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森林研究所たより 積雪地における羽柄材の天然乾燥経過(林業にいがた2013年3月号記事)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0058560 更新日:2019年3月29日更新

1 はじめに

 天然乾燥は燃料費が不要で、材色変化が少ないという利点がありますが、人工乾燥に比べて乾燥期間が長く、その土地や気象条件に大きく左右されるという欠点があります。森林研究所で以前調べたところ、スギ心持ち柱材(130ミリメートル角)では含水率20%以下に乾燥するのには9ヶ月以上必要でした。しかし、スギ羽柄材(小断面の製材品)であれば乾燥期間も比較的短く、表面割れの心配が少ないなど、より多くの工場で対応可能と思われます。
 「木材乾燥ミニハンドブック」(日本木材乾燥施設協会)や「木材乾燥のすべて」(海青社)には天然乾燥の目安期間が示されています。しかし、積雪期にどの程度の期間が必要かは示されていません。そこで羽柄材の積雪地での天然乾燥経過について調べました。

2 調査方法

 断面120×37ミリメートル(冬期)、断面135×44ミリメートル(春期)、心材率74~95%の県産スギ羽柄材を試験材としました。乾燥は当所構内(村上市)の屋外で、直接雨が当たらないようにして行いました。乾燥時期は冬期(12月から)と春期(4月から)で、目標含水率は越後杉ブランドの基準である20%としました。既存資料では3ヶ月が目安期間とされていますので、それをふまえて目標含水率に達するまで計測を続けました。
 なお、ここで示す含水率は含水率計によるものではなく、全乾法により求めた値です。

3 調査結果

 乾燥経過を示したものが図です。冬期に開始した材では3ヶ月経過時点での含水率は30%程度であり、平均が20%以下となったのは5ヶ月後の5月上旬でした。春期に開始した材では1ヶ月経過時点で含水率が30%程度となり、3ヶ月経過時点で平均が20%以下となりました。
 初期含水率の違いもありますが、冬期では春期に比べ2ヶ月長くかかりました。また、積雪期でも全く乾燥しない訳ではなく、乾燥初期は比較的順調に含水率が低下することから、冬期の羽柄材の天然乾燥は予備乾燥としては有効であると考えられました。
 なお、今回の試験では表面割れの発生はほとんど見られませんでした。

羽柄材の乾燥経過の画像
図 羽柄材の乾燥経過

4 おわりに

 今回の結果は限られた地域での計測結果であり、あくまでも一例にすぎません。地域ごとに気象条件が異なり乾燥期間は異なると考えられますので、各工場にあったデータ収集を行うことが望ましいと考えます。また、実際の生産現場では初期含水率の違いや材質のばらつきにより、同じ乾燥期間でも仕上がり含水率に差が生じるため、出荷時の含水率確認が重要です。
 データの収集や品質管理は人工乾燥、天然乾燥を問わず必要な事項ですので、これらを反映させながら品質の高い越後杉ブランド材の生産につなげていただきたいと思います。

森林・林業技術課 小柳正彦

 

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