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島民クローズアップ・インタビュー(テーマ:“育む(はぐくむ)”) vol.1

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0056322 更新日:2019年3月29日更新

 今月から、新企画として島内で頑張っている人を紹介する「島民クローズアップ・インタビュー」をお届けします。
 毎月、佐渡地域振興局の各所属や事務所が「育む(はぐくむ)」というテーマをもとにふさわしい方を訪ね、インタビューを実施します。
※インタビューの記事は、毎月21日に更新します。

 第1回目は、環境省佐渡自然保護官事務所の岩浅有記(いわさゆうき)自然保護官を訪問しました。岩浅保護官はトキの試験放鳥を間近に控え、人とトキが良い関係を保ちながら生活できる環境を「育む」ために日々奮闘しています。
 仕事の内容から佐渡の好きな景色や食べ物などの素顔までを笑顔でいきいきと語ってくださいました。

岩浅有記 自然保護官の画像
岩浅有記 自然保護官

Q1 まず、岩浅保護官のお仕事の内容を教えていただけますか?

にこやかに語る岩浅自然保護官の画像
にこやかに語る岩浅保護官

 昨年の4月に事務所が開設されてから、トキの放鳥に向けて、トキたちが事前に行う訓練の計画を立てる仕事などに携わっています。

 計画を立てる際には、野生復帰ステーションにいる獣医師、環境省(本省)、新潟県など本当にたくさんの方と相談します。また、鳥類学者、生態学者などの有識者で構成される「トキ野生復帰専門家会合」でも入念に検討するとともに、地域の方々のご意見もお聴きしています。

 具体的な例を一つあげると、トキを放鳥した場合、追跡調査をする必要が出てきます。その際どのような方法で調査をするのがよいのか、トキに付ける機具はどのようなものがよいのか、ということなどを検討しています。

Q2 今、最も力を入れている取り組みはどのようなことですか?

えさをついばんでいるトキのイラスト 野生復帰に向けて、健全な個体の確保と、トキの生息環境・社会環境の整備を柱に取り組んでいますが、中でも「社会環境の整備」が特に重要だと考えています。
 トキの野生復帰は、地域の理解をいただかなければ実施することができません。そこで、トキを放鳥する意義などを地域に出かけて行って、説明させていただいています。「民間」「住民」「行政」などが連携し、同じ立場で一緒になって考えることが必要です。
 その意味で、私たちには皆さんを「つなぐ」役割が課されているのだと考えています。

Q3 環境省佐渡自然保護官事務所ができて、1年4ヶ月あまりが経ちました。開設当初と現在とを比べて、トキをめぐる情勢に変化は感じられますか?

仕事中の岩浅保護官 「鳥に関わる仕事をするのはこれが初めてです。」の画像
仕事中の岩浅保護官 「鳥に関わる仕事をするのはこれが初めてです。」

 秋の放鳥に向けて、地域では少しずつ気運が盛り上がってきており、取り組みも加速してきていると感じています。様々な取り組みが少しずつつながり始めています。
 例えば、トキの住める環境を作るために、川、農地、森林をセットで考えてお互いに連携するなど、良い流れができてきたと考えています。

Q4 トキは岩浅保護官にとって、どのような存在ですか?例えば、トキに一番愛情を感じる瞬間などがあれば、教えてください。

羽ばたいているトキのイラスト ご質問の意図に反するかもしれませんが、実はなるべくトキには愛情を注がないようにしています。もちろん、トキはもともと野生の鳥なので、野生に定着してほしいという気持ちは強く持っています。そこで、なるべくトキを客観的、科学的に見るように心がけています。また、羽ばたいている姿はとても美しいと思います。

Q5 これまでお仕事をされてきた中で、一番嬉しかったことは何ですか?

3人家族のトキのイラスト たくさんあるのですが、特に嬉しかったことは、まずトキが予期していた以上にうまく訓練ができているということです。トキの前に立ちはだかる課題をトキ自身が一つ一つクリアしていっています。はばたきも大変力強く、上手に長時間飛べるようにもなりました。今は人間の飼育下にいますが、やはりもともとは野生動物だったことを感じさせられます。
 それから、嬉しかったこととしては、地域の人々の温かさをあげないわけにはいきません。皆さん大変気さくで、トキについて語りながら夜一緒にお酒を酌み交わすこともあり、本当にありがたく思っています。

Q6 反対に、お仕事をされてきた中で、悲しかったことやつらかったことは何ですか?

