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搾乳ロボット飼養におけるPMR

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0604913 更新日:2023年9月26日更新

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 酪農経営は高齢化や担い手不足から農家戸数の減少が問題となっています。そのため、労力負担の軽減や経営の効率化が求められ、近年はICT機器の導入が進んでいます。その最たるものが搾乳ロボットに当たります。搾乳ロボットの場合、24時間多回搾乳が行われますが、1頭当たりの搾乳回数が増えると乳量は増加することが知られています。当センターでも、つなぎ飼いからロボットへ移行し、15%乳量増加したことを2年前に報告しています。
 また、搾乳回数すなわちロボットへの訪問回数が少ない場合があります。せっかく省力化のためにロボットを導入しても、人がロボットまで牛を誘導するようでは省力化とは言えません。そのため、搾乳回数と乳量をモニタリングして、それが増える管理が重要になります。


 

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 この図は乳用牛群検定全国協議会から出されている搾乳ロボットの基礎という冊子から抜粋し一部改変したものですが、この図を用いて基礎的なお話からさせていただきたいと思います。
 搾乳方法の中で、人が動く、又は牛が動くに分けられます。人が動く方がつなぎ飼いに当たります。搾乳ロボットは、牛が動く方に入ります。牛が動いて連続して自動搾乳するというのが搾乳ロボットの特徴です。また、搾乳ロボットの管理には、牛が通路を自由に往来できるフリーカウトラフィックや、ゲートを利用し一方通行に経路を制御したワンウェイトラフィックなどの方式があります。
 当センターはワンウェイトラフィックの一方通行で、さらに搾乳してから餌場に向かうというミルキングファースト方式を採用しています。管理の方法は色々ありますが、搾乳ロボット飼養で最も大事なのは、いかに牛を動かす管理ができるかということに尽きると思います。


 

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 もう一つ、搾乳ロボット飼養の特徴をお話ししておきたいと思います。フリーストール等で牛を飼う場合は、TMR完全混合飼料を使われることが多いのは皆さんご承知だと思います。搾乳ロボットの場合は、ロボットへの自発的誘導を促すためにロボット内で配合飼料を給与します。そのため、他の飼槽で食べさせるエサはTMRからロボット内配合飼料の栄養分を取り除いたものになります。これをPMR部分的混合飼料といいます。


 

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 PMRはTMRよりもロボット内飼料、すなわち濃厚飼料割合が減りますから、牛の食欲を掻き立てる魅力も減りがちです。そのため、PMRの栄養濃度が採食量や活動量、そして乳生産にまで影響します。このPMRの栄養濃度はどのくらいが適正かという試験をするには、かなり牛の頭数や年数を費やさなければなりません。
 そこで、とりあえず粗濃比だけを変えたときに、牛の動きや生産性がどう変わってくるかを探っていこうというのが本試験のねらいになります。


 

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 今回の試験方法はこちらです。試験は粗濃比を3区設けて行いました。60:40、55:45、50:50の3区です。1週間飼料馴致した後に1週間本試験をしてデータを採るという流れです。
 供試牛は22~26頭で、そのときの搾乳牛全頭で行いました。さらに、試験期間中に分娩や乾乳、乳房炎治療等で出入りのあった牛はデータから除きました。給与飼料はPMRを1日6回に分けて給与し、搾乳ロボット内で給与する配合飼料は1頭当たり3~3.5に固定しました。調査項目は、こちらになります。また、フリーストールには2つのエリアがあり、自由採食できるエリアとドアフィーダーで個体ごとに採食させるエリアがありますが、個別採食群も行動パターンが変わることからデータから除外しました。さらに、搾乳量が少なかったりして、人為的に搾乳回数を2回に制限している牛も、データからは除外しています。


 

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 PMRの飼料構成と飼料成分を載せました。設計上の濃厚飼料割合をは40、45、50としましたが、実際には41、45、51のようになりました。
 構成としては、配合飼料と輸入のアルファルファを変動させて、粗濃比の違いを作っており、他は同じ割合で混ぜています。ただ、試験には自給飼料のロールベールを用いているため、個々の重量変動があるため、ぴったりと設計通りにはいきませんが、それでも概ね設計値に近いものはできています。飼料成分としては、蛋白質含量(CP)はほぼ同じで、可消化養分総量TDNが変わってくる設計としましたので、CPとTDNのバランスが変わってきます。


 

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 続いて、結果です。経産牛8頭と初産牛6頭の同じ牛のデータをまとめました。同じ牛のデータですから試験の順番で分娩後日数が変わっていきます。平均すると乳量が安定する泌乳中期の牛ということがわかります。
 有意差はありませんでしたが、搾乳回数と日乳量は55:45で多くなりました。乳成分ではエネルギー充足を反映する乳蛋白質率やP/F比も55:45が高いことから55:45が結果として良さそうだということがわかります。乳中尿素窒素はTDNに対してCP割合が多くなった60:40で高くなり、飼料成分の影響を受けています。


 

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 搾乳回数と日乳量を初産牛と経産牛で分けてみたグラフです。
 初産牛の搾乳回数が55:45のときに増えているのが分かります。また、経産牛の搾乳回数は50:50のときに少なくなっています。PMR中の濃厚飼料割合が多い場合、それで満足してしまい、搾乳ロボットのエサによる誘引力が弱くなっているためだと考えられます。そのため、50:50のときは乳量も多くはありませんでした。


 

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 続いて、摂食行動時間と日乳量を示しました。
 粗飼料割合が多くなるほど、摂食行動時間が多くなることが分かります。粗飼料割合が多いほど繊維分が多くなるため、食べる時間が長くなるという物理的な側面もあります。しかし、観察していると、PMRの中に含まれる少ない配合飼料を少しでも多く食べようと選び食いをしている様子が見られ、そういった行動時間も影響していると思われます。


 

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 さらに、社会的順位が高い経産牛が初産牛を押しのけて食べる姿もよく観察されることから、採食競合が起こっていることが伺えました。
 60:40の初産牛は、55:45の初産牛よりも採食行動時間は長いですが、他の2区よりも日乳量は減少しています。これはエサを食べているのではなく、エサを探している時間が長いことを意味しています。60:40の経産牛は、摂食行動は長くなり、乳量は55:45と遜色ない結果ですから、初産牛が食べる栄養分を経産牛が摂取しているという結果を裏付けると考えられます。


 

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 本試験は馴致を入れても2週間程度の短期間のものですが、この状態が長期化した場合は、経産牛は肥り、初産牛は削痩するということが容易に想像できます。過肥は周産期疾病を招きやすくなりますし、肥りすぎ痩せすぎ、双方とも繁殖成績の悪化を招きやすくなり、経営上好ましくない結果につながると考えられます。


 

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 まとめです。PMRの粗濃比は55:45にすると牛群全体の搾乳回数や日乳量が増加し、乳蛋白質率やP/F比も増加することがわかりました。搾乳回数に関しては、特に初産牛で増加することが影響しています。一方で、PMRを50:50にした場合は、搾乳回数や日乳量が減少しました。PMRを60:40にした場合は、初産牛と経産牛で採食競合が起こることがわかりました。なお、粗濃比が55:45のPMRにロボット内給与飼料を加味しTMR換算した場合の粗濃比は50:50になります。


 

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