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令和6年7月12日(金)に、気になる企業とのコラボセミナーVol.6 きら星株式会社と考える「移住・定住のキホンとホンネ」を、行政担当者を対象に開催しました。
(参考)募集チラシ
消滅可能性自治体の報道がなされるなど、人口減少や少子高齢化への対策は、地方自治体にとって急務の課題です。
きら星株式会社の代表取締役である伊藤綾さんは、民間の立場から地方の衰退の解決に取り組むべく、移住促進のため職業紹介やスペース支援、起業支援等を行っています。
地方の衰退解決に向けた活動を通じて得たノウハウや、まちづくりを推進する上で大切な心構えなどを伊藤さんからお話いただくことで、行政の皆さんが考えを深める機会になると考え、今回のセミナーを企画しました。
講師:きら星株式会社 伊藤 綾 氏
コーディネーター:新潟県都市局都市整備課 桝潟 晃広 氏
湯沢町から参りました、きら星株式会社の伊藤と申します。
私は新潟県柏崎市の生まれですが、母の実家が長岡市にあり、子どもの頃は柏崎と長岡を行き来して育ちました。
大学進学を機に東京へ行き、人生の転機となったのは、2社目の勤務先であるイオンモールでの経験です。イオンモールでは、地方に大型商業施設をつくる仕事をしていました。施設ができることで雇用が生まれ、地域の税収も増えるという社会的意義を感じていましたが、少子高齢化が進む中で課題にも直面しました。周辺地域の高齢化が進むと、消費が減り、テナントが撤退し、施設が空洞化していく。そんな現実を目の当たりにしました。
最終的には、商業施設を閉鎖し、他の事業者に引き渡す仕事を担当しました。この経験から、まちづくりには「ハコ」だけでなく「そこに住む人」が重要だと痛感しました。
現在は、地方で人を中心にしたまちづくりを行っています。湯沢町を拠点に事業を展開し、人材育成や地域活性化に取り組んでいます。私たちの活動の目的は、地域の人々と一緒に未来を描き、実現していくことです。
ご存じの通り、新潟県では人口減少が続き、転出超過の状況にあります。しかし一方で、首都圏には移住潜在層が非常に多いという明るい兆しもあります。
これはふるさと回帰支援センターの調査や推計に基づくデータですが、移住潜在者は約309万人に上るとされています。この数字は非常に大きく、地域ごとに分散して移住者を受け入れることができれば、人口減少の影響を和らげる可能性があります。
もちろん、自然減は避けられないものの、社会減をどのように抑えるかが重要な課題です。この移住潜在層をターゲットに、地域にどのように引き込むかを具体的に考えることが、これからの取り組みの鍵となるでしょう。
では、「住み続けられる地域社会」をどう作るかを一緒に考えていきたいと思います。
ここで重要なのは、「マイナスをプラスにする」ような発想ではなく、現実を受け入れたうえで、どのように持続可能な地域づくりを目指すかという視点にシフトすることです。広がりすぎた市街地の再デザインや、増加する福祉・介護ニーズへの対応など、多くの課題がありますが、それらに一つずつ向き合っていく必要があります。
私たちの役割は、「誰もが住みたいまちで暮らせる社会をつくる移住支援会社」です。
ミッションは、「住みたいまちをつくる仲間を増やす」こと、そしてビジョンは「住みたいまちを未来につなぐ」ことです。創業当初は「地方に暮らす人を増やして、消滅可能性都市をなくす」という目標を掲げていましたが、現在はより広い視点で、移住者だけでなく住民全体が住みたい町を一緒につくるという方向性に変わっています。
私たちは現在、行政との連携のもとで「ワンストップ移住アウトソーシングサービス」を提供しています。このサービスでは、住まいや仕事、コミュニティの紹介まで、一元的に対応する窓口を運営しています。私たちの窓口では移住希望者のニーズを総合的に受け止め、心理的ハードルを取り除き、適切な情報や機会をつなげることを目指しています。
また、移住者と地元企業を結びつける職業紹介事業も行っています。移住支援を通じて地域全体の活性化を図ることが私たちの目標です。これからも住民・移住者を含むすべての人々が「住みたい町」をつくるための仲間となり、共に取り組んでいける社会づくりを進めていきたいと考えています。
私たちが大切にしているのは「自分たちだけで頑張らない」という考え方です。移住と定住の支援は単独で完結するものではありません。地域のプレーヤーや企業と連携し、共に取り組むことで初めて持続可能な成果を生み出せると考えています。
さらに、「人づくり事業」にも取り組んでいます。この事業は、地域で重要な役割を担う「ナンバーツー」を増やすことを目指しています。地方企業では経営者のナンバーツーとなる人材が不足しており、それが企業の発展を妨げる要因の一つだと考えています。そのため、ナンバーツーとして活躍できる人材の育成を通じて、地域経済を活性化させたいと考えています。
皆さん、「移住・定住を推進する理由」について考えたことはありますか?
