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第2回 柏崎市別俣地区の取組紹介
歩み続けて25年、地域愛で繋ぐ別俣の郷づくり
1.柏崎市別俣地区について
柏崎市街地から南へ13km、黒姫山(くろひめやま)の麓に位置し、130haの田んぼを久米(くんめ)、水上(みずかみ)、細越(ほそごえ)の3つの集落が取り囲む、盆地の地形が特徴的な地域です。
別俣地区では、以前から住民主体の地域づくり活動に取り組まれてきましたが、活動の更なる発展に向け、令和4、5年度の2か年をかけ地域の将来プランを策定しました。
プランでは、「この里を守り この里を活かし この里で生きる」をスローガンに、地域ビジネスの拠点となる法人設立に向け、農業の高収益化や、生活環境の整備、暮らしのサポート体制の充実等に取り組むこととしています。
令和6年度からはプランの実践に取り組んでおり、地域づくり活動の継続に向けた農村RMO(農村型地域運営組織)の設立の検討を進めています。
今回は、プランの実践主体でもある別俣未来推進部の小暮 覚(こぐれ きずく)さん、池嶋 喜久夫(いけじま きくお)さんに、別俣地区が今まで取り組んできた住民主体の地域づくり活動についてインタビューをさせていただきました。
別俣地区の風景 黒姫山を臨む
2.始まりは「子供たちに農村の良さを知ってもらいたい」という想いから
「子どもが農業に触れ合う機会が少なくなっているのではないか」
平成12年、地区の集まりの際に出たこの言葉がきっかけとなり、有志によって「別俣田んぼの分校」という、若い世代の親とその子どもを対象とした水田での農業体験に取り組んだことが、全ての始まりでした。
「3つの集落という小さい規模の地区だからこそ、集まりで顔を合わせる人がだいたい一緒だったこともあり、気心の知れたメンバーで『やってみよう』となったんです」と話す小暮さん。
有志数名で始まったこの「別俣田んぼの分校」がベースとなり、住民が主体となった様々な地域づくり活動が現在まで続いていくこととなります。
「別俣田んぼの分校」での稲刈体験の様子
3.「別俣未来推進部」の設立
「別俣田んぼの分校」の取組を進める中でも、少子高齢化、人口流出は進み、過疎化によるコミュニティ機能の低下が懸念されていました。その現状を受け、「田んぼの分校」のメンバーのうち有志8名が中心となり、別俣未来推進部の前進となる「別俣を考える会」を平成15年に立ち上げ、本格的に地域の未来に向けた話し合いが進んでいくことになります。
別俣未来推進部はコミュニティセンターの運営組織の1つとして設置されています。住民アンケート(小学生以上の全住民が対象)やワークショップを繰り返し行い、その結果を元に5つの部会を設け、活動に取り組んでいます。
【別俣未来推進部の5つの部会】
(1)生活支援 (2)持続可能な農業 (3)魅力発信 (4)ブト対策 (5)継続案件(空き家対策、特産品開発、住民コミュニティ強化など)
直近のワークショップの様子
4.生活支援「べつまたサポート事業」の取組
~できるときに、できる人が、できることを~
別俣未来推進部は幅広く取組を展開されていますが、県内でも特徴的な取組である「生活支援」のうち「べつまたサポート事業」について、詳しくお話を聞かせていただきました。
Q.「べつまたサポート事業」とはどのような取組ですか?
「通院や買い物に行くための足(交通手段)がない」「庭や畑の草刈りが大変だ」
という住民アンケートの結果を元に、助けて欲しい人と、助けることが出来る人のマッチングシステムとして設置した仕組みが「べつまたサポート事業」です。
通院や草刈り等の困りごとを「べつまたサポーター」として登録している地域住民がお手伝いするシステムで、令和6年4月時点で、利用者は42人、サポーターは33人となっています。
Q.「べつまたサポート事業」のマッチングの仕組みについて教えてください
利用したい人は窓口であるコミュニティセンターに事前に連絡し、コミュニティセンターがサポーターと調整、マッチングするという流れとなっています。
利用料金は時間制を基本としており、作業が終わったらその場で利用者がサポーターに支払い、その場で完結する仕組みとなっています。
Q.システムを作る際、住民の方とはどのように調整したのでしょうか。運営について不安はありませんでしたか?