 片足立ちのトキのイラストもちろん、大きいプロジェクトですから想定したように進まないこともたくさんありますが、それは当然のこと。つらさを上回るくらい、嬉しいこと、楽しいことがある仕事だと思っています。

Q7 佐渡で一番好きな風景と、食べ物を教えてください。

 清水平(しみずだいら)に行く途中で見る、大佐渡と国仲平野の風景が好きです。また大佐渡から見た小佐渡もすばらしい景色だと思います。
 食べ物は、何と言ってもまずお寿司が安くて美味しいことに驚きました。それから、お米と水が美味しいから、当然そこからできるお酒も絶品。他にも、柿やそば…本当に美味しい物があふれている島だと思います。

Q8 昔はトキが稲を踏み荒らしてしまったという話もあり、トキの放鳥を不安視している人もいると聞きます。そういう人たちに対しては、どのような説明を行っていますか?

親子のトキのイラスト 例えば、コウノトリの放鳥に成功した兵庫県豊岡市では「コウノトリ育む農法」という環境にやさしい農法で育てたお米がたくさん売れています。つまり、環境にやさしい取り組みとビジネスが両立する時代なのです。
 こうしたことは、押しつけでやっていただいても定着にはなりません。子や孫に豊かな環境を残すため、地域の人とトキが一緒に生きていくことが必要ということをじっくりと時間をかけて、ご理解いただければと思っております。

Q9 まもなくトキの試験放鳥を迎えます。今の心境を教えてください。

「本当に仕事が楽しい」と生き生きとした表情で語ってくれました。の画像
「本当に仕事が楽しい」と生き生きとした表情で語ってくれました。

 トキたちは今、試験放鳥に耐えうるように、多くの人に見守られながら訓練を続けています。「放鳥」は一つのプロセスであり、新たなスタートだと感じています。
 やはり実際に放鳥してみないと分からないこともたくさんあると思いますが、今は放鳥がうまくいくように人間ができることを日々準備しています。

Q10 ホームページを見てくださっている方に、メッセージをお願いします。

順化ケージをバックに1枚の画像
順化ケージをバックに1枚

 生物は一度絶滅してしまうと、復活はできないということをお伝えしたいと思います。トキも種としては中国にいますが、日本のトキはすでに絶滅してしまいました。野生復帰をさせるのにもいかにお金と時間がかかるのか、トキの例でよくお分かりいただけると思います。そうならないために、普段から「エコ」を心がけ、トキをきっかけに日ごろの生活を少しでも振り返っていただけたらと思います。
 最後にもう一言。「佐渡はよいとこ、来てみてね!」


インタビュアーから

 今やトキは佐渡の代名詞的存在となり、知らない人はほとんどいないまでになりました。しかし、かつて佐渡のトキが一羽、また一羽といなくなり、絶滅の危機がささやかれたころ、今のように野生復帰を成し遂げようとする段階までになるとはほとんどの人が予想しなかったのではないでしょうか。

 日本古来のトキは確かにいなくなりましたが、中国から贈られたトキがこうして着実に数を増やし、自力でヒナを生み育てるまでになるには、本当に多くの人の血のにじむような努力があったことと思います。

 岩浅保護官は「トキにはあえて愛情を注がないようにしている」と話しますが、多くの人がトキを想い奔走する努力や温かい気持ちは、必ずやトキに届いていることでしょう。

 「トキ」をキーワードに、地域の人たちが職業や年齢の垣根を越えて汗を流す光景があちこちで見られるようになりました。人とトキが健やかに暮らせる環境を「育む」ことは、本来私たちが心の奥で必要としている豊かな人間関係を改めて「育む」ことにつながっているのかもしれないと、今回のインタビューを通じて感じました。

佐渡地域振興局企画振興部 戸田


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