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検討に用いたデータは、全県下で実際に行われた間伐材搬出事例(n=257)である。
間伐コストは生産性と逆数関数の負の関係(図1。コストには運材費も含む)があり、生産性が低い場合、生産性の僅かな違いがコストに大きく影響し、生産性が高くなると、コストは低く安定する。集材距離が短くなるほど、また素材が大きくなるほど、集材機械の生産性は高くなることが知られているので、間伐コストもこれらの条件により低減すると考えられる。
集材機械を種類毎に分類し、伐区の林分条件を比較すると
車輌牽引タイプは、集材距離が50m程度までで、傾斜24度以下の間伐地で選択されることが多い。密度が低い高齢林分では、林内へ入りやすく、素材が大きいので生産性の向上が期待できる。
車輌積込タイプは、集材距離が長く、凹凸の少ない傾斜25度以下の間伐地で選択されることが多い。
架線大型タイプは、集材距離60m程度で、車輌系システムで行えない傾斜地で選択されることが多い。列状間伐により生産性の向上が期待できる。
以上、3つのタイプでは、使用機械を高性能林業機械に換え、十分に稼働できる伐区面積、人員配置等を確保することにより、生産性の向上が期待できる。
人力タイプや架線小型タイプは、作業路沿線の小面積で選択されることが多い。しかし、生産性が2.5立法メートル/人日を超えた事例データがなく、非常に低いものも多いので、コスト高にしないためには、計画をしっかり立てる必要がある。
架線主索タイプは、集材距離が長く、面積が1ヘクタール以上のまとまった傾斜の強い林分で選択されることが多い。
各伐区の林分条件や所有者等の意向により、選択できる作業タイプが限定されることもあると思うが、1立法メートル/人日前後が多いといった当県の現状を早急に改善するには、団地化を進め、車輌牽引、積込型タイプ、架線大型タイプへシフトしていくのが良い(生産性の高い事例はこの3つである)と思われた。
間伐コストはヘクタール当たりの出材積とも逆数関数の負の関係(図2)があり、出材積が少ない場合、出材積の僅かな違いがコストに大きく影響し、出材積が高くなると、間伐コストは低く安定する。従って、間伐コストは伐区面積と出材積にも影響を受けている。これらの関係について重回帰式を求めると、「間伐コスト=314623×面積+9588×出材積+3405」(調整済重相関係数0.944)で表すことができた。
調査、分析に御協力頂いた各位に厚く感謝申し上げる。
図1 生産費/立法メートルと生産性の関係(n=257)
図2 生産費/立法メートルと出材積/haの関係(n=257)
森林・林業技術課 日水和久