住民アンケートの結果を元に作ったシステムであったため、利用者がいないという懸念はありませんでした。サポーターについては、別俣未来推進部にいる14名を基準に、予め協力者を確保した上で設置しました。いきなり本格的に始めたのではなく、まずはお試しとしてスタートしました。
現在は、活動財源として市のくらしのサポートセンター事業(附随事業)補助金を活用しています。
Q.マッチングできないこともあるのでしょうか
マッチングできないことは無いですが、平日の対応が可能なサポーターは10人程度で、対応に偏りが出てしまうことが課題です。どうしてもマッチングできない場合は、コミュニティセンターのセンター長でもある池嶋さん自らがスタッフ間で再調整の対応をしています。
Q.地域の方からはどのような声がありますか?
利用者からは、
・コミュニティセンターに申し込めば、マッチングまでしてもらえて大変助かっている。
・診療所への付き添いはもちろん、迎えに来ていただけることが大変ありがたい。
という感謝の声もある一方で、
・コミュニティセンターに頼むことは気が引けてしまい、近所の人に頼むことが多い。
という意見もあり、気軽に頼める環境づくりが必要と考えています。
・無料だと気を使ってしまう
という声を聞いて、料金設定をしたという経緯もあります。
サポーターからは、先程も言ったとおり
・平日の依頼が多く、限られたサポーターの対応に偏った。
という声があり、平日に対応できるサポーターの確保について検討が必要だと考えています。
5.「これまで」と「これから」について
別俣地区は、今回ご紹介した生活支援以外にも、体験交流活動や農家レストランとしての廃校の活用、季節ごとの農作業体験・自然体験イベントの開催等、様々な取組を展開されており、平成28年には「豊かなむらづくり全国表彰事業」で農林水産大臣賞を受賞されました。
ここまで取組を広げ、続けることができた理由については「地域愛」が大きいとおっしゃられていた小暮さん、池嶋さん。お二人にご自身の想いについてお聞きしました。
小暮さん
「子供たちに、自分たちの育ったところはこんなに良いところだよ、ということを教えたいという想いが源にあると思っています。また、子供たちだけでなく、集落の農業者を始め、様々な方から協力をいただいてきましたが、集落の方達の生きがいや地域への愛着の醸成にも繋がっていると感じています。」
池嶋さん
「正直なところ、サラリーマン時代、集落には寝るために帰ってきているだけで、地域に対しての想いが特別強いわけではありませんでした。退職し、地域づくり活動に関わるようになった際に、先輩方の活動に刺激を受けて、地域に対する愛着が生まれてきたところです。」
今後は、この想いを次の世代に繋げるため、農村RMO(農村型地域運営組織)の設立に向けて検討を進めています。「この里を守り この里を活かし この里で生きる」の実現に向けて、今後も活動を続けていきます。
様々な取組の積み重ねが、今の別俣地区をつくっています
6.インタビューを終えて
地域づくり活動を続けていくためには、地域への想いが大きな原動力となっていること、また、
・一人ではなく仲間たちと一緒に
・住民みんなから意見を聞きながら方向性を検討する
・本格的な実践の前に、まずは試験的にやってみる
・地域全体の仕組みづくりは、コミュニティセンター等の行政機関と連携する
ということが、取組を継続・発展させていくポイントだと感じました。
今回は、住民主体で地域づくり活動を展開している、別俣地区のご紹介でした。
県といたしましても、別俣地区の将来プランの目標達成に向けて、引き続き関係機関と連携し、サポートしてまいります。