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【十日町】みんなで支える地域医療~社団法人十日町市中魚沼郡医師会
新潟県の人口10万人当たりの医師数は187.5人で、全国41番目。全国平均の224.5人より37.0人少なく、全国平均との差は、拡大傾向にあります。
十日町地域が所在する魚沼医療圏域は124.4人と県内7医療圏の中で一番医師が少なく、その中で十日町地域は更に少ない119.7人(実人員で85人)となっています。
このような中で、県立十日町病院が急性期の医療のほとんどを担っていますが、この十日町病院での医療を支えるために関係する方々からご意見をいただきましたので、掲載します。
まず、最初は、社団法人十日町市中魚沼郡医師会の富田浩副会長(医療法人社団富田医院院長)です。
1次救急医療の実態と課題
現在十日町市の委託を受けて、社団法人十日町市中魚沼医師会員が一般診療所・市営診療所・民間病院で行う在宅輪番制での休日1次救急当番医は、地域の休日時間外の医療を守るためにも、そして圏域の2次救急のほとんどを担当する県立十日町病院の救急外来に軽症患者が集中することを防ぎ、勤務医がこれ以上疲弊しないように県立十日町病院を支援するためにも重要な役割を担っています。
しかし、現状は年間約3,300人の休日当番医受診者数に対し、同日の県立十日町病院の救急外来受診者数もなお2,000人余りに昇り(図)、医師会の休日1次救急当番医は効率的に利用されているとは言えません。
現況には、次のような問題があります。
(1)受診者数の施設間のばらつきと受診者の受療動向
平成19年度から平成21年度までの3年間分の当番医1回当りの平均受診者数は33人、最少7人から最大58人と大きな幅がありました。
特に、一般診療所と市立診療所及び病院群の平均を比較しますと21年度では45人対17人と大きな差がみられました。受診者に対して行った調査では、近い時だけ医師会休日当番医を利用し、遠い場合は十日町病院救急外来を受診するようなケースが多くみられました。
(2)受診者数の季節変動
受診者数のピークは、ゴールデンウイーク及び年末年始に認められました。
(3)受診年代の偏り
医師会休日救急医の受診者の約半数は20歳未満で、多数の小児と幼児を含んでいました。
現在の医師会休日1次救急の課題と解決のための方策
以下に、現在の医師会休日1次救急の課題と解決のための方策について、考えてみたいと思います。
受診者数のばらつきについては、市立診療所や病院群が十日町地域の中心から距離的にかなり離れていることを考慮する必要があります。しかしながら、病院群の受診者が少ない理由は、休日当番医に常勤医でなく休日に外部委託の当直医が関わることも一因かも知れません。患者さんの多くは、近くのかかりつけ医(必ずしも1施設だけとは限りません。)への受診を希望しています。近所に当番医がない時は、不慣れな遠方の当番医を受診するよりも地域の中心部にある十日町病院の救急外来を選んで受診しています。
常に、近くでかかりつけの当番医が診療していることが理想的ですが、南北に長い十日町津南医療圏をカバーするには、複数の当番医の開設が必要になります。
また、受診者数の季節変動に対応して、帰省者の多いゴールデンウイークや、更にインフルエンザなどのピークも重なる年末年始には、当番医の加重労働を避けるためにも、やはり複数の当番医を開設するべきと思われます。
しかし、会員数、特に内科系診療所の少ない当医師会にとって、対応は難しい状況にあります。広い医療圏で当番医が休日毎に変わる在宅輪番制は、地域を平等にカバーする意味では住民サービスとして公平な制度といえます。しかし、受診者の受療動向を考えますと、地域の中心部に1次救急診療所を固定したセンター方式の方が効率良く、1次救急診療を行えるのではないでしょうか。
実際に受診者の声は、在宅輪番制ではそこへ向かう交通手段がないことや、診療所の所在地が分からないといった不便さを訴えています。少なくとも、地域の中心部に1次救急センターを設置すれば、交通手段は確保しやすいことになります。また、センター内に複数の診察室を設ければ、受診者数の変動にも柔軟な対応もできるでしょう。
2次救急を担当する県立十日町病院と連携して少ない医療資源を集中して効率的な診療を行えば、土曜午後や平日夜間の1次救急診療も可能となるかもしれません。まず、行政が主体となって、災害時の救急診療拠点を兼ねた休日1次救急診療所を開設し、予算措置によって他地域からの医師派遣を利用するなどの抜本的な対策を講じることを期待したいと思います。
また、休日1次救急受診者の約半数が小児・幼児を含む未成年者であることは、受診内容の詳細な分析までは行っていませんが、平日の一般外来の小児受診者比率から考えても、自宅で対応可能な症例や休日を利用したコンビニ的受診が多く含まれるものと推測されます。行政には住民への、特に小児の救急に対する知識の伝達や、十日町病院救急外来へのコンビニ受診を止めていただくなどの救急外来受診に関するさらなる啓発活動を望むものであります。
これらの対応で、将来県立十日町病院の救急外来を受診する1次救急患者数を現在の半分以下にすることができればと、願っています。
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