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島民クローズアップ・インタビュー(テーマ:“育む(はぐくむ)”) vol.12

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0056327 更新日:2019年3月29日更新

 島内で頑張っている人を紹介する「島民クローズアップ・インタビュー」をお届けします。
 毎月、佐渡地域振興局の各所属や事務所が「育む(はぐくむ)」というテーマをもとにふさわしい方を訪ね、インタビューを実施します。
※インタビューの記事は、毎月21日に更新します。

 第12回目は、NPO法人 佐渡芸能伝承機構理事長の松田祐樹さんを訪問しました。(訪問日:6月29日)
 松田さんは、島内の集落に伝わる祭りを伝承する活動を通じて、集落のまとまりを保ち、人と人との交流を活発にする活動を積極的に行っています。活動にかける熱く、そして温かな思いを表情豊かに語ってくださいました。

松田祐樹 理事長の画像
松田祐樹 理事長

(注)
 ここでいう「祭り」とは、いわゆる夏祭りなどのイベントとは異なり、主に各集落に独自の形で伝わる神事芸能のことを指します。
 島内には祭りが160ほどあり、その祭りの中で舞われる鬼太鼓(おんでこ)は120ほどあると言われています。(鬼太鼓とは、佐渡にしかない珍しい芸能で、島内各地にそれぞれ独自の様式で伝承されています。勇壮な太鼓にあわせて鬼が舞うのでこの名が付いています。)
 松田さんは、このたくさんある祭りのいくつかについて、伝承が行われるよう支援を行っています。

Q1 NPO法人 佐渡芸能伝承機構の活動内容を教えていただけますか?

表情豊かに語る松田さんの画像
表情豊かに語る松田さん

 佐渡の各集落に伝わる祭りを何とか後世に伝承していきたいとの思いから、島外の学生を呼んでお祭りを一緒に体験してもらったり、お祭り自体を映像記録として保存したりする活動を行っています。

 私自身、父の影響で小学校一年生のころから鬼太鼓を舞っているのですが、昔から地域の中で行われる祭りが本当に大好きなのです。一度学生のときに島を離れましたが、家業を継ぐために戻ってきてからは、改めて地元に伝わる祭りのすばらしさに気づき、個人的な趣味として見て回っていました。

 そんなことをするうちに、私の趣味に賛同してくれる仲間も増えてきて、一緒に組織として活動しましょうという話が持ち上がり始めました。そして、一年前にNPO法人としてのスタートを切って、今に至るといったところです。

Q2 祭りの維持は昔に比べて厳しくなっているということでしょうか?

風鈴のイラスト 確実にそうなっていると思います。集落の高齢化は深刻な問題で、近年、大好きな祭りが担い手不足などで、どんどん形を変えていってしまうことに危機感を持っています。

 祭りは集落そのもの、集落の宝物なのです。祭りがにぎやかになれば、集落も元気になる。自分の活動を通して、少しでもそのお手伝いができたらという思いで動いています。

Q3 NPO法人設立からちょうど一年ほど、この一年間で変化したことはありますか?

 一番変わったことは、このような取材が増えたことですね(笑)。
 あとは、やはり多くの人に活動を理解してもらいやすくなったことが大きいと思います。

 例えば、全5回の予定で「鬼太鼓の伝播を探る」という講演会を行っていますが、おかげさまでたくさんの方からご来場をいただいています。

松田さんとお話ししていると、祭りが好きという気持ちが本当によく伝わってきます。の画像
松田さんとお話ししていると、祭りが好きという気持ちが本当によく伝わってきます。

Q4 本土から祭りを体験に来る学生さんたちはどんな反応ですか?

 今年の4月12日に行われた豊岡集落の春祭りに、新潟大学の学生を受け入れました。数日間稽古をするうちに学生と集落の人たちがすっかり打ち解け、祭り本番も大変な盛り上がりでした。

 学生は、高齢化のために約50年間途絶えていた大獅子を復活させてくれ、集落の人たちが大喜びしているのを見て、本当に嬉しそうな表情を見せてくれました。

 祭りの後も交流が続いていて、学生はまた近いうちに必ず集落の皆さんに会いに来ると言ってくれています。集落の子どもたちも楽しみに待っているのですよ。祭りに関しては学生より「先輩」の子どもたちが踊りを教えたのがきっかけで、本当に仲良しになりましたから。

 6月15日の羽吉祭りには、国を超え、アメリカオレゴン州のパシフィック大学の学生を受け入れました。こちらもおかげさまで温かい交流を生み出すことができ、学生も集落の人も喜んでくれました。

豊岡集落での受け入れの様子を映像で見せてくださいました。の画像
豊岡集落での受け入れの様子を映像で見せてくださいました。

Q5 受け入れ後、特に地域が変わったと思うことはどんなところですか?

すいかのイラスト何と言っても、集落の人たちがいきいきとしていることです。私も若いとき、祭りが終わってしまうと、「さみしいな。また早く祭りが来ないかな。」と思ったものですが、今、集落の人たちがみんなそんな気持ちになっているのが分かります。

きっと、学生が自分たちの祭りの魅力を分かってくれたというのが何より嬉しいのでしょうね。

Q6 今まで祭りに携わってきて、一番嬉しかったことはどんなことですか?

