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上の図は新潟県における基本的な雑草イネの防除体系です。詳細は令和4年度研究成果情報を参照ください。https://www.pref.niigata.lg.jp/uploaded/attachment/336550.pdf
雑草イネの発生が少ない時は抜き取りで除去できますが、発生が多くなると水田への入水から代かき、移植、除草剤による体系防除などを適期のタイミングで行うことが必要となります。
では、春が寒い年の雑草イネの出芽はどうなるのでしょうか。また、雑草イネの体系防除は何年続ける必要があるのでしょうか。
植物は種類によって生育できる温度と寒くて生育が止まってしまう温度があり、生育できる最低温度を基準温度とします。
雑草イネを含む水稲は概ね気温10℃以上で生育するので10℃が基準温度となり、10℃を超えた温度が有効温度となります。
例えば、日平均気温が15℃の時は10℃を超えた5℃が有効気温となります。日平均気温のうち10℃より高い温度を毎日積算したものが有効積算気温となります。
ここで紹介する成果は雑草イネの出芽の時期や期間は有効積算気温でおおよそ見当がつくという内容となります。
新潟県で見られる2種類の雑草イネの出芽消長と有効積算気温との関係を示したものが上の図になります。
アメダスデータなどから気温の平年値を用いて、1月1日を起算とした10℃基準の有効積算気温は、背高型では50~100℃、擬態型では100~150℃頃に出芽が始まり、両タイプとも250~300℃頃に出芽が少なくなります。
県内平野部の場合、背高型では4月末から出芽を始め、出芽の終わりは5月下旬頃になり、擬態型では5月上旬から出芽を始め、出芽の終わりは5月末頃になり、擬態型の出芽消長は背高型に比べてやや遅い特徴があります。
なお、雑草イネの種子は秋にも出芽しますが、冬になると枯死するので問題となるのは春から出芽を始めた個体です。
県内各地の代表的なアメダス地点で日平均気温の平年値を用いて有効積算気温を求めて雑草イネの出芽消長を色付けしたのが上の図です。
平野部では、背高型は擬態型に比べて出芽始めが早いものの、出芽終わりはどちらも同じ時期なります。
一方、消雪が遅く、気温の低い山間部に近い地域では平野部よりも出芽消長が遅くなります。
平年の気温の場合、雑草イネの出芽は平野部では早いもので4月末から始まり、収束は5月末頃ということになります。
上の図は新潟市近辺に見られる擬態型の雑草イネについて、巻アメダスデータを用いて出芽消長の年次変動を色付けしたものです。
気温によって出芽消長には変動があり、春の気温が低い年には出芽始めが遅れて6月上中旬まで出芽が続いています。
雑草イネの防除では、移植時、10日後、20日後の除草剤防除を行いますが、春の気温が低い年、特に4月~5月上旬頃に寒い日が続いた年は、雑草イネの出芽が後ずれして3回目の除草剤散布以降もしばらく出芽してくる可能性があります。
この対策として、早春の気温が低く、有効積算気温による出芽消長が目安の時期より遅れる場合は、雑草イネ発生圃場の移植時期を遅らせて、除草剤体系防除の効果が遅い時期まで継続するように作業スケジュールを調整することが重要です。
雑草イネが発生して種子を水田に落とした場合、防除体系を何年実施すれば根絶できるかを本県水田環境で確認したものが上の図になります。
その結果、雑草イネの出芽は、結実当年の秋から越冬後1年目の春までが多く、その後の出芽は稀であり、2年目の秋には出芽は無く、水田内の種子もすべて死滅していることがわかりました。
このことから、本県の水田条件における雑草イネ種子の寿命は2年以内であり、雑草イネの根絶には他ほ場からの侵入を防ぐとともに、体系防除を2年間確実に行って新たな種子を落とさなければ根絶できることがわかりました。
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