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落葉粉砕処理によるナシ黒星病及びセイヨウナシ褐色斑点病の発病抑制技術

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0604910 更新日:2023年9月26日更新

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 ナシ黒星病は糸状菌(かび)による病気で、落葉や新芽の上で菌が越冬します。
 3~4月頃に越冬した病原菌は、分生胞子や子のう胞子をつくります。これが4月中旬~5月下旬にかけて降雨などで飛散して葉、果実へ感染します。病原菌は2~3週間潜伏した後に、発病します。発病した病斑部には、分生胞子が多量に形成され、9月下旬頃まで2次感染を繰り返します。
 防除対策としては、一部品種では、袋掛けも併用しますが、伝染源の除去を目的に、発病した枝や芽の切除と落葉処理を行います。越冬伝染源としての寄与程度は、病芽2~3 対 病葉8~7と考えられています。したがって、病落葉処理がとても重要と考えられています。化学的防除として、殺菌剤の散布の重点防除時期は、4月中旬~5月上旬と8月中旬~下旬となります。


 

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 次に、セイヨウナシ褐色斑点病の生態と防除対応を説明します。
 褐色斑点病も糸状菌(かび)による病気で、病落葉、病果実及び枝上の病斑で越冬します。病落葉と病果実では4月頃から子のう胞子を飛ばし、子のう胞子は4月中旬~6月上旬にかけて降雨後に飛散して葉、葉柄、果こう、果実に感染します。病枝では病斑上に分生胞子を形成し、降雨後の雨滴とともに飛散して葉、葉柄へ感染します。葉、枝、果実の感染部位から、さらに分生胞子が新しい葉や、果実へ飛散し、10月下旬頃まで2次感染を繰り返します。
 耕種的な防除法としては伝染源の除去(病枝除去と落葉処理)、化学的防除は殺菌剤の防除となります。薬剤の重点防除時期は、4月中旬~6月上旬と8月中旬~9月下旬です。物理的防除法として、果実への病原菌の付着を遮断するため、6月上旬までに果実袋を掛けます。


 

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 先に説明したとおり、ナシ黒星病、セイヨウナシ褐色斑点病はともに被害落葉などの伝染源を減らすことが重要です。
 被害落葉を減らす方法として、セイヨウナシ褐色斑点病においては、ブロアを用いた落葉の収集処理法による防除方法を、平成30年度の研究成果情報として提案しました。導入した加茂市、三条市等の産地では、セイヨウナシ褐色斑点病はほぼ終息しました。一方で、未実施の産地や今後の継続については落葉収集処理の作業負担や落葉処分の煩雑さが課題です。
 そこで富山県が開発した日本なしのナシ黒星病対策に提案した落葉粉砕処理技術について、セイヨウナシ褐色斑点病に対する防除効果を確認するとともに、本県の日本なし圃場における適応性を合わせて検討しました。


 

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 まず、ここで本県で実施した落葉粉砕処理方法を説明します。
 落葉後~降雪前までに、落葉の掻き出し、モアによる粉砕、ロータリーによるすき込みの3つのステップを実施します。
ステップ1 落葉後から降雪前に、主幹と支柱周りの落葉を熊手、ブロワで走行路に掻き出します。
ステップ2 刈高3~5cmに設定したモアで原形をとどめる落葉がないように粉砕します。
ステップ3 正転、耕深5cmに設定したロータリで残存落葉量が5%以下となるよう丁寧にすき込みます。
 落葉処理目標は、残存量5%以下とします。図の左下がその写真です。右側は対照の無処理区の様子です。落葉をなくすことにより、そこからの胞子飛散量を減らすことができます。


 

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 この図は、落葉処理を実施しない圃場を100とした場合の、園地に残存する落葉量と葉から飛散する子のう胞子量の相対比率を示しています。
 落葉粉砕処理によって日本なし及び西洋なし圃場とも園地地表面の落葉量は20%以下に減少し、落葉から飛散する両病害の子のう胞子飛散量は10%以下に大幅に減少しました。


 

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 この図はナシ黒星病とセイヨウナシ褐色斑点病に対する落葉粉砕処理の防除効果を見たものです。
 本処理によりナシ黒星病、セイヨウナシ褐色斑点病の生育初期の葉と果実の発病が減少しました。セイヨウナシ褐色斑点病では、従来の落葉収集法と同等ないしやや優る防除効果が確認できました。


 

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 粉砕処理は落葉の廃棄が不要で、収集処理に比べ軽労で作業時間を大幅に短縮できます。特にモアやトラクター等の乗用機械を使用するため、収集処理に比べて非常に楽に作業が行えます。


 

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 落葉の粉砕及び収集処理は広域で実施すると効果が高まります。
 セイヨウナシ褐色斑点病の多発生園では、これまでの実績を踏まえ、まず収集処理(平成30年度研究成果情報:「セイヨウナシ褐色斑点病に対する落葉除去の効果と効率的除去法」を参照)を実施し、発生が低下した後に粉砕処理に移行します。
 本技術の詳細は、「ナシ黒星病、セイヨウナシ褐色斑点病防除マニュアル」を参照してください。


 

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