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中国出身、佐渡在住の買若梅(マイ・ロアメイ)さんによる佐渡レポートを掲載しています。
第2回目のテーマは「佐渡の鬼太鼓」です。
鬼太鼓 撮影:土屋千秋
毎年4月になると「デンコ、デンコン、デン、・・・・・・・・・」と、勇ましい太鼓の響きがあちらこちらから聞こえてきます。あなたが音に引き寄せられて見に行ったなら、長い髪の毛のこわい鬼の姿にびっくりすることでしょう。取り囲む人々の喝采と太鼓の響きの中で、鬼は小撥を両手に持って激しく舞います。右に左にと踊りながら、たびたび背後の太鼓をたたき、左右から迫って来る獅子と激しく闘います。これが有名な佐渡の鬼太鼓です。
撮影:磯野保
地元では鬼太鼓の由来について、はっきりした詳しい資料がないそうです。聞くところによると、佐渡には、およそ90組の鬼太鼓があって、舞いかたもそれぞれ異なっています。鬼太鼓の舞い方を大きく分けると、国仲系、相川系、前浜系に分けられ、私の住んでいるところは新穂なので国仲系に属します。また、各集落にはそれぞれ独自の太鼓や鬼のお面があり、いわれがあります。新穂舟下の鬼太鼓は殊に有名です。数年前、台湾に招かれ大変好評を博しました。舟下の鬼太鼓について詳しい知人によれば、鬼は、いろいろな欲望を持つ人間を表し、太鼓は神社(神)を表し、獅子は神社の護りに当たるのだという。つまり、神社に入るときは、一切の私心・雑念を捨てなければならない。清らかな心を持つ人だけが許されるという。このことは、人間は、清らかな心を持つことをいつも忘れてはいけないということを言い表しているようです。
佐渡新穂皆川鬼太鼓のみなさん(翻訳者右から1番目、作者右から4番目)
いま佐渡は春です。祭礼の日、鬼太鼓の関係者は朝の早い時間に神社で儀式を行う。その後、神社から出発し、集落の一戸一戸を回って鬼太鼓を舞う。悪魔をはらい、この家に幸福が訪れますようにと、家内安全・五穀豊穣を祈る。集落の戸数は大小さまざまで、大きな集落では夜遅くまで時間がかかり、大変です。鬼の役目の人はずっと踊り続けているから、へとへとに疲れます。最後に神社で儀式を行って祭礼の一日が終わる。これらを見て、私は、春節の爆竹の習慣を思い出しました。世界のどこの国でも、行う形式は違うけれど、悪魔をはらい五穀豊穣を願い、幸せを祈る心は変わらないものです。
撮影者:磯野保
鬼太鼓の練習はとても厳しい。村の青年たちは、高校を卒業した直後の人から30歳くらいまで。祭礼の一ヶ月前から練習を開始します。鬼太鼓の仲間に入って最初の年は獅子の舞い方を練習します。鬼の役に選ばれることは名誉なことです。しかし、鬼の生き生きとして真にせまる舞い方ができるようになるには大変な努力が必要です。鬼は白鬼と黒鬼の二人で、その他の構成メンバーには獅子を舞う人、提灯を持つ人、太鼓を打つ人などがいます。鬼の演技は最も重要なポイントになります。鬼の役は3年間。それが終わると後進の指導に当たります。佐渡では、だんだん青年が少なくなって、30歳を過ぎても鬼太鼓に参加しています。私は心から佐渡の鬼太鼓が末永く続いてほしいと願っています。
長い冬がようやく終わり、賑やかな太鼓の響きで、春の扉が開けられ、万物が冬の眠りから目覚めた。春が来た!草木が一斉に芽を吹き出す。そう、気づかないところでもやわらかい緑の芽が大地を突き破って伸びている。佐渡の春は、魔術師が大自然の装いを一新させたかのように変化する。激しく荒れていた海も、穏やかで青々としている。いろいろな花が咲き、まわりの緑と美しさを競い合っている。桜の花も負けずに、自分の可愛いピンクの頬を出して・・・・。まるで美人コンテストで競い合っているかのようで・・・。遠くから眺めていると、美しくて美しくてもう離れたくなくなるぐらいです。誰が一番美人か、見分けることはできないけれど、私は佐渡の春が大好きです。
美しい景色にばかりに心を奪われていないで冷静な心に戻って考えると、春の季節で最も忙しい人は誰でしょう。それは勿論、農家の人たちですね。次回、佐渡の春耕のことを書こうと思います。皆さん、どうぞよろしくね。
日本語翻訳: 雑賀三郎
参考資料:「民俗芸能」(風流 東日本)文化庁
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