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チェルノブイリ原子力発電所事故等調査報告書

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0042622 更新日:2015年11月27日更新

 平成27年(2015年)10月18日から23日まで、知事以下7名の訪問団がウクライナを訪れ、チェルノブイリ原子力発電所事故及び事故によるウクライナでの被害や対策の状況等を調査しました。

概要

 サマリーについては、このページの下部にテキストを掲載しています。

報告書サマリー[PDFファイル/246KB]

報告書 全体版 全68ページ

チェルノブイリ原子力発電所事故等調査報告書 一括版[PDFファイル/5.81MB]

報告書 分割版

チェルノブイリ原子力発電所事故等調査報告書サマリー
平成27年11月27日

 平成27年(2015年)10月18日から23日まで、知事以下7名の訪問団がウクライナを訪れ、チェルノブイリ原子力発電所事故及び事故によるウクライナでの被害や対策の状況等を調査した。
 まず、現地視察した同原子力発電所については、来年4月で事故から30年経過することになるが、今も厳重な立入規制や放射能管理の下で、事故の影響を低減・除去する作業が国際的な支援も受けながら、粛々と行われていた。
また、国立放射線医学研究センター、立入禁止区域管理庁、ナロジチ地区行政庁などにおいては、専門家や実務担当者から住民等の健康被害とその対策、除染の状況などについて、説明を受けた。
限られた時間で、通訳を介しての聴取であったため、関心事項の全てを網羅できたわけではなく、曖昧な回答しか返ってこなかったものもある。
また、国の体制そのものも、かつてのソビエト連邦が解体し、現在のウクライナに変わってしまっているので、当時のゴルバチョフ政権がグラスノスチ(情報公開)を打ち出したとはいえ、事故の真相については未だ闇に包まれている部分もある。
とはいえ、今回の訪問でかなり詳しく現況を知ることができた。史上最悪の原子力発電所事故と云われ、その影響は今も色濃く残っているが、地下水対策や被害者認定基準など、国全体でその拡散防止や収束あるいは救済や補償に関し、戦略的に大胆かつ統制のとれた対応を行ったと思われる点も多い。
チェルノブイリ原子力発電所事故を文字どおり「他山の石」として、その教訓を福島第一原子力発電所事故の今後の収束作業や我が国の原子力政策に活かしていくことが必要である。

1 調査でわかった事実

  1. 事故の状況と直後の対応
    1. チェルノブイリ原子力発電所では、下流域への影響を防止するため、炭鉱夫等も動員して地下水汚染防止対策が行われ、汚染水問題は生じなかった。
    2. 事故直後に、30km圏内の住民約11万6千人を強制的に避難させた。
  2. チェルノブイリ原子力発電所の現状と今後の対応
    1. 今でも立入禁止区域の車や人の出入りについて、放射能管理が厳格に行われている。
    2. 事故から約30年が経過し、施設が老朽化しているため、事故を起こした4号機を新たに覆う巨大なシェルターを建設中であった。総工費は20億ユーロ以上で、2017年完成予定である。
    3. 視察時におおよその放射線量を測定したところ、4号機石棺から250mぐらいの地点で15μSv/h、3号機建屋内で最大19μSv/h、発電所から4kmのプリピャチ市で0.5-2μSv/hだった。
    4. 立入禁止区域管理庁によれば、原発事故被害者数は約200万人で、その判断基準は1991年の法律に基づき居住年数や事故処理実績等によるとのことである。
    5. ウクライナ全体では、現在でも総発電量の45%を原子力発電に依存している。
  3. 被害者等の状況と対応
    1. リクビダートルと呼ばれる事故処理に関わった作業者は約60万人で、医療費支援や住宅の提供など様々な支援制度があり、国家の英雄として顕彰されている。
    2. 被害者への補償は、避難者、リクビダートル、汚染地域居住者、被ばく者の子どもの4つのカテゴリーに分けられ、光熱費、検診費、薬剤費、治療費などが措置される。
    3. 事故直後は、旧ソビエト連邦政府が対応措置のために年間約40億USドルもの多額の予算を措置していたが、ウクライナ独立後、大幅に減り現在は約1億USドル程度となっている。
  4. 除染、検査等の状況
    1. 10km圏内の全ての木造住宅は、壊した上で地中に埋められた。
    2. 全ての汚染地域に検査場がある。1990年代には汚染野菜はほぼなくなり、現在は肉と牛乳のみで問題となることがある。現在は2006年に決めた基準で判断している。
    3. 汚染地域は、第1ゾーン(立入禁止区域)、第2ゾーン(強制移住区域)、第3ゾーン(任意移住区域)、第4ゾーン(放射線管理区域2014年廃止)に区分されていた。

2 所見

  1. 旧ソビエト連邦には、核に対する専門的な知識を持った部隊や組織があり、情報公開等の点で問題はあったが、事態の悪化防止を最優先に統制のとれた対応をしていたと思われる。
  2. 放射性物質が出ないように放射線レベルをコントロールしながら対処し、かつ、水を汚さないことを基本に、最初から戦略的に行っていたと思われる。
  3. 現在でも厳格な放射能管理を行うともに、新たなシェルターを巨費を投じて建設するなど事故の影響を最小限に抑えている一方で、本格的な除染や廃炉作業は後世の技術開発等に委ねるとしているところに現時点での限界を感じた。
  4. リクビダートルを国家の英雄として称えるとともに、様々な支援制度を作るなど、社会全体で支える仕組みができていた。
  5. 法律の明確な基準により補償範囲を定めていること、対象資格は症状によるのではなく、居住年数や従事作業経験など客観的基準で判断していることは参考になると思われる。
  6. 除染や検査も地域の実情に応じて行われているが、無理に原状回復などを目指さず、現実的な範囲で対処していると感じられた。

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