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法人事業税の外形標準課税について
法人事業税に外形標準課税制度が導入されています。資本金1億円超の法人を対象に、「付加価値割」、「資本割」、「所得割」を申告納付していただくものです(平成16年4月1日以後に開始する事業年度分から対象になっています)。
外形標準課税の概要
対象となる法人
事業年度終了の日に資本金の額又は出資金の額が1億円を超える法人
(公益法人等、特別法人、人格のない社団等、投資法人、特定目的会社、一般社団法人及び一般財団法人を除く。)
※令和6年税制改正により、外形標準課税対象となる法人の範囲が拡大されました。詳細は「外形標準課税の対象法人の見直し及び中間申告義務判定基準の変更について」よりご確認ください。
適用時期
平成16年4月1日以後に開始する事業年度分から適用されています。
- 確定申告納付
決算期変更等がない場合は平成17年3月決算分からです(事業年度の月数が12ヶ月の法人の場合)。 - 中間申告納付(予定申告又は中間申告)
外形標準課税対象法人は事業年度が6月を超える場合には必ず申告を行う義務があり、中間申告納付が必要です。
課税標準
区分 | 課税標準 | |||
---|---|---|---|---|
所得割 | 所得 | 計算は通常どおり | ||
付加価値割 | 付加価値額 | ●収益配分額 報酬給与額(給与・賞与・手当・退職金等の合計額) + 純支払利子(支払利子-受取利子) + 純支払賃借料(支払賃借料-受取賃借料) ± ●単年度損益(繰越欠損金控除前の所得) |
||
資本割 | 資本金等の額 |
「法人税法第2条第16号に規定する資本金等の額」又は「資本金+資本準備金」のいずれか大きい額 |
- 報酬給与額が収益配分額の7割を超える場合は、その超える部分を付加価値額から控除します。
- 一定の持株会社、資本金等の額が1,000億円を超える法人等については、配慮措置があります。
税率
税率表の外形標準課税対象法人の欄を参照してください。
申告納付
区分 | 申告納付額 | 申告期限 | |
---|---|---|---|
確定申告納付 | 各事業年度に係る付加価値割、資本割及び所得割の合算額 | 各事業年度終了の日から2月以内。 ※申告期限延長法人は延長期限以内 |
|
中間申告 | 予定申告 | 前事業年度の税額÷前事業年度の月数×6 | 当該事業年度開始の日から6月を経過した日から2月以内。 ※外形標準課税適用法人についてはすべて中間申告納付が必要となります。 |
仮決算に基づく ※予定申告に係る事業税額を超えないときに限ります。 |
当該事業年度開始の日から6月の期間を一事業年度とみなして、当該期間の付加価値額、資本金等の額及び所得を計算した場合・当該金額に係る付加価値割、資本割及び所得割の合算額。 ※連結申告法人についてはこの方法による中間申告はできません。 |
徴収猶予について
外形標準課税適用法人で次の要件に該当するものは、都道府県知事に申請の上、承認を受けた場合、3年以内に限り事業税の徴収が猶予されます。
- 3年以上連続して所得のない法人で、地域経済・雇用等に与える影響が大きいと認められる場合
- 創業5年以内の所得のない法人で、技術の高度性・事業の新規性等が地域経済の発展に寄与すると認められる場合
外形標準課税の算定方法など
報酬給与額
報酬給与額 = 報酬・給与等の合計額(A)+ 確定給付企業年金等の掛金(B)
報酬・給与等の合計額(A) | 確定給付企業年金等の掛金(B) |
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役員・使用人に対する報酬・給料・賃金・賞与・退職手当等、その他これらの性質を有する給与(取扱通知)
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※法人税の所得の計算上損金の額に算入されるものに限られます。 |
報酬給与額に含まれないもの
- 法人税の所得計算で損金経理されないもの
- 通勤手当・在勤手当のうち、所得税において非課税とされる相当額
- 適格退職年金の移管のための返還金額
- 法定福利費
労働者派遣法又は船員職業安定法に基づく、労働者派遣又は船員派遣に係る報酬給与額
労働者派遣又は船員派遣を受けた法人
労働者派遣又は船員派遣の役務の提供の対価として、労働者派遣又は船員派遣をした者に支払う金額に75%を乗じた金額を報酬給与額に含めます。
報酬給与額 = 派遣契約料×75% + 自社の従業員等に係る報酬給与額
労働者派遣をした法人
派遣労働者に係る報酬給与額を限度として、労働者派遣の対価として労働者派遣の役務の提供を受けたものから支払を受ける金額に75%を乗じた額を報酬給与額から控除します。
