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詳細解説 マメシンクイガによる大豆子実被害の多発生条件と多発生に対応した薬剤防除法

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0333078 更新日:2020年11月19日更新
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 本研究成果は、マメシンクイガによる大豆子実被害の多発生条件とそれに対応した薬剤防除法を検討したものです。
 マメシンクイガに対する薬剤防除法はすでに示されており、成果情報や防除指針をご覧になれば、かなり細かに記載されています。
 しかし、突発的と感じられる多発生事例の情報が時折入ってきます。その要因はなんでしょうか?
 マメシンクイガに対する防除は、毎年ほぼ同じというところが多いようですが、「昨年は少なかったのに今年は多発した」ということが聞かれます。
 このマメシンクイガの被害は、生育時は気づかずに、収穫時に気づくため、さかのぼってその要因を探ることは難しい状況です。
 多発生した理由として、「そもそもムシが多かった」「防除がうまくいかなかった」「天候が影響した」などさまざまな要因が考えられます。
 多発生の要因を探るため、今回、5年間、長岡や柏崎を中心に延べ150程度のほ場を調査し、そのデータを解析しました。
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 マメシンクイガの基礎的なことを説明します。
 この図はマメシンクイガの周年の発生経過です。
 マメシンクイガは、年1回発生します。8月に成虫が現れ、大豆に産卵します。ふ化した幼虫は莢内に入ってマメを摂食します。十分発育すると莢から脱出して、土壌中に移ります。土壌中では、繭を作って、このまま翌年の8月まで過ごします。長期間土壌中に存在することが大きな特徴です。
 マメシンクイガの寄主植物はほぼ大豆だけですから、成虫の発生源は前年の大豆ほ場です。連作ほ場では、そのほ場内で年を越えて発生を繰り返します。大豆の初作ほ場では、付近の連作ほ場から成虫が移動、侵入してきます。
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 この図は大豆での発生経過を詳しく示したものです。
 成虫は8月上旬から発生し、盛期は8月第6半旬から9月第1半旬です。成虫は間もなく大豆の莢などに産卵し、そのピークは9月上旬です。莢からの幼虫脱出は9月下旬に始まります。
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 最初に被害の突発的多発があるといいましたが、このことは被害の発生に、年次間差やほ場間差が大きいことを意味します。年次間差とほ場間差に分けて要因を考えてみます。
 年次間差は多くのほ場に共通して影響する要因であり、代表的なものとして天候が挙げられます。
 気温や降水量はムシの生長、作物の生長に影響し、被害の年次間差として現れると見込まれます。
 マメシンクイガの被害は一般に冷夏に多いとされています。また、幼虫は高温で死亡率が高まるとの報告があります。さらに、幼虫は土壌中に長く生息していますが、湛水状態が続くと死亡率が高まることが示されています。
 本研究成果では、幼虫期の気温が子実被害量に影響する可能性が高いことを示します。
 ほ場間差は、ほ場毎に違いがある要因といえます。マメシンクイガについて言えば、幼虫密度が挙げられます。
 このムシでは、被害莢1莢当たりの幼虫数はほぼ1頭であることが明らかです。よって、被害莢数イコール幼虫数となります。先ほど、湛水が幼虫の生存率に影響するとしましたが、降水量は地域全体で違いがなくとも、排水性はほ場間で違いがあり、これが幼虫の生存率の違いを生じさせることがあります。
 本研究成果では、前年の被害粒率が成虫の発生量に影響することを示します。
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 まず、前年の被害粒率の影響についてです。
 グラフは、横軸が前年の被害粒率、縦軸が当年の成虫数です。一つのプロットが1つのほ場です。
 ばらつきは大きいのですが、両者の間に正の相関があり、前年の被害粒率が高い、つまり越冬前の幼虫数が多いほど、当年の成虫数が多くなります。また、被害粒率が数%程度の低いレベルであっても、成虫数が100頭を超えるほ場もあり、その評価には注意が必要です。
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 これは当年の成虫数と被害粒率の関係です。
1つの地区で、3年間調査したデータを年次別に示しています。
 各年次で、正の直線関係がありますが、この直線の位置が年次により違います。つまり、成虫数が同じであっても、被害粒率は年次によって違うことを示しています。
 凡例のカッコ内は、8月第6半旬~9月第4半旬の平均気温の平年差です。この期間は主な幼虫発生期間となります。
 この平年差は、24年はプラス3.7℃であるのに対して、H27はマイナス1.2℃、H27年はマイナス1.3℃です。この結果は低温年で被害が多くなりやすいことを示しています。
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 さらに気温の影響についてです。これは先ほどと同じ地区の調査データで、連年調査したほ場のデータです。上は、平均気温の平年差です。
 平成26~27年は低温で、被害粒率が前年に比べ大きく上昇していることがわかります。2年続けての低温で、一気に多発となりました。
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 次に殺虫剤の防除効果についてです。これは以前に示した成果情報を一部改変したものです。
 効果の程度を2水準で示しています。殺虫剤の種類と散布時期によって防除効果に違いがあることがわかります。
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 これは現地調査のほ場について、実施された防除の効果を、先ほどの表と照らし合わせて、「効果が高い防除」と「効果が特に高い防除」に区分してまとめたものです。
 左の「効果が高い防除」が実施されたほ場では、一部で10%を超える多発ほ場があります。年次別では、低温であったH27、H30が目立っています。
 右は「効果が特に高い防除」を実施したほ場です。成虫発生量や年次に違いがあっても、被害粒率は全体に低く抑えられています。
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 被害が多発しやすい条件として、前年の被害粒率が高いこと、8月第6半旬から9月第4半旬の気温が平年より低いことが挙げられます。
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 最後に、被害粒率の簡易な調査法を紹介します。
 ご存知のように、大豆は収穫後、すぐに子実の状態を確認できます。このように、コンバインから排出される子実をサンプリングして、その中の被害粒数を調査することで、早めに、かつほ場単位で被害粒の発生状況を確認できます。被害粒も容易に識別できますので、試してみてください。
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