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技術委員会電子会議室(7月24日付け議題(1)「燃料棒からの放射性物質の漏えい」に関する委員意見)

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委員意見

代谷座長(7月24日)

 東京電力が、燃料被覆管にピンホールが生じ、燃料棒中で核分裂に伴って発生するガス状の放射性物質が原子炉水中に漏洩したものと判断し、原子炉出力を降下させて制御棒を操作することにより原子炉内の局所的な出力を変化させ、ピンホールが生じた燃料集合体の位置を特定する作業を、外部への放射能の影響がない状態として、行うことは理解できる。東京電力には、燃料の品質管理の面から望ましくない状態が起こったことに留意して品質向上に努めるとともに、くれぐれも外部への放射能の影響がないように、放射線・放射能の監視を強化して作業を実施していただきたい。
 なお、ピンホールが生じた燃料集合体の位置を特定した後、当該集合体の出力を抑制する措置を行って定格熱出力に戻す場合には、東京電力には、このような措置があくまでも暫定的なものであること十分に認識した上で、放射線・放射能の監視強化を継続して外部への放射能の影響がないように万全の措置をとっていただきたい。また、発電所に常駐している国の検査官にはこのような運転状態についてしっかりと監督していただきたい。

 東京電力の回答

 燃料棒から核分裂で生じた放射性物質(核分裂生成物)が燃料被覆管内部より炉水に出てくることを燃料漏えいといっておりますが、このようなことは直ちに安全を脅かすものではありませんが望ましいことではなく、当社としても発生を低減すべく、燃料の設計改良(フィルター付燃料※1の導入)・品質管理(炉内清掃等)や運転管理(ワイヤーブラシの使用禁止等の異物混入防止対策)に留意し努めて参りました。
 これまでの取り組みの結果、諸外国に比べて発生率は小さくなっておりますが、偶発的発生をなくすには至っていない状況です。
 引き続き、高感度オフガスモニタの導入による燃料漏えいの早期発見や、フィルター付燃料の導入を順次進めるなど発生低減に努めて参ります。
 また、制御棒操作によって原子炉内の局所的出力を変化させピンホール※2を生じた燃料を特定する作業を実施しますが、この作業を実施する際にも高感度オフガスモニタの変動はもとより、炉水中のよう素濃度、排気筒の監視など放射能の監視を確実に実施いたします。
 ピンホールが生じた燃料集合体の位置を特定した後、当該集合体の出力を抑制する措置を行って原子炉の出力を定格熱出力に戻しますが、その後は、放射能・放射線の監視強化を継続して当該の措置が有効に作用していることを確認しつつ運転いたします。
 仮に漏えいが進展して炉水よう素濃度が保安規定の運転制限に関わるような場合は、炉を停止して当該燃料の取り出しを行うなど適切な対処をいたします。
 平成12年に発生した当所6号機における燃料漏えい事象においては、原子炉水中のよう素131の濃度上昇度合いより原子炉を停止しております。
 なお、運転継続を行った経験は当社でも多数(9.5ヶ月を含む9件)ありますが、この様な場合であっても次回定期検査においては、当該の燃料は取り出し、継続使用しないこととしております。

※1 フィルター付燃料
 燃料集合体内部への異物の侵入を防ぐ目的で、燃料集合体の下部に設置するフィルターが付いた燃料〈別紙-1参照〉
※2 ピンホール
 微孔、微細な穴

別紙-1はこちらをご覧ください[PDFファイル/483KB]

鈴木(元)委員(7月24日)

 23日に続いて再度のオフガスモニタによる指示値上昇の検出に対して、燃料被覆管に微小な孔が発生したとの東電の判断は妥当であり、炉出力を低下させて漏洩燃料棒を含む集合体の位置を特定する作業は、最初の段階の対策として通常行うものであり、必要である。
 排気筒モニタの指示値に変動がないことにより、外部への放射能の影響は無いと判断できる。
 当該集合体の位置が特定された場合に、その集合体の出力を抑制した上で再びプラント出力を定格熱出力に戻すことは、暫定的な対応として許容できるが、それでも漏洩が止まらない場合は、炉を停止して集合体を交換するなどの新たな対策に進む必要が出てくる。