報酬給与額 = 自社の従業員等に係る報酬給与額 - 派遣契約料×75%
※「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」に基づく契約又は船員職業安定法に基づく契約のみに適用されます。
純支払利子、純支払賃借料の算定
純支払利子 = 支払利子 - 受取利子
(支払利子<受取利子の場合はゼロ)
支払利子 | 受取利子 |
---|---|
各事業年度において支払う負債の利子で、法人税において損金算入されるもの (手形の割引料他) [取扱通知による算入項目]
|
各事業年度において支払を受ける利子で、法人税において益金算入されるもの (手形の割引料他) [取扱通知による算入項目]
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純支払賃借料 = 支払賃借料 - 受取賃借料
(支払利子<受取利子の場合はゼロ)
支払賃借料 | 受取賃借料 |
---|---|
土地又は家屋の賃借権、地上権、永小作権その他の土地又は家屋の使用又は収益を目的とする権利で、その存続期間が1月以上であるものの対価として支払う金額で、法人税において損金算入されるもの。 ※土地又は家屋(住宅、店舗、工場、倉庫その他の建物をいう)には、これらと一体となって効用を果たす構築物及び附属設備を含みます。 |
左記の賃借権等の対価として受け取る金額で、法人税において益金算入されるもの |
単年度損益の算定
各事業年度の単年度損益は、欠損金の繰越控除を行わなかったものとした場合における法人事業税の所得となります。
なお、各事業年度の単年度損益の計算において欠損金額が生じた場合には、当該欠損金額を収益配分額(報酬給与額、純支払利子、純支払賃借料の合計額)から控除します。
【付加価値割に係る配慮措置 《雇用安定控除》】
人件費比率が高い業種への配慮のため、「報酬給与額」が「収益配分額」の70%を超える場合は、その超える部分を、雇用安定控除として、「付加価値額」から控除する。 その結果、付加価値割の税負担額が軽減される。
例:甲社(報酬給与額の割合が高い法人)
収益配分額 | 単年度損益 | ||
---|---|---|---|
報酬給与額 | 純支払利子 | 純支払賃料 | |
150 | 15 | 5 | 30 |
雇用安定控除 =「報酬給与額」-(「収益配分額」×70%)
=150-(170×70%) = 150 - 119
=31
付加価値額 = (「収益配分額」+「単年度損益」)-「雇用安定控除」
=(170 + 30) - 31
=169
資本割の算定
資本割 = 資本金等の額 × 税率
資本金等の額 = 「法人税法第2条第16号に規定する資本金等の額(または同条第17号の2に規定する連結個別資本金等の額)」又は「資本金+資本準備金」のいずれか大きい額
- 資本金等の額は各事業年度終了の日における金額となります。
- 清算中の法人については、資本金等の額はないものとみなします。
- 事業年度が1年に満たない場合は月数按分します。
資本金等の額が1,000億円を超える場合の圧縮措置
資本が大きい業種への配慮のため、「資本金等の額」は、「資本割の課税標準の圧縮特例」として、下表の「資本金等の額区分」に応じ、それぞれの「算入率」を乗じた額に圧縮。
資本金用の額 | 算入率 |
---|---|
1千億円以下 | 100% |
1千億円超5千億円以下 | 50% |
5千億円超1兆円以下 | 25% |
1兆円超 | 0% |
【例】乙社(資本金等の額が9千億円の法人)
圧縮特例後の資本金等の額
1千億+(5千億-1千億)×50%+(9千億-5千億)×25%=4千億円
【無償増資、無償減資等による欠損補填を行った場合の資本金等の額の調整措置】
(1)無償増資(2)無償減資等による欠損補填を行った場合は、調整後の金額を資本金等の額とします。
(1)無償増資
平成22年4月1日以後、利益剰余金又はその他利益剰余金による無償増資を行った場合、その増加額を加算する。
(2)無償減資等による欠損補填
- 平成13年4月1日から平成18年4月30日までの間に、減資(金銭その他の資産を交付したものを除く)による欠損の補填を行った場合、欠損の補填に充てた金額を控除する。
- 平成18年5月1日以後に、剰余金による損失の補填を行った場合、損失の補填に充てた金額を控除する。この場合の控除額は、資本金の額又は資本準備金の額を減少し、その他資本剰余金として計上してから1年以内に損失の補填に充てた金額に限る。
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