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スギやマツなどは、苗木の無秩序な移動による成林失敗事例などから、法的に種苗配布区域が制限されています。ブナなど広葉樹の法的規制はまだありませんが、郷土の環境にあった林を育てるためには、地元の苗木の使用が最低限必要です。昨年から、県山林種苗協会による県内産ブナ苗木の供給がはじまっています(本誌・昨年9月号)。
では産地が異なるブナを植栽した場合、遺伝子の攪乱の他、具体的にどのような問題が発生するのでしょうか。研究所構内に、全国から集められたブナの産地別集植地があります。1984年産種子で、1990年に2メートル間隔で植栽したものです。北海道が木古内・白井川・大平山、東北が岩手・三戸、北陸が福井・芦生、関東・中部が天城・秩父・山梨、九州が高千穂・八代・矢部です。成長、雪害や各種害虫の被害発生状況、開葉時期等の調査を行ってきました。
開葉時期については、産地により、早いものと遅いものとで二週間の差があることを報告しました(本誌・2003年2月号、詳しくは、当所研究報告46号2005)。今回は、成長差異とクワカミキリ被害について報告します。
日本全国に分布するブナですが、地域による葉の形態的な違いが以前から知られています。日本海側のブナの葉は、比較的大きく薄いのに対し、太平洋側のブナの葉は、小型で厚いため、「コハブナ」と呼ばれます。
構内の産地別集植地は、列状配置されていて、ランダム配置ではありません。しかし、ほぼ平坦であることから、微地形等による成長影響は少ないと考えられます。
図(2005年5月測定)に見られるとおり、樹高は、北陸、九州、関東・中部が高く、東北、北海道が低い傾向が見られました。地上高20センチメートルの直径は、北陸、東北が太く、関東・中部、九州、北海道が細い結果でした。そのため、形状比(直径は地上高20センチメートル)は、北陸、北海道が約50で、東北はこれより小さく短太の、九州、関東・中部はこれより大きく細長の、傾向がありました。
図 産地別ブナの成長
クワカミキリの被害(写真)は、低地のブナ林に広く見られます。幹に規則的に空けられた排糞孔と、そこから排出されるフラス(糞と木くずが混じったもの)により、発見は容易です。
産地により被害発生率に差が見られましたが、産地の特性と言うよりも、樹高が低かった木をクワカミキリ成虫が素通りした結果ではないかと考えられました。今後も調査を継続し、産地特性があるのか検討する予定です。
クワカミキリ被害
表 成長測定木の形状および被害木率
森林・林業技術課 布川耕市