東京電力の回答

 ピンホールが生じた燃料集合体の位置を特定した後、当該集合体の出力を抑制する措置(「PST」パワーサプレッションテスト:出力抑制法※3)を行って原子炉の出力を定格熱出力に戻しますが、その後は、放射能・放射線の監視強化を継続して当該の措置が有効に作用していることを確認しつつ運転いたします。
 仮に漏えいが進展して炉水よう素濃度が保安規定の運転制限に関わるような場合は炉を停止して当該燃料の取り出しを行うなど適切な対処をいたします。
 平成12年に発生した当所6号機における燃料漏えい事象においては、原子炉水中のよう素131の濃度上昇度合いより原子炉を停止しております。
 なお、運転継続を行った経験は多数(9.5ヶ月を含む9件)ありますが、この様な場合であっても次回定期検査においては、当該の燃料は取り出し継続使用しないこととしております。
 ご指摘のとおり、運転に当たっては的確に監視して参ります。

※3 PST(パワーサプレッションテスト:出力抑制法)
 プラントの出力を下げて安定した状態で制御棒(全数205体)を操作し、排ガス中の放射性希ガス濃度を測定することにより漏えい燃料を特定します。
 出力抑制法により漏えい燃料が特定できた場合、近傍の制御棒を挿入し、当該漏えい燃料の出力を抑制します。
 それによりガス状の放射性物質の漏えいを低減させることができます。〈別紙-2参照〉

別紙-2はこちらをご覧くださいPDFファイル/38KB]

北村委員(7月24日)

 燃料の品質管理上、漏れたことは望ましくない状態である。
 しかし、漏れた値そのものは大きな値ではないと考える。
 排気筒モニタの指示値に変動は見られないことから、安全は十分に担保されていると判断します。
 また、プラント出力を降下させ、漏洩の可能性がある燃料集合体を調査するとの措置は妥当なものと判断します。

東京電力の回答

 燃料棒から核分裂で生じた放射性物質(核分裂生成物)が燃料被覆管内部より炉水に出てくることを燃料漏えいといっておりますが、このようなことは直ちに安全を脅かすものではありませんが望ましいことではなく、当社としても発生を低減すべく、燃料の設計改良(フィルター付燃料※1の導入)・品質管理(炉内清掃等)や運転管理(ワイヤーブラシの使用禁止等の異物混入防止対策)に留意し努めて参りました。
 これまでの取り組みの結果、諸外国に比べて発生率は小さくなっておりますが、偶発的発生をなくすには至っていない状況です。
 引き続き、高感度オフガスモニタの導入による燃料漏えいの早期発見や、フィルター付燃料の導入を順次進めるなど発生低減に努めて参ります。
 また、高感度オフガスモニタを活用して、燃料漏えい位置を特定し、燃料被覆管のピンホールが進展する前にPST(パワーサプレッションテスト:出力抑制法)を実施して対処するなど運転管理面からの対応にも努めているところです。

鈴木(賢)委員(7月24日)

 キセノン133は、ウランなどの核反応による生成物であり、燃料被覆管に何らかの穴が空き漏れたと判断できます。
 制御棒の各チャンネル駆動により核反応を抑制し、放射性物質の変化から損傷部位の特定を試みることは有効と思われます。
 燃料被覆管の破損はかなり小さいことが予測されますが、被覆管は放射能防護の1つであり、見逃すことはできません。
 また、被覆管の損傷の度合いと形態をどのような計画で解析するかも検討していただきたい。
 いずれにしても、燃料棒の大きな破損に至る前にしかるべき対応を必要とします。

