ページ番号を入力
本文
1988年から始まったカシノナガキクイムシによるナラ枯れ被害は、近年激害化し、本県の2005年の被害株数は、100,000株を超えています。枯死した樹種は、ミズナラ・コナラが主です。根元直径が20cmを超えると枯れる可能性があり、大きな木ほど枯れやすい傾向があります。カシワ、クリ(野生=シバグリ)もわずかですが、枯死が確認されています。植栽されたウラジロガシ、マテバシイ、シラカシなどカシ類にも被害が確認され、ウラジロガシでは枯死木も認められました。
枯死株数は、2001年まで10,000株以下でしたが、2002年に50,000株に急増し、現在に至っています。1×1kmメッシュ単位で被害状況をみると、被害メッシュ数の全体的な増加とともに、激害メッシュ数の顕著な増加がわかります。
図1 被害の推移
この被害急増の原因は、東蒲原などミズナラ大径木が多い地域への被害拡大によると考えられます。県で行っているナラ林分プロット調査では、コナラの枯損率が15%であるのに対し、ミズナラでは63%と違いが際だっています。
ミズナラ分布域(注)と既往被害メッシュを重ね合わせたものを図2に示しました。なお、県境付近は、国有林や未調査域です。黒く示したのが、被害未侵入メッシュです。今後、これらの地域での被害増加が懸念されます。
(注)「環境省生物多様性センター」運営の「生物多様性情報システム」の成果物を利用
図2 既往被害地と未被害ミズナラ林
単木的レベルの予防・駆除方法は開発されています。予防方法として、殺菌剤の樹幹注入やビニール被覆があります。駆除方法は、立木のまま駆除するのが好ましいと考えられ、カーバム剤の注入や、殺虫剤と粘着剤の併用散布があります。
しかし、地域単位など広域レベルでの有効な防除方法はまだありません。現在、集合フェロモン剤を利用した大量捕獲を試験中です。
薪炭利用の定期的伐採がされなくなり、大径化してきたことが、激害化した大きな理由と考えられます。通常は年2kmの速度で、被害が拡大します。防除と有効利用を兼ね、発生を予測した伐採が望まれます。この予測には、地理的情報が必要不可欠です。衛星画像解析手法による被害木抽出技術も目処が立ちました。森林情報システムとあわせ、この分野の速やかな進展が望まれます。
森林・林業技術課 布川耕市