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コシヒカリの有機入り肥料栽培における適正な中干し開始時期のめやす
コシヒカリの有機入り肥料栽培では中干し開始時期を目標穂数比率で6~8割の時期とすることで過剰生育や倒伏を抑制できます。
コシヒカリの有機入り肥料栽培における適正な中干し開始時期のめやす [PDFファイル/162KB]
コシヒカリ栽培は近年、有機入り肥料による栽培が一般的となるなかで、変動気象下で中干しの開始時期が遅れ、幼穂形成期の生育量が大きくなり、適正な穂肥施用ができずに品質が低下する事例がみられています。
そこで、適正な生育量確保と適正な穂肥施用に向けた中干しの開始(落水)時期のめやすについて、検討しました。
試験は、写真のように2ほ場で中干し開始時期を4時期に変えて3か年行いました。
すなわち、中干し開始時期を目標穂数(380本/m²)に対する茎数比率で、概ね(1)6割、(2)7割、(3)8割、(4)10割の4段階で設定しました。
中干し開始時期別の茎数の推移をみると、(1)、(3)>(2)、(4)となりました。
これは水尻側の試験区が水口側よりも生育が大きくなる傾向があるためと考えられました。
そこで、(2)と(3)をまとめて、中干し開始時期7~8割の時期として扱い、目標穂数比率で3段階、6割、7~8割、10割として検討しました。
この図は中干し時期以降の葉色の推移を示しています。
中干しを目標穂数に対する茎数で6割程度の時期に開始すると、葉色は最高分げつ期に濃くなり、その後の葉色は低下しやすい。また中干し開始時期が目標穂数に対して10割程度の茎数の時期だと、最高分げつ期後の葉色が濃くなり、さめにくいことが分かります。
この図は3か年の中干し開始時期別の幼穂形成期の生育量(草丈と葉色の積値)と成熟期の倒伏について示しています。
目標穂数比率で6~8割の茎数の時期に中干しを開始すると、遅い中干しよりも幼穂形成期の生育量を小さく制御でき、また、倒伏程度は小さくなっています。
この図は幼穂形成期の草丈と葉色の積値と成熟期の稈長の関係について中干し開始時期別に示しており、幼穂形成期の草丈と葉色の積値が大きいほど、稈長が長くなることがわかります。
目標穂数比率で6~8割の茎数の時期に中干しを開始すると、10割の時期の中干しよりも幼穂形成期の生育量、稈長を小さく抑えています。
以上から、幼穂形成期の生育過剰や倒伏を回避するには、目標穂数に対する比率で6~8割の時期を中干しの開始時期のめやすとします。
特に過剰生育しやすいほ場では中干しは早めの6~7割の開始が適当と考えられます。
なお収量・品質については、幼穂伸長期が多照で、登熟気温が平温の条件では、中干し開始時期の違いによる収量や玄米品質の違いは、みられませんでした。
中干し開始時期が早いほど出穂後の雑草発生量が増加する傾向がありますが、水稲の生育収量に影響する程度ではないと考えられました。
ただし、連年の影響を考えると、減水深が大きく雑草発生の多いほ場では中干しは8割の時期が適当と考えられます。また雑草発生が多いほ場で中干しを早める場合は、中干し後の中・後期剤の処理を検討する等、その後の雑草発生に注意が必要です。
この成果情報は細粒質グライ土の標準的な地力のほ場における、有機質50%肥料栽培による試験結果をまとめたものですが、同時に行った化成肥料による栽培(左図)においても中干しの効果は同様で、有機質50%肥料栽培(右図)との違いはみられませんでした。
化学肥料栽培でも中干し開始時期のめやすとして、同様に適用できると考えられます。
中干し開始時期及びその後の水管理については、中干し開始(落水)後は、1~4日後に溝切りを行い、土壌のpfが1.5に到達した時期を目安に灌水(中干し終了)し、以降は飽水管理(pf1.0を目安)としました。
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