東京電力の回答

 燃料棒から核分裂で生じた放射性物質(核分裂生成物)が燃料被覆管内部より炉水に出てくることを燃料漏えいといっておりますが、このようなことは直ちに安全を脅かすものではありませんが望ましいことではなく、当社としても発生を低減すべく、燃料の設計改良(フィルター付燃料※1の導入)・品質管理(炉内清掃等)や運転管理(ワイヤーブラシの使用禁止等の異物混入防止対策)に留意し努めて参りました。
 これまでの取り組みの結果、諸外国に比べて発生率は小さくなっておりますが、偶発的発生をなくすには至っていない状況です。
 引き続き、高感度オフガスモニタの導入による燃料漏えいの早期発見や、フィルター付燃料の導入を順次進めるなど発生低減に努めて参ります。
 また、微小な漏えいを検知できる高感度オフガスモニタを活用して、漏えいを極初期に発見し、進展する前にPST(パワーサプレッションテスト:出力抑制法)を実施して対処するなど運転管理面からの対応にも努めており、これまでに多数の実績(当社9件)を蓄積してきたところです。
 被覆管の損傷の度合いと形態によって排ガス分析結果に特徴的なパターンが認められることが知られております。
 例えば、キセノンでは、半減期の長いキセノン133の変動と半減期の短いキセノン138の変動を見ることによって燃料被覆管の破損形態を推定することができます。
 燃料被覆管に微小なピンホールが生じた場合には、核分裂生成物が長時間燃料被覆管内に滞留し、半減期の短いキセノン138は減衰することから、半減期の長いキセノン133が比較的多く漏れだし、変動が大きくなります。
 一方、破損形態が大きい場合は、燃料被覆管内での滞留時間が短くなり、半減期の短いキセノン138も燃料棒から放出されるため、キセノン138の変動も大きくなります。
 このように、モニタの変化の強度に加え、検出される核種のパターンを分析することで損傷の度合いと形態を推定することができるわけです。
 今回の高感度オフガスモニタによる検出ではキセノン133の変化が卓越しており、かつ、変動が小さかったことから「極小さなピンホール」と考えております。
 今回の燃料被覆管からの微小な漏えいについては、各モニタの変動量や排ガス・炉水の放射能測定結果等から燃料被覆管の微小なピンホールと考えております。
 しかしながら、この微小なピンホールもこのまま放置しますと、燃料棒内に原子炉水が混入し燃料被覆管の二次損傷※3につながる恐れがあることが今までの研究や解析で分かっております。
 このことから、早期に微小な漏えいを抑制することが大切であり、現在漏えい燃料の調査と当該燃料の出力抑制作業を進めております。
 出力抑制が成功している限り原子炉は安定的に運転可能であり、燃料被覆管のピンホールの拡大による二次損傷の可能性は小さいと考えております。
 なお、次回定期検査時に漏えい燃料の詳細調査を行い、原子炉外に漏えい燃料を取り出し詳細点検を実施する予定です。

※3 燃料被覆管の二次損傷
 水素化により燃料被覆管が脆くなり損傷するもので、メカニズムは以下のとおりになります。

  1. 燃料被覆管のピンホールより水が燃料棒(燃料と燃料被覆管の隙間)に入り込み、放射線による水の化学分解や燃料被覆管内面の酸化により水素が発生します。
  2. 発生した水素は燃料被覆管に吸収され、水素との化合物が生成されます。
  3. 燃料被覆管内の水素は、温度の高い燃料被覆管内側から、温度の低い燃料被覆管外側に拡散(移動)します。
  4. 水素が拡散(移動)する際に、燃料被覆管に貫通孔(微孔)または小さなき裂を発生させる。

吉川委員(7月24日)

