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近年、SDGsの観点から、植物を原料としたプラスチック代替素材が注目されています。一方で、米の消費は減少しており、新たな用途開発が必要となっています。
そこで、米を原料として、食品などの天然物と同様に廃棄やリサイクルが可能で、使用後に食べることもできる容器素材を製造しました。米由来プラスチック代替素材の開発は、環境にやさしい素材の実現とともに、米の新たな用途開発が図れると考えられます。
まず、ストロー状素材についてです。
米粉を蒸気処理後にパスタ機のマカロニ用ダイスを用いて成形することでストロー状素材が製造できます。製造条件例は図1に示したとおりです。ストローの性状は次のスライドで示しますが、原料は、高アミロース米である「越のかおり」が適しているものの、「こしいぶき」等の中アミロース米も製造できます。外観は写真のようになります。
ストロー状素材の性状を表1に示します。製造作業時に中アミロース米は付着性が高く、厚みは大きくなります。水やコーヒーに対して試験を行ったところ、いずれも4℃の冷たい飲料に使用した場合、2時間までは変形がなくストローとして使用できました。こしいぶきは温度が高いと強く変形しましたが、越のかおりは25℃でも変形が少なく、ストロー素材の原料として適性が示されました。
次に、シート状素材についてです。
米粉を図2で示した2軸エクストルーダーで加熱処理し、シート状のダイプレートで成形すると、シート状の素材が製造できます。一例として製造したシートを図3に示します。コシヒカリ、越のかおり、玄米いずれの米粉でも約1mm厚のシート状素材となります。
シート状素材は溶液が染み込みにくく、食品の容器としての利用性が高いと考えられます。図4のとおり、醤油と砂糖を混合した調味液を添加した場合、コシヒカリ、越のかおりいずれの米粉を用いても、常温で4時間ほとんど染み込みが見られません。シートの加工例としては図5のようなカップやトレイなどへの利用が想定されます。
ストロー素材、シート状素材いずれもそのままでは硬いのですが、焼成などの加熱処理をおこなうことで、食べられる状態になります。図6で示した例はオーブンで焼成したものです。米菓のような食感となります。
以上のように、米を容器素材として用いることによって、プラスチックと比べ生分解性ですので廃棄時の環境負荷が低減されます。加熱すれば食べられますので、食べることでごみの削減となります。また、米であるメリットとして、ノングルテン、ノンアレルギーであるため、既存の小麦や大豆等の素材と差別化が図れると考えられます。
最後に留意点ですが、今回示した製造条件は当センターの製造装置によって行った結果によるものであるため、使用する装置によって異なることがあります。また、製造条件は原料の影響を受けるため、製造される際には食品研究センターにお問い合わせください。
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