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本誌の昨年5月号に緑色の「あかみず」の話をしましたが、今回はあかみずの増殖方法について話しましょう。
種を使って増殖する方法もありますが、種は約1mmと細かく、発芽後の成育も悪いことから、むかごを用います。
むかごは、珠芽や肉芽、胎芽とも呼ばれ、ヤマノイモ(山いも)のものが有名ですが、ウワバミソウにもできます。秋に茎の葉の付け根部分が膨らみ(写真)、上下の茎と葉が切り離されて、落下します。これを種のように播くと、親と同じ形質のものが発芽してきます。
なお、このむかごは、食べることができます。独特の食感とぬめりがあり、漬けたり、炒めたりすると、酒好きにはたまらない一品となります。
写真 ウワバミソウのむかご
一般的な赤い茎のものと当所で見つけた緑茎のものを栽培している畑で、地上に落下したむかごを採取して重量を測定しました。調査した赤茎のむかごは約1000個、緑茎は約2000個でした。
結果、赤茎のむかごは、1個当たりの平均重量は、0.24gで、全体の約7割は0.1~0.3gの大きさでした。
一方、緑茎のむかごの割合は、0.1gより小さいものが約半数を占めており、1個当たりの平均重量は0.12gと、赤茎のものの半分でした。
赤茎のものと緑茎のものについて、むかごを播いて育った苗が1年でどのくらい大きくなるか調査しました。7号の駄温鉢を用い、4月中旬に植え込み、9月に成育調査を実施しました。管理は、明るい栽培舎内に置き、1~2日に1回潅水し、液体肥料を4回施用しました。調査項目は根元径(根元から3cmでの茎の直径)と草丈(根元から先端の葉先までの長さ)としました。
結果、赤茎の場合、むかご重量が0.3g以上で、直径成長が頭打ちになっており、その根元径は約4.4mmでした。一方、緑茎の方は、むかごの重量が重いほど根元径も大きくなっており、0.2g以上で、平均根元径が約5mmになっていました。緑茎は、赤茎に比べて成育の良いことが分かりました(図)。
図 ウワバミソウむかご重量階別の成育
緑茎は赤茎に比べ、むかごが小さなものしか採取できなくてもその成育は良好で、早期に収穫するためには、0.2g以上を用いると良いことが分かりました。また、赤茎系は比較的大きなむかごが採取でき、0.3g以上を用いるのが有効であることがわかりました。
ただし、早急に苗を増殖する場合は、小さなサイズのむかごも十分利用可能です。
「山菜は山取りに限る。」などと言わず、ちょっと栽培を始めてみませんか。
きのこ・特産課 松本則行