 東電さんがされていることは、昔とは違って、最近は高感度になった検出器を生かして、微小な核分裂生成物の漏洩が検出できるので、通常レベルから2桁程度高くなった検出から(「燃料漏洩」ではなく)、当該事象を燃料棒微小クラックの発生と特定しています。
 そして、原子力出力を20%低下させた状態にした上で、多数ある制御棒のうち、一部の制御棒の挿入位置を変えて中性子分布をひずませるという、制御棒パターンをいろいろ変えて、核分裂生成物量の出方がどのように変わるかを次々に調べていくことで、炉心のどの部分の燃料棒に微小クラックが存在するのかを調べようとしています。
 以上の試験方法は、こういった事象発生時にプラント運転で行われている通常の試験方法です。
 本事象は「燃料漏洩」ではなく、正しくは「燃料棒微小クラック発生による核分裂生成物漏洩」です。また、軽微な破損燃料の存在については、許容運転範囲内での取り扱いですので、直ちに炉を停止しなければならないというものではありません。
 ただし、東電さんは制御棒挿入パタンを変えることによって、破損燃料からの核分裂生成物量を抑えつつ、再び100%定格運転に戻すとされていますが、破損燃料のあるところは、中性子束が低下した分だけ、他の部分は以前より中性子束が高くなる(言い換えると出力が高くなる)ことになり、他の部分でまた燃料クラックが生じる恐れもあるので、

  • 質問1
     そのようにならないことをどのように確認されるのか。
  • 質問2
     次の炉停止までどのように監視していくのか。
  • 質問3
     さらに核分裂生成物が増えていくならこれはどのように対処するのか。

東京電力の回答

  • 質問1 「そのようにならないことをどのように確認されるのか」について
     破損燃料以外の燃料集合体の出力が事象発生前より高くなったとしても、保安規定に定められた制限値の範囲内であれば、燃料の熱膨張による破損は生じないものと考えております。
     そのため、破損燃料の出力を抑制しても他の燃料集合体の出力が保安規定に定められた制限値※4を超えないことを、あらかじめ解析により確認します。
     また、定格出力までの出力上昇時、及びその後の運転に際しては、プロセス計算機により毎時燃料集合体1体毎の出力を監視し、制限値を超えていないことを確認します。
    ※4 保安規定に定められた制限値
     「核燃料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」に基づき、柏崎刈羽原子力発電所原子炉施設の保安のために必要な措置を保安規定として定めています。
     同規定において「原子炉熱的制限値」という項目で、運転上の制限を定めております。
  • 質問2 「次の炉停止までどのように監視していくのか」について
     高感度オフガスモニターによる連続した監視をするとともに、以下の燃料漏えい監視に関連するパラメーターを監視していきます。
    • 気体廃棄物処理系線形放射線モニタ
    • 気体廃棄物処理系除湿冷却器出口放射線モニタ
    • 活性炭ホールドアップ塔出口放射線モニタ
    • 排気筒放射線モニタ(SCIN)
    • 排気筒放射線モニタ(IC)
    • 気体廃棄物処理系再結合器上部温度
    • 気体廃棄物処理系フィルタ出口流量 など
      *上記関連パラメーターにて、具体的には、
    • 気体廃棄物処理系では、放射性物質が系統内で処理(活性炭による減衰)されているか
    • 排気筒モニタでは、異常な値を示していないか
      などを監視しております。
      また、燃料集合体1体毎の出力が保安規定で定められた制限値の範囲内であることを、毎時プロセス計算機により監視していきます。
  • 質問3 「さらに核分裂生成物が増えていくならこれはどのように対処するのか」について
     放射線監視モニタまたは原子炉水中のよう素濃度が上昇する等の状態となった場合には、保安規定に従い原子炉を停止して破損燃料を取り替えることとします。(保安規定上の運転制限値:よう素131濃度が1.3×103Bq/g以下)

角山委員(7月25日)

 燃料棒の被覆管に微小な穴があき放射性物質が漏れ出たことは、由々しき事態と思いますが、今回の漏えい量は少なく、また排気筒モニタの指示値に変動がないことから、プラント出力を低下させて、該当する燃料集合体を特定することは妥当と思われます。
 しかし、今回の事象と地震との関係の有無、例えば下記の2項目等が気になります。

