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フェーン現象や乾燥による胴割粒の多発を抑制する早期収穫判断のめやす

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0535605 更新日:2022年12月12日更新
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胴割粒は、農産物検査では被害粒の一種であり、多発すると等級や食味の低下につながります。
胴割粒の発生要因として、出穂期後の高温や登熟期前の乾燥、刈遅れ等で発生が知られています。
また、近年では農業経営体の作付面積が拡大傾向にあり、刈取り作業が集中すると適期収穫できず、刈遅れの懸念が高くなっています。
さらに、気候変動の影響で登熟期にフェーンや乾燥の発生頻度が高くなり、適期収穫した場合でも胴割粒が発生している事例が散見されます。
このように、現在の栽培環境は胴割粒が発生しやすい条件が揃っていると言えます。
そこで、本成果では収穫期前の胴割粒の多発する条件を明らかにした上で、その発生抑制対策について提示します。

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本成果では、乾燥条件を客観的に示すため、乾燥状態を数値化した飽差という指標を用います。
飽差は、1㎥の空気中にあとどれくらい水蒸気が入る余地があるかを示す数値です。
例として、同じ湿度70%の空気1㎥が2つあるとします。
一方は気温が20℃(左)、もう一方が気温30℃(右)です。
飽和水蒸気量は温度が上がるほど大きくなるため、気温30℃の方が空気中に入ることのできる水蒸気量が多くなります。
そのため、気温20℃では残り6g/㎥、30℃では9g/㎥の水蒸気が入ることができます(図の点線○)。
この数値が飽差です。
水蒸気が入る余地が大きい方が他から水蒸気を奪いやすい、つまり乾燥しているということを意味します。
このように、飽差によって空気の乾燥状態を示すことができます。
飽差は温度と湿度の計算で求めることができます。

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まず、飽差が胴割粒の発生にどう影響を与えるかを調べました。
出穂後積算気温800℃~1300℃の間、100℃ごとに増加した胴割粒を「胴割粒増加量」として縦軸に、各100℃の期間中の日平均飽差の最大値を横軸にとり、関係性を示しました。
その結果、こしいぶきとコシヒカリでは9g/㎥以上、新之助では6g/㎥以上の飽差に遭遇すると胴割粒が増加する傾向が見られました。

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高飽差に遭遇しているサンプルにおいて籾水分と胴割粒の関係を示すと、籾水分22%未満で胴割粒が増加する傾向が見られました。
したがって、収穫期前の胴割粒の発生要因として、高飽差に遭遇した時に籾水分が22%未満であることが考えられます。

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籾水分が22%未満となるのは、いずれの品種も出穂後積算気温900℃の時です。

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胴割粒の発生抑制対策として、出穂後積算気温を基とした早期収穫判断のめやすをご提案します。
まず、収穫期前の概ね800℃から飽差の確認し、高飽差が生じているかどうか注視します。
高飽差が生じなかった場合(通常年)は、胴割粒発生の懸念が低いため、各品種の収穫適期のめやすに沿って通常の収穫作業を行います。
一方、高飽差が生じた場合(乾燥年)は、籾水分が22%となる可能性のある900℃を収穫開始として収穫作業を計画あるいは実施します。
このように、高飽差の有無により早期収穫の判断ができ、収穫適期以前の胴割れの発生や刈遅れを防ぐことができます。

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900℃時点では、籾黄化率は適期収穫時と比較して5~15%程度低く、青未熟粒率は概ね2~6%発生が見られます。


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飽差の確認については、圃場に近いアメダス等の観測値から気温や湿度を取得できます。
また、飽差表(下図)を活用すると飽差の判断が容易になります。

農業総合研究所 作物研究センター

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