ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 トップページ > 新潟県森林研究所 > 森林研究所たより 新潟県産スギ材による合板の製造(林業にいがた2006年7月号記事)

本文

森林研究所たより 新潟県産スギ材による合板の製造(林業にいがた2006年7月号記事)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0058575 更新日:2019年3月29日更新

1 はじめに

 県産スギ材の利活用を推進するために、製材品以外の利用も求められています。一方、合板業界では、東南アジアの丸太輸出規制や、中国経済の成長を背景としたロシア産カラマツ(ラーチ)の値上がりなどによる原料調達の不安のため、国産スギ材に目を向けています。新潟県では越後杉ブランドに越後杉合板を加え、中越地震の震災復興住宅などでの利用を推進しています(写真1)。森林研究所では新潟県産スギ材を原料とした構造用合板の性能試験を行いましたのでその結果をお知らせします。

2階の床下地として使用される越後スギ合板の画像
写真1 2階の床下地として使用される越後スギ合板

2 スギ合板の試作

 新潟合板振興株式会社様の御協力により県産スギ合板を試作しました(写真2)。原料として岩船郡山北町産の丸太約100本を用いました。丸太の長さは2.0mで平均末口径は25.5cmでした。合板の原料となる丸太の最小径は16cmですので間伐材の利用も可能です。丸太の皮を剥いたあと、桂剥きのようにして厚さ2.5mmの薄板(単板)を切り出しました。剥芯径は6cmです。単板を含水率10%程度まで乾燥した後に繊維方向を互いに直交させて5枚積層接着し、ベルトサンダにより厚さ12mmの構造用合板に仕上げました。合板の大きさは910mm×1820mmとしました。製造枚数は367枚で製品歩留まりは51%でした。

試作したスギ合板の画像
写真2 試作したスギ合板

3 県産スギ合板の性能

 試作した構造用合板から任意に抽出した50枚の曲げヤング係数の平均値は5.81kN/平方ミリメートル、5%下限値(その値に満たない確率が5%となる値で、構造計算の際の基準値として使える値)は4.25kN/平方ミリメートルでした。これは一般的なラーチ合板のヤング係数の60%程度ですが、合板の日本農林規格(JAS)では構造用合板2級(下地用)の曲げヤング係数の基準値を4.0kN/平方ミリメートルとしていますので、県産スギ合板の性能はJAS2級を満足できると考えられます。なお、強度性能の向上のためには丸太の選別や異樹種材との複合化も検討する必要があると思われます。

4 おわりに

 試作した合板の一部は集会場などの公共的建物で下地材や壁材として使用していただきました。施工業者等の感想は概ね以下の通りでした。(1)軽量・柔軟で加工性がよい。(2)材面品質(材色や節など)のバラツキが大きい。(3)他樹種に比べて柔らかいので根太等の間隔を狭くするか合板の厚さを大きくする方が良い。

 これらのことから、当面は主用途を下地材として活用していくのが良いと考えられます。

森林・林業技術課 岩崎昌一

<外部リンク> 県公式SNS一覧へ