「人口が減少しているから。」と考える方もいると思います。では、なぜ人口が減ってはいけないのか。単に「人口減少を止める」ことが目標になると議論が停滞しがちです。人口減少そのものを問題とするのではなく、「減少した中で、どのように地域社会をリデザインしていくか」という視点が重要だと思います。
移住・定住を推進する行政の担当者として、人口減少の現実を受け入れつつ、それにどう向き合うかを考えなければなりません。そして、それは1職員としてだけでなく、1市民としても考えていくべき課題です。
では、どうやったら住みたい住み続けたいまちになりますか?桝潟さんはどうお考えですか。
(桝潟)学び方や働き方などの、生き方の選択肢を増やすことだと思います。
(伊藤)そうですね。人が減っていくと維持できない点かと思います。選択肢が少ない地域では、住む人の自由や可能性が制限されます。それが人手不足や企業の存続問題など地域の課題に直結しています。多様な選択肢を提示し続けることが鍵となるでしょう。
また、移住・定住は都市間競争の面もあります。その観点からも地域の優位性を明確にすることが重要ではないでしょうか。「ご飯がおいしい」「自然が豊か」だけではなく、具体的な利便性や生活の質を伝える工夫が必要です。例えば、スキー場が近い、手頃な価格で住まいを提供できる、通勤圏内に自然と都市の両方があるなどです。
地域の強みや優位性を明確にし、他にはない具体的な価値を提供することが、移住・定住を推進する上での大切です。
私は、移住者数の数字を重視した目標では誰も幸せにならないと考えています。
例えば、お金がもらえるから、と移住する人は、地域住民とトラブルが起こることもあります。田舎暮らしの煩わしさなども含め、地域を愛し、住み続けてくれる人を増やしていきたいと考えています。
また、地域住民からその地域のことを「何もないね」と言われることがありますが、町の良さを理解し、誇りを持つことが大切です。地域住民が自分の町に対して愛着を持ち、関わりを深めていけるよう、市民教育を推進する必要があると思います。
最終的には、市民一人ひとりが地域づくりの一員となれることが理想です。
特に自治体職員にも、全員がまちづくりの当事者である意識を持って、縦割りの意識を改善してほしいと感じています。人口減少問題は、非常に深刻な課題です。これは産業の振興、空き家対策、環境問題、水道料金や税収、教育施設など、自治体運営のあらゆる分野に波及する複合的な問題ではないでしょうか。
部署を越えて自治体職員が一丸となり、一市民として地域の課題解決に取り組むことで、移住者だけでなく、現在住んでいる住民にとっても良いまちづくりが実現できると信じています。
移住施策を進める際には、総合戦略との紐づけが重要です。単発的な施策に終わらず、長期的な視点で地域全体の発展につながる形を目指すべきだと考えています。
また、自治体内での引き継ぎや連携の重要性をここで強調したいです。個々の担当者が孤立することなく、総合戦略に基づいた施策を推進することで、真に効果的な移住政策が実現できると考えます。
<まとめ>
今回の「気になる企業とのコラボセミナー」は、地方の衰退解決に取り組むきら星株式会社の伊藤代表取締役を講師に迎えて開催しました。 当日は移住・定住支援に取り組む行政・関係機関から50人の参加者にお集まりいただき、活気のあるセミナーとなりました。
伊藤講師からは、きら星株式会社が取り組む移住・定住推進事業についてご紹介いただいたほか、自治体の移住・定住支援において必要となる根本的な考え方についてお話していただきました。また、桝潟コーディネーターの進行で行われた意見交換会では、参加者の積極的な参加もあり、参加者それぞれが考えを深める場となりました。
今後も企業と行政のコラボレーションが地域課題の解決に結びつくようなテーマ選定でセミナーを開催していきたいと考えております。
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