  • 質問1
     過去に発生したこのような事象の頻度、原因及びとられた対応
  • 質問2
     燃料棒に対する地震の影響、例えば保管状態や保管期間等に地震の影響がなかったかどうか。

東京電力の回答

 燃料棒から核分裂で生じた放射性物質が炉水に出てくることを燃料漏えいといっておりますが、このようなことは直ちに安全を脅かすものではありませんが望ましいことではなく、当社としても燃料の設計・品質管理や運転管理に留意し発生低減に努めて参りました。

  • 質問1 「過去に発生したこのような事象の頻度、原因及びとられた対応」について
     7号機は平成9年の運転開始以降、これまでに燃料漏えいは4体発生しています。
     これらの原因としては、微小な金属が偶発的に燃料集合体のスペーサなどに捕捉され、これら微小金属が燃料被覆管を磨耗させる等、偶発的に発生した事象と考えています。
     なお、当社において至近20年間では、16件(18体)の燃料漏えい事象が発生しています。
     この内9件(9体)については、漏えい燃料のPST(パワーサプレッションテスト:出力抑制法)を実施し運転を継続した後、定期検査において、漏えい燃料を健全な燃料集合体に取り替えています。
     他9体においては、従前の操作手順書等に定める、気体廃棄物処理系除湿冷却器出口排ガス線形モニタ等の上昇度合いから、然るべき対応操作(原子炉停止等)をとっております。
     再発防止対策としては、原子炉内清掃及び原子炉内への異物混入防止対策を強化し、また、燃料集合体内部への異物の侵入を防ぐフィルター付きの燃料集合体の装荷を順次進めています。
  • 質問2 「燃料棒に対する地震の影響、例えば保管状態や保管期間等に地震の影響がなかったかどうか」について
     地震時に炉内に装荷されていた燃料集合体を使用済燃料プールで保管するに際しては、移動作業時の燃料集合体の健全性を担保するため、燃料取扱機及び使用済燃料プール内保管ラックの健全性確認を行った後に燃料移動作業を行いました。
     その後、地震の影響の観点から、地震の際に原子炉に装荷されていた872体の内、燃料の使用状況に応じた特性の変化を考慮して、燃焼度の低いものから10体と燃焼度の高いものから10体について、水中カメラを用いた燃料集合体の外観点検を行い、燃料被覆管等に継続使用に支障のある損傷(有害なき裂、変形、その他の欠陥、構成部品の脱落)が生じていないことを確認しました。
     なお、念のために燃料集合体内部の構成部材(スペーサ等)の状態を確認する観点から、燃焼度の最も高い燃料集合体2体についてファイバースコープを内部に挿入して外観点検を行い、構成部材に異常のないことを確認しました。
     また、合わせて冷却水の流路確保の観点から、燃料集合体に対する地震応答解析を行い、燃料被覆管の健全性を確認しています。
     使用済燃料プールにおける保管期間中については、使用済燃料プールの水質を燃料被覆管の健全性を維持するための水質基準(導電率,塩素イオン及び全放射能等)を満足する状態で維持しており、保管期間中の影響も無かったものと考えています。

橋爪委員(7月28日)

 今回のピンホールからの放射性ガス漏洩について、以下の点を確認したい。

  • 質問1
     ガスのcpsの値そのもので運転を停止する基準値があるのかどうか
  • 質問2
     ヨウ素濃度などのその他の計測値は、通常時の値や運転を停止する基準値(社内・法令)と比較してどのようになっているか
  • 質問3
     今回の漏洩の状態は、高感度モニターを導入する以前であればどのように評価されていたことになるのか

