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森林研究所たより スギ精英樹クローンの材質特性(林業にいがた2008年5月号記事)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0058583 更新日:2019年3月29日更新

1 はじめに

 新潟県では良質なスギ種苗を生産するために77系統の精英樹を選抜し、これらのクローンの中から選定されたいくつかのクローンを用いて採種園等を造成しています。また、精英樹クローンの各種特性を評価するために次代検定林も設置されています。採種園等に植裁するクローンの選定にあたり成育特性や雪害抵抗性等が考慮されているものの、材質特性が考慮されていないのが現状です。しかし、将来に渡り優良なスギ材を生産していくためには材質特性によるクローン選定も必要であると思われます。

2 次代検定林の材質特性調査

 県内3カ所にある次代検定林に植裁された38クローンの、25年生から31年生時の材質を調査しました。調査する材質の項目として、構造材としての利用を考えて、強度性能の指標となるヤング率、木材乾燥の難易に影響を与える含水率、物理的性質一般との関わりが大きい容積密度を選びました。この他、平均年輪幅、心材率、心材色も調査しました。
 材質調査の結果、いずれの項目においてもクローン間に差が認められました。調査結果の一部を表1に示します。ヤング率が大きいほど強度性能が高く、心材含水率が低いほど木材乾燥が容易となるため、構造材としての用途を考えた場合に優れた材質であると考えられます。ヤング率は容積密度が大きいほど大きく、平均年輪幅が大きくなるほど小さくなる傾向が見られました。

表1 スギ精英樹クローンの材質評価 次代検定林(杉林)の画像
次代検定林(村上市南大平)

3 目標は

 スギ材に求められる材質的特徴は用途によって異なると思われます。例えば、近年は無垢の構造材として使う場合に強度性能と乾燥し易さが求められるため、ヤング率が高いことや心材含水率が低いことが重要となっています。人目につく場所で使う場合には更に年輪幅が狭いことや心材が淡赤色であることが求められる場合もあるでしょう。積極的な木材利用を要しない防災林等では成長の速さや耐雪性等が重視されることになるでしょう。これからは、目的に応じて種苗生産に用いるクローンを選定することで、より機能の高い森林を造成することが期待されます。また、スギ材の材質を維持向上し、かつ、遺伝的多様性を保つためには採種園等から不良クローンを除去するとともに、精英樹の追加選定を継続的に行う必要があると思われます。
 なお、今回の調査は77クローンある精英樹クローンのうち約半数について調査したものです。残りのクローンについては雪害や若齢であることなどにより調査できませんでしたが、数年後に追加調査を行いたいと考えています。

森林・林業技術課 岩崎昌一

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