド材など乾燥材の使用が増えています。乾燥材を使うメリットとして
などがあげられています。これらは木材中の水分が少ない状態であることにより得られるものです。今回は木材中に水分がどのように存在し、どのように材質に影響を及ぼすのかについて説明します。
木材中には存在部位と存在形態の異なる2種類の水分が含まれています。一つは自由水と呼ばれ、細胞の中や細胞と細胞の間などに液状で含まれている水分で、重量の増減以外はあまり木材の性質に影響を及ぼしません。もう一つは結合水と呼ばれるもので、木材細胞壁の木材繊維などと化学的に結合している水分で、木材の膨張・収縮あるいは強度特性に大きく影響します(図1)。
図1 木材中の水分(「木材の魅力・耐力・底力」(社)日本木材加工技術協会関西支部)
生材が乾燥するときには自由水から徐々に抜けていきます。そして自由水が完全になくなり細胞壁が結合水で飽和している状態を繊維飽和点と呼び含水率は約30パーセントになります。これ以上乾燥すると結合水が失われることになり、図2のように木材の繊維間に入り込んでいた水分子がなくなっていきます。これは収縮や狂いが生じる原因となる一方で、繊維間の結合が強くなることから強度は向上することになります。国内の平均的な温湿度条件ではさらに乾燥が進み、含水率15パーセントで安定します(気乾状態)。
図2 木材繊維内での水分の状態(「木材接着講習会テキスト」(社)日本木材加工技術協会)
しかし、実際の板材や角材の乾燥過程では全体が均一に乾燥することはなく、表層と内層部では乾燥時期にズレが生じるため、表層が結合水のみでも内層部が自由水を含んでいることになります。このことが木材乾燥を難しいものとしています。
よく「木材は呼吸する」と聞くことがあります。これは木材が周囲の温度や湿度の変化にあわせ水分を放出したり吸湿したりする調湿効果を表しており、木材繊維に水分が結びついたり離れたりすることにより成り立っているものです。内装の仕上げ材に木材を使うことは室内の湿度変動を低く抑え、快適な室内空間づくりに役立ちます。調湿効果は木材の膨張・収縮を伴いますので、乾燥材を使うことで隙間や狂いの少ない内装を作ることができます。
このように木材の性質は水分により大きく影響を受けます。乾燥材を使うことは、このような木材の性質を上手に活用していることを理解していただければ幸いです。
森林・林業技術課 小柳正彦