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迅速に苗立ちする根出種子の代かき同時浅層土中直播法

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0604909 更新日:2023年9月26日更新

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 直播栽培の利点は、育苗や移植に係る施設や労力を削減できること、作業の効率化や作期の分散により経営規模を拡大できること、それに伴って経営体の収益向上を期待できること、などにあります。


 

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 しかし、新潟県における直播栽培の取組は、2,000ha弱に留まっています。普及が進まない主な理由は、育苗法より出芽や苗立ちが不安定になりやすいためです。そこで、より速く、より旺盛な、出芽と苗立ちが求められています。


 

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 本県では、還元鉄粉衣法の普及割合が高いものの、未催芽種子を使用するために出芽が遅い、粉衣作業や粉衣後の酸化放熱工程が必要、酸化熱により発芽率が低下しやすい、といった欠点がありました。
 今回紹介する根出催芽法は、粉衣作業が不要で省力的なだけでなく、種子の催芽が進んでいるため迅速な出芽・苗立ちを期待できます。


 

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 根出処理の手順を説明します。
 まず、一般的な種子予措と同様に、消毒済水稲種子を網袋に小分けし、積算100℃日に浸漬します。
 次に、種子が手に付かなくなる程度に脱水した後、新品米袋に封入し、蒸気出芽器で催芽します。30℃2日間程度で根が優先的に伸長した根出し種子になります。
 根出種子の根は、その後の作業過程で折れてしまっても出芽には影響しませんが、長すぎると播種機に詰まりやすくなります。一方、芽は折れてしまうと出芽が抑制されてしまうため、伸ばさないことが重要です。
 なお、催芽ムラや雑菌汚染を軽減するために新品紙袋を用います。また、多量の種子を処理する場合は、直積みではなく棚置きを推奨します。根出種子は、15℃以下であれば10日間程度は紙袋のままで保存できます。


 

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 催芽時間と根長と芽長の関係を図示しました。
 催芽12時間までは芽も根もゆっくりと伸びますが、それ以降は黒丸で示した根だけが急激に伸長しました。平均根長3mm以下かつ平均芽長1mm以下の根出種子となるめやすは、30℃2日間となります。種子の休眠状態等によっても伸長速度は異なるため、芽と根の伸長の状況を確認して催芽時間を調整してください。


 

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 根出種子を用いた代かき同時浅層土中播種の手順を説明します。
 荒代は、土塊が残らないように、柔らかめに準備します。湛水被度50%程度に落水し、ドライブハローに専用播種機を装着して播種します。写真のように、轍や泥水の横流れが無く、鎮圧ローラーで種子が薄く覆土されるように車速、耕深、PTO等を調節してください。


 

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 播種前後の水田の状況です。
 一般的な移植栽培用の荒代よりも丁寧に柔らかく準備します。播種後は出芽率の高い落水管理を基本としますが、スズメによる食害発生時や強雨時には湛水管理に切り替えます。


 

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 5月中旬播種後3週間頃の生育状況を比較すると、根出種子の旺盛な初期生育を確認できます。


 

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 播種後苗立揃いまでの必要日数を図示しました。
 白印は5月中旬播種を、黒印は4月下旬播種を示しており、気温が高くなる5月中旬播種で葉齢進展の速いことが確認できました。また、播種時期毎に種子処理を比較すると、丸印の根出種子は角印の還元鉄粉衣種子よりも4日早く苗立ちが揃いました。5月中旬播種の根出種子は、わずか13日で苗立ちするため、雑草が繁茂する前に余裕をもって除草剤を散布できます。


 

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 苗立揃い期の苗立率を図示しました。
 苗立率は4月下旬播種よりも5月中旬播種で、還元鉄粉衣種子よりも根出種子で高くなることが確認されました。根出種子の苗立率は、還元鉄粉衣種子よりも最大で14%高く、初期生育も旺盛でした。


 

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 苗立揃い期の茎葉乾物重を図示しました。
 茎葉乾物重についても4月下旬播種より5月中旬播種で、還元鉄粉衣種子より根出種子で大きくなることが確認されました。


 

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 根出種子法の収量性や精玄米外観品質は、還元鉄粉衣法と同等でした。根出種子法では、還元鉄粉衣法よりも、初期生育が旺盛であり、茎数・穂数が多くなる傾向にあります。品種や栽培条件を加味した上で、還元鉄粉衣法よりも播種量を減らすことも可能と考えられます。


 

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 代かき同時浅層土中播種の留意点を整理します。
 一つ目は、初給水から播種までの期間を最短にしてできるだけ作土を酸化的に維持する、ということです。特に排水条件の良くない水田で播種前の湛水期間が長くなると、作土が膨軟で強還元となります。この写真のように播種時に土壌が鼠色を呈している状況はよくありません。播種した種子は土壌に沈降し発芽不良を起こします。


 

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 上の写真は播種後1週間、下の写真は播種後3週間の様子です。溜水のないところで苗立ちが不調であることから、一見すると鳥害を疑いますが、この事例は鳥害ではありません。溜水のないところで出芽した稲を調査すると白化茎長が平均で14mmもあり、その他多くの種子はさらに深く沈降して発芽できなかったと推定されます。実際に溜水のないところの土壌は、膨れ上がった状態と観察されました。


 

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 二つ目は、湛水出芽する場合は水深を深くしすぎない、ということです。
 ここでは、5月10日に播種した後、5月14日にスズメが飛来したため湛水管理に切り替えました。しかし、10cm以上の深水としてしまったため、浮き苗や転び苗が多発し、苗立率が25%まで低下してしまいました。本技術では播種深度が数mm程度と浅いため、活着までは浮力に弱いという特徴があります。


 

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 本技術のまとめです。


 

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農業総合研究所 作物研究センター

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