東京電力の回答

 燃料漏えいが発生する要因としては、製造段階における要因や異物等による要因など、種々の事項が考えられます。当社としては、漏えい燃料発生の低減及び発生時の影響緩和方策の強化として、これまで様々な対策に取り組んできており、現在も継続して取り組んでいるところです。
 漏えい燃料発生の低減に向けた対策としては、微小な異物を低減させるために原子炉一次系でのワイヤバフ、ワイヤブラシの使用禁止、炉内清掃の実施、異物混入防止フィルタ付燃料の採用などを実施しています。
 一方、発生時の影響緩和方策の強化としては、ごく初期の燃料漏えい発生をオンラインで検知できる高感度オフガスモニタの開発・導入や、高感度オフガスモニタを活用して、漏えい燃料の同定と炉水中の放射能レベル増加を抑制する出力抑制法(PST:Power Suppression Test)を的確に実施できる体制を整えてきました。
 今回の事象においては、まず高感度オフガスモニタが、通常状態からの極々微小な変化(通常値の約3倍)を検知した後、その後約400倍まで上昇した時点で燃料棒の被覆管に微小な穴が発生したものと判断いたしました。なお、この段階においても、高感度オフガスモニタ以外の、例えば「排ガス線形放射線モニタ」などの指示値に変動は見られておらず、ごく初期の燃料漏えい発生を検知するために導入した高感度オフガスモニタが有効に機能したものと判断しております。
 燃料漏えいが発生したものと判断されたことを受けて、当社としては、すみやかに実施準備を整えた上で、PSTを実施いたしました。このことにより、燃料漏えい早期の段階で漏えい燃料を同定することができたものと考えております。

  • 質問1 「ガスのcpsの値そのもので運転を停止する基準値があるのかどうか」について
     高感度オフガスモニタは、燃料漏えいを早期に発見する目的で補助的に設置された機器であり、その指示値により、直接、発電所の停止を判断する基準値は設けておりません。なお、指示値の有意な変動の状況によりPSTに移行する手順を定めております。
  • 質問2 「ヨウ素濃度などのその他の計測値は、通常時の値や運転を停止する基準値(社内・法令)と比較してどのようになっているか」について
     上述のとおり、高感度オフガスモニタ指示値は、通常値からの僅かな変化時に約3倍、及び燃料漏えいと判断した変化時に約400倍を示しております。
     一方、事象発生(平成21年7月23日)から現在(平成21年7月28日)に至るまでの高感度オフガスモニタ以外の放射線モニタ指示値や原子炉水中のよう素濃度値に変動は確認されておりません。
     なお、運転を停止するか否かの判断としては、柏崎刈羽原子力発電所原子炉施設保安規定に運転上の制限として定められたものがあり、放射能レベルに関係するものとしては「原子炉冷却材中のよう素131濃度」が定められておりますが、現在までの原子炉水中よう素濃度は、運転中の通常値からの有意な変動はなく、制限値と比して十分低い値(約5万分の1)で推移しております。
  • 質問3 「今回の漏洩の状態は、高感度モニターを導入する以前であればどのように評価されていたことになるのか」について
     高感度オフガスモニタが導入される前は、燃料漏えいを検知する手段としては、原子炉水中のよう素濃度測定、オフガスのサンプリング測定分析(以下「手分析」という。)及び排ガス線形放射線モニタの監視という手段を有しておりました。
     今回の事象においては、原子炉水中のよう素濃度値や排ガス線形放射線モニタ指示値に有意な変動は見られておりませんが、高感度オフガスモニタ指示値上昇を受けて実施した手分析において有意な増加が確認されております。従って高感度オフガスモニタ導入以前であれば、定期的(1回/月)な手分析を実施した段階で、有意な変化に気づくことになったものと推定されます。

吉川委員(7月29日)

 原子力発電所が従来から破損燃料の存在を許容して運転が許可されていることは、一般市民の目からはおかしいという意見があるかもしれません。
 世界的動向の紹介は東電がされるでしょうが、わが国の原子力規制ではどのような考え方をとっているかは、この際保安院や安全委員会から、その見解、その合理的根拠の説明を聞いておかれるのはどうでしょうか。

