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田中産業 株式会社
一般国道253号三和安塚道路 農道ボックス工事の3次元設計データ。左側を大きく掘削し、掘削土砂を右側に盛土することからスタート |
「ICT施工が普及し、その流れはより加速しそう。現場でもさらなる有効活用を推進していきます」と現場代理人の大瀧正敬さん |
3次元モデルデータの活用は今後さらに進んでいきそう
田中産業の土木現場では、AR(拡張現実)を活用したICT(情報通信技術)施工が行われています。ARとは“Augmented Reality”の略で、現実の風景の中にCGで作られた3D画像などを重ねて表示し、現実世界を拡張する技術のこと。例えば測量予定地の写真をもとにCGを重ね合わせた3次元データを作れば、構造物の完成イメージを誰もがつかみやすくなります。それをこちらの会社では、工事が始まる際の地域住民への説明会などで使っており、分かりやすいと参加者からも好評です。
建設の世界ではさらに、「BIM/CIM」と呼ばれる3次元モデリング化の取り組みが国交省直轄工事を中心に進められています。BIMは“Building Information Modeling”の略で主に建物情報の3次元モデル化を、CIMは“Construction Information Modeling”の略称で、主に建設情報の3次元モデル化を指す言葉。施工計画書などにこの3次元モデルデータを取り入れることで、現場管理の効率化や施工計画の最適化、設計変更の効率化などが図れるのです。実際、発注者も現場の技術員も視覚的に理解しやすくなり、打ち合わせは格段にスムーズに。作業時の正確性や安全性も向上し、こうしたBIM/CIMへの取り組みは今後も一層活発になっていくことが想定されます。
いま手がけている農道ボックス工事の現状。左上は車が通れるコンクリートボックスの3次元データ。イメージ通りに工事が進んでいることがわかる
ICT活用の取り組みが国土交通省からも評価
ICT技術を活用した施工で、測量、丁張りなどの現場作業に携わる手間が大きく軽減されています。また、3次元設計データをICTバックホウに取り込むことで、掘削データがリアルタイムで画面表示され、高い精度での掘削作業が可能になりました。補助員を配置して土の位置を調整したり、危険な場所での人的作業が必要なくなったので、安全に工事を進められるうえ、作業効率も格段に高まり、その分、他の業務を行う時間も確保できています。
こうしたICT施工の実績が評価され、田中産業は、国土交通省が創設した「i-Construction大賞(平成30年度)」の「地公体等工事/業務部門」において、最高賞にあたる国土交通大臣賞を受賞しました。このi-Construction(アイコンストラクション)大賞の評価の対象は、コンピューターやネットワークなどのICT技術を建設現場に取り入れることで生産性の向上や経営環境の改善を推進している全国各地の企業。ICT活用によって建設現場を魅力ある職場へ進化させていく取り組みは、ここ新潟でも確かな形となってきています。
操作パネルに取り込んだ3Dデータが表示されるICTバックホウ。AR技術を活用したICT施工の様子 |
ICT施工で工事現場の作業効率がアップ。緊張感ある仕事の合間にも、スタッフ間に和やかな空気が流れる |
今回取材にご協力いただいた企業
〜田中産業 株式会社〜
上越市に本社を構える田中産業 株式会社は、上越エリアを中心に、官公庁発注の公共事業(土木・建築・圃場整備)や民間企業の社屋などの建築を行う総合建設業社です。公共工事を主としているので地域の著名な公共建物や地図や歴史に残る道路、橋などの建設に力を発揮できる……。そんな「子や孫まで受け継がれる技術」を提供しています。
また、土木だけではなく、運送業務や農業も行っています。特に農業は、令和6年度の稲の作付面積が319haもあります。田植えから稲刈りまで一貫した生産体制で、食品安全、環境保全、労働安全などの持続可能性を確保するための生産工程管理の国際規格「GLOBAL G.A.P.」も取得しています。2023年には上越市立東本町小学校との共同企画で、コシヒカリの種もみをロケットで宇宙に打ち上げ、約1ヵ月の宇宙滞在後に地球に帰還。2年間の栽培を経て、子どもたちに食べていただく取り組みも行っています。
農業への取り組みは、上越市の基幹産業である農業を守るため。すべては地域のためなのです。1961年の創業から60年余、「地域社会に貢献する」という社是を、土木、運送、農業などのさまざまな分野で実践している企業です。
田中産業 株式会社
本社所在地/上越市
業種:建設業、運送業、農業 他
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