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水稲有機栽培における田植え3週間後の追加除草要否基準

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0603995 更新日:2023年9月26日更新

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 この図は、農林水産省が令和3年5月に策定した「みどりの食料システム戦略」の資料の一部を抜粋したものです。この戦略の中で、有機栽培取組面積を2050年までに全ほ場の25%(ほ場4筆に1筆を有機栽培ほ場)にすることが掲げられています。これを受けて、全国的に有機栽培への取組が推進され、新たに有機農業に取り組む生産者も増えていくことが予想されます。


 

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 この図は、「みどりの食料システム戦略」の施行を受けて新潟県が策定した基本計画の資料の一部です。この計画の中でも、有機栽培を含む特別栽培農産物等生産面積を、令和10年度までに令和3年度比で35%増やす目標が掲げられており、新潟県においても有機栽培取組面積の拡大は重要な課題に位置付けられています。


 

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 水稲有機栽培に取り組むうえで最も重要な課題の一つに雑草対策が挙げられます。水稲に限らず、有機栽培では除草剤を使うことができません。そのため、有機栽培の成否は雑草対策にかかっているといっても過言ではなく、雑草対策に失敗すると、収量が大幅に減るなどして有機栽培への意欲の衰えにもつながってしまいます。


 

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 水稲有機栽培の雑草対策の成否を判断するためには、雑草発生量を把握する必要があります(目安として、幼穂形成期の雑草発生量が50g/m²以下という基準が設けられています)。
 しかし、雑草発生量を測定するためには一定面積の雑草をすべて抜き取り、泥等をきれいに洗ってから、乾燥器で2日以上乾燥させる必要があり、時間や手間がかかることから現場では簡単に測定することはできませんでした。


 

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 現場で簡易にできる雑草発生量調査方法として、コドラート法を用いた簡易評価を確立しました(令和4年度参考情報「水稲有機栽培における雑草発生量のコドラート法を用いた簡易評価」)。このコドラート法は、雑草の被度を達観で調査するとともに、各雑草の草高を測定し、記録します。草高は、自然状態そのままの高さを測ります。稲の草丈測定のように定規に沿って草を起こして測定するものではないのでご注意ください。


 

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 1ほ場で3か所ぐらい調査して、野帳に記録した被度と草高を乗算して各草種の乗算優占度(以下、MDRと表記します)を求めます。それを積算して、全雑草を合計したMDRを求めます。


 

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 幼穂形成期の雑草の乾物重とMDRとの間には高い相関関係があることから、コドラート法で求めたMDRが雑草発生量の簡易推定法として使えることが明らかになりました。従来用いられてきた雑草発生量の基準値(50g/m²以下)から得られるMDRの基準値は6以下となります。


 

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 しかし、幼穂形成期(5月下旬播種のコシヒカリで7月下旬)に雑草発生量が多いことが判明しても、稲や雑草がかなり大きくなっているため、通常の除草方法はもう使えません。有機栽培では農薬も使えないため、有効な雑草対策がないことから、その年はもうあきらめるしかないという状況になってしまいます。


 

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 この図は、新潟県が策定した有機栽培の手引きに掲載されている「コシヒカリBLの有機栽培暦」です。標準的な有機栽培の場合、除草期間は田植え後約3週間です。
 そこで、除草終了時にあたる田植え3週間後の雑草発生量をMDRで測定し、雑草発生量の基準値を策定することを目的に試験を行いました。


 

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 試験は、令和3年及び4年度の2年間、新潟農総研内の有機栽培ほ場で行いました。各年、田植え3週間後と幼穂形成期に、コドラート法による乗算優占度と慣行法による雑草乾物重を調査しています。


 

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 田植3週間後の雑草乾物重とMDRの相関図です。
 確認できた草種はノビエ、コナギ及びホタルイの3種類ですが、いずれの草種においても両者の間には有意な相関関係が認められました。各草種を積算した全雑草においても、乾物重とMDRの間には有意な相関関係が認められたことから、田植え3週間後においても幼穂形成期と同様にMDRが雑草発生量簡易評価法として利用できることが明らかになりました。


 

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 この図は同じ地点で田植3週間後と幼穂形成期に測定したMDRの相関図です。
 両者の間には高い相関関係が認められたことから、田植え3週間後のMDRから幼穂形成期のMDRが推定できることが示されました。幼穂形成期の基準MDR(6以下)から外挿される田植え3週間後の基準MDRは1以下となります。


 

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 この写真は、田植え3週間後の田面写真で、画面向かって右上が雑草発生量が基準以下、左下が基準値以上に雑草が発生している田面です。実際に調査するときの見本にしてください。


 

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 追加除草要否診断の流れですが、田植え後約3週間通常の除草作業を行ったあと、MDRを調査します。その結果が1未満であれば、そこで除草終了です。
 一方、雑草発生量がMDRで1以上の場合は、そのままだと雑草が過剰に繁茂して収量等に影響が出ますので、あと1週間程度除草を継続します。
 ただし、田植え3週間後には雑草もある程度大きくなっており、チェーン除草や表層拡販型除草機では除草効果は見込めません。手押しや乗用の動力付き除草機での追加除草を行いましょう。


 

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 雑草発生量の調査は、基本的には一筆につき3か所(水口側、中央及び水尻側)を調査します。
 ただし、水稲有機栽培の場合雑草発生量にムラがありますので、雑草発生量が平均的かやや多めの地点で調査しましょう。


 

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 ほ場全体でみると雑草発生量が少なく、追加除草の必要がないと評価されたほ場でも、局地的に雑草発生量が多い地点があります。そういう場所を見つけたら、部分的に追加除草を行いましょう。


 

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