原子力安全・保安院の回答

  1. 当院の評価
     当院は、東京電力(株)柏崎刈羽原子力発電所7号機の燃料漏えい原因と対策に係る報告について、下記のとおり、漏えい燃料に関する安全性、漏えい燃料の特定及び漏えいの抑制対策、漏えいの原因、定格出力上昇に伴う監視の強化の観点から、関係審議会の委員の意見も参考にして評価しました。
    1. 漏えい燃料に関する安全性について
       原子炉等規制法に基づく保安規定においては、燃料棒からの漏えいに関する安全上の規制として、原子炉水中のよう素濃度に関する制限と環境への放射性物質の放出管理目標値が設定されています。
      1. 原子炉水中のよう素濃度に関する制限
         原子炉を運転するにあたっては、燃料が破損していたとしても、放射性物質の放出による周辺公衆に対する被ばくの影響を与えないようにする必要があります。これを達成するため原子炉等規制法に基づく保安規定において、燃料の健全性を確保するため、代表的な放射性核種であるよう素131に着目し、原子炉水中のよう素131濃度を一定値以下の制限値(柏崎刈羽原子力発電所第7号機の場合:1.3×103Bq/g)に管理することを規定しています。
         今回の燃料漏えいは、通常運転時と変わらない3×10-2Bq/g(制限値の1万分の1未満)と極めて低く、保安規定の制限値に抵触するものではなく、安全上の問題はありません。
      2. 放射性物質の放出管理
         原子力発電所の通常運転中における放射性物質の放出に伴う周辺公衆の被ばくの影響を与えないようにする必要があります。これを達成するため、原子炉等規制法に基づく保安規定において、排気筒からのよう素131の放出量を一定値以下(柏崎刈羽原子力発電所全体の場合:2.3×1011Bq/年)に管理することなどを規定しています。
         今回の燃料からの漏えいは、通常運転時と変わらない原子炉水の濃度であり、排気筒放射線モニタの指示値は検出限界値以下となっており、周辺公衆の受ける放射線量は十分に低く保たれており、安全上の問題はありません。
    2. 漏えい燃料の特定及び漏えいの抑制対策について
       今回の対策で用いられた出力抑制法は、出力を抑制した状態で制御棒を操作し、高感度オフガスモニタの測定の変化から、漏えいのある燃料棒を特定するものです。また、特定された燃料棒に制御棒を挿入することにより、漏えいのある燃料棒の燃焼を抑え、燃料棒の被覆管内の圧力を抑制し、燃料からの漏えいの抑制を図るものです。
       東京電力はこの出力抑制法により、漏えいのある箇所を特定し、当該範囲の近傍にある制御棒5本を全挿入状態として出力を抑制し、漏えい量の低減を確認しました。
      当院としては、出力抑制法は技術的に確立しており、これまで延べ12プラントで実施された実績のある手法であると評価しています。
       東京電力においては、出力抑制法を的確に実施し、その結果、漏えい燃料の特定と漏えいの抑制を適切に実施したものと評価します。
    3. 漏えいの原因について
       東京電力は、燃料からの漏えいが発生した原因は、設計・製造・運転等に起因した要因及び中越沖地震による影響ではなく、異物等を原因とする偶発的事象と推定しています。
       当院としては、製造時の燃料体検査の記録やプラント試験における健全性評価等の結果から、設計・製造・運転等に起因したものでないと評価します。また、中越沖地震による設備健全性の確認において、地震力による応答解析の結果、水中カメラによる外観目視点検による確認等から、中越沖地震による影響によるものではないと考えます。
       当院としては、これらのこと及び過去の燃料からの漏えいの原因等から、東京電力が異物等により燃料被覆管に損傷が生じたものと推定することは、妥当であると考えます。
       また、放射性物質の半減期が長いキセノン133等の濃度が上昇し、半減期が短いキセノン138等の濃度変化が少ないことから、燃料被覆管の損傷は、ピンホール程度の孔と推定していることも妥当であると考えます。
    4. 定格出力への上昇に伴う監視の強化について
       定格出力への上昇操作において、漏えいが確認された燃料の出力を抑制して放射性物質の漏えいを低減させた状態が維持されているかを確認するため、放射性物質に関する監視の強化等が求められます。
       東京電力は、監視を強化するために、毎1時間に1回、高感度オフガスモニタおよび関連パラメータのデータの採取を行うとともに、原子炉水中のよう素濃度の測定及び監視、気体廃棄物の手分析についても、通常より頻度を高めて行うこととしており、当院としては、漏えいの状態を適切に監視するものと評価します。
       また、東京電力が漏えい燃料の監視に関連するパラメータの指示値が有意な上昇を示した場合などにおいてプラント停止を含めた対応を予定していることは、適切なものと評価します。
  2. 今後の対応
     今後、東京電力は、燃料漏えい箇所に制御棒を挿入した状態で、当該範囲の出力を抑制しながら、定格出力まで上昇させる計画としています。
     このような状態で運転を継続する場合においては、原子炉水中のよう素濃度の制限や放射性物質の放出管理目標値などの保安規定の要求事項を満たす必要があります。また、定格出力までの上昇操作においては、原子炉の熱的制限値などに関する保安規定の要求事項を満たす必要があります。さらに、出力抑制法により燃料からの漏えいを低減した状態を維持すること、よう素などの放射性物質の監視を強化することが必要です。
     このため、当院としては、今後、東京電力が出力上昇操作を実施する際には、これらの要求事項を満たしているかについて確認を行うとともに、燃料からの漏えいを低減した状態を維持して運転できるかどうかの評価について東京電力から報告を求め、当院として評価を行うこととします。