「一生懸命やっているというよりは、ただ好きだから続けているのです。」そう話す松田さんの目には確固たる信念が感じられました。の画像
「一生懸命やっているというよりは、ただ好きだから続けているのです。」そう話す松田さんの目には確固たる信念が感じられました。

 たくさんあるのですが、特に印象に残っているのは、4月29日に両津の椿地区で行われた祭りでのエピソードですね。

 昨年、この祭りを見に行ったとき、ものすごく鬼太鼓が上手な高校生が目にとまりました。高校3年生で、今年の4月から進学のために島を離れたと聞いていたのですが、きっとあんなに上手に舞える子なので、祭りには戻ってきているのではないかと期待して今年も見に行ったのです。そうしたら、期待通り戻ってきていました!

 私が声をかけたら、その子は「私はここの鬼太鼓を守るために毎年帰ってきます。就職は佐渡にするつもりです。」と話してくれました。その言葉を聞いて、何だか目頭が熱くなりましたね。

 この出来事で、「祭りには人を惹きつける力がある」というのだという思いをさらに強くしました。祭りがあるからこそ、集落のコミュニティがある。祭りは集落の結束を強くしてくれる、ありがたい存在なのです。

Q7 では反対に、悲しかったことやつらかったことはありますか?

 やはり、担い手がどうしてもいないということで、祭りが維持できない集落を目の当たりにしたときです。

 担い手がいなくなったとき、今後の祭りの未来を考えると三つの手段があります。一つは「外の力を借りて現状を維持する」。二つ目は「できることだけをやる」。そして、最後は「やめる」ということです。

 何とか前者の二つを選択できればよいのですが、どうしても「やめる」という手段を取らざるを得ない場合は、本当に心が痛みますね。

Q8 将来的に、活動をどのような方向に進めていきたいですか?

 学校のイラスト学生の受け入れでは、将来的なことを考えると集落と大学が直接活動を行うことができるような仕組みを作ることができたら、と考えています。

 そして、私自身としては、できればカメラを持たずに祭りを見て歩きたいですね。今は、活動をするにあたってどうしてもカメラが必要なのですが、レンズを構えているとじっくり見ることができず、いつも残念に思っていますので(笑)

 さらに、こちらから各地の大学に出かけて行って、鬼太鼓のワークショップをたくさん実施して、鬼太鼓のすばらしさを広めていけたらとも考えています。

Q9 松田さんの活動そのものとは少し違う話題なのですが、「観光の島 佐渡」を考えたとき、「ここが変わると佐渡はもっと良くなる」と思うところはどんなところですか?

佐渡をイメージしたイラスト(トキ、たらい舟、わかめなど) たくさんの人に佐渡を「もっと知ってもらわないと!」と思います。何より佐渡の人が佐渡を知らないのかもしれないとも思いますね。

 旅先で、地域のことをよく知っている親切な人に出会うと、「また行きたい」と思うことが多いのではないでしょうか。

 観光は「人」なのです。よって、「人」が育たないと観光は活性化しないと思うので、佐渡をよく知り説明できる人を育てることが必要なのではないかと思います。
 「あそこに行くと、○○のことを知っている「人」がいる」というのが強力な観光資源になりうると信じています。

Q10 ホームページを見てくださっている方に、メッセージをお願いします。

 一番伝えたいことは「祭りはええもんじゃ」ということです。祭りは目的を持った若い人たちの集まりです。これが地域の人たちに活力を与えることは間違いありません。

 今は、佐渡の鬼太鼓はイベントなどで見ることができるようになりましたが、やはり祭りはその集落の風景、雰囲気、人々など集落のすべてが一体となって行われるところに醍醐味があります。そのすばらしさ、奥深さは、ステージ上で披露される鬼太鼓とは到底比較の対象にはならないものです。

 佐渡の祭りはすごいということをたくさんの人に理解してもらえるようになることが、私の願いです。

相川の高千地区で行われた「北川内祭り」の様子の画像
相川の高千地区で行われた「北川内祭り」の様子

NPO法人 佐渡芸能伝承機構のブログはこちらからご覧ください。<外部リンク>


インタビュアーから

 松田さんが目を輝かせながら語ってくださった「祭り」の魅力。インタビューをしながら、自分がこれまで佐渡で出会うことができた祭りを思い出してみました。

 何より印象に残っていることは、祭りに集落の人の「心」があり、まるで生きているように感じられたことです。それは、単なる「イベント」の領域を完全に脱し、独特の動きや音楽によって、集落そのものへの敬意や感謝の念を表現している厳かなものでした。
 さらに、人々のまなざしが真剣で、伝統を担っていることの誇りや気概などがひしひしと感じられたことを覚えています。

 今回のインタビューで、祭りが地域の人を育て、生きがいを与え、地域の結びつきを強くする守り神のような存在であるということを知り、驚きを隠すことができませんでした。
 自分のやっていることは、「保存」ではなく「伝承」だと強調した松田さん。祭りを人から人へ受け継ぐことで、今を生きる集落の人の「心」も受け継がれていく。この「心」がある限り、集落は生き続け、人も育まれていくに違いない。そう強く感じることができた実り多い取材でした。

佐渡地域振興局企画振興部 戸田


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