原子力安全委員会の回答

  • 原子力安全委員会は、原子力発電所における事故・トラブルについて、原子炉等規制法に基づく法令報告の内容について、報告を原子力安全・保安院より聴取するとともに、必要に応じて指摘・助言を行うこととしていますが、今回の事象については、法令報告対象に該当していないことから報告を受けておりません。
  • 原子力安全委員会は、「発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値に関する指針」において、施設周辺の公衆の受ける線量についての目標値(以下「線量目標値」という。)を実効線量で年間50マイクロシーベルトとするとともに、通常運転時における放射性物質の放出の管理にあたっては、線量目標値の達成を可能とする範囲内の年間の放出量又は平均放出率を放出管理の目標値として定め、これを超えることのないよう努めることを求めています。
     また、この線量目標値については、いわゆる「as low as reasonably achievable」の考え方にたって周辺公衆の受ける線量を低く保つための努力目標値であり、これを達成できないことをもって、運転停止、出力制限等の措置を必要とするような安全上の支障があると解すべきものではないとしています。
  • したがって、今回の燃料からの漏えいによる影響が、線量目標値を超えるような水準のものでない場合には、原子炉の安全上、運転停止を行う必要はないものと考えます。
  • 原子力安全委員会としては、今後必要があれば原子力安全・保安院から報告を受ける等、適切に対応していきます。

東京電力の回答

 当社といたしましては、法令等の規制要求を踏まえた上で、様々な情報を公開しつつ、日々安全・安定に運転すべく、管理された状態で運転を実施しております。
 海外の動向については適宜調査を行い状況を把握しておりますが、燃料漏えいが検知された場合直ちにプラントを停止するということは行われておらず、通常、原子炉冷却水中の放射能レベルが問題ない範囲で運転継続される、つまり軽微な燃料漏えい事象は運転管理の一環として対応している状況にあると聞いております。また、我が国においても、漏えい燃料を適切に管理した上で、運転を継続した例は数多くあります。当社においても過去に9例実績があり、的確な運転管理を行いながらプラント運転を継続することはすでに確立された運転方法であると考えております。

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