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株式会社 郷土建設藤村組
「2018年よりICT活用工事の内省化を図り、2021年から本格運用しています」と杉本義夫常務取締役。背景には現場へ向かう作業車の位置情報を映す大型モニターが
ICTで建設システム全体の効率化と
生産性向上を目指す
国土交通省が進めるi-Construction(アイ・コンストラクション)。測量から設計、施工、検査、維持管理に至るすべての事業プロセスでICT(情報通信)を導入することで建設生産システム全体の効率化と生産性向上を目指すこの取り組みに、上越市の郷土建設藤村組も積極的に取り組んでいます。
現在、オフィスと各現場はICTでつながっていて、現場に設置したカメラで状況を共有、事務所の大型モニターにリアルタイムで映し出されます。大雨などの自然災害が想定される際は、以前なら休日であろうと現場に確認に行ったものですが、いまはスマートフォンで確認できます。それぞれの現場へ向かう運搬車の積載量や、現在どこを走行しているかも分かるので、過積載の防止はもちろん、すれ違いが困難な狭い道路でもスムーズに指示が出せ、運搬業務の効率化とスタッフの安全確保を図っています。
さらに、建設現場でのICT施工も進行中です。ドローン撮影や地上型レーザースキャナーを用いた3次元起工測量で図面を描くことが容易になり、測量にかかわる人員とコストを削減。土を掘る際も、いままではベテラン技術者の経験に拠るところが多かったのですが、ICT技術の活用で土量の算出が正確になり、残土量のボリュームも把握しやすくなりました。また、ICT建設機械による施工で、工期短縮はもちろん安全面も向上するなど、まさにICT技術の活用が随所で展開されています。
RTK搭載型のUAV(ドローン)を飛ばして、上空から現場を写真撮影。より立体的で分かりやすい3次元起工測量につなげる |
3次元起工測量はもちろん、特に3次元出来形測量に不可欠なTLS(地上型レーザースキャナー)。短時間で簡単に測量ができる秀逸な機械 |
スマートオフィスでICT技術と人との融合を図る
ICT技術やAI技術を積極的に取り入れながらも、建設から30年近く経っていた社屋やLANケーブル自体の耐用年数なども踏まえ、何よりそれらICT技術を使う従業員が快適に仕事できる環境づくりが不可欠と考えました。そこで、2019年末にオフィス改築プロジェクトを立ち上げ、2021年より工事に着手。2022年3月に最新型に生まれ変わったオフィス全体を、こちらでは、従業員が効率良く密度の濃い仕事がスマートにできるという意味合いで「スマートオフィス」と呼んでいます。
前述した現場とつなぐモニターの設置はもちろん、室内の温度や湿度、照度などの自動制御で省エネを実現。床や壁をモノトーンや木目調にすることで緊張感を緩和し、カフェのようなリフレッシュルームも用意しました。一方で、仕事により集中できる個室を新設。そこにも大容量の通信回線、無線LANを整備し、WEB会議対応の防音の効いたミーティングルームも設置。さらに、災害時に稼働する自家発電システムを導入し、緊急時でもICT技術が活用できるようにしました。こちらのスマートオフィスは、ICTと人との融合を意識した拠点として大きな進化を遂げたのです。
カフェのような雰囲気のリフレッシュルーム。ここにもモニターがあり、快適に仕事できる |
コワーキングスペース。学生が放課後の学習に訪れるなど地域の交流拠点にもなっている |
今回取材にご協力いただいた企業
〜株式会社 郷土建設藤村組〜
郷土建設藤村組は1954年創業。浦川原区、安塚区、大島区、牧区など上越市内を主な業務エリアに、土木事業、建造物補修事業などを行っています。同エリアは新潟県随一の豪雪地帯でもあるため、冬期は除雪作業にも取り組む、まさに地域密着の業務を展開する企業です。
同社のポリシーは、「ワクワクするモノづくりがココにある」。地域の道路を作る、建物を作る…土木構造物を作ることとは、まさに郷土を建設することにつながるものであり、そこに携わることができる喜びこそが仕事をするワクワク感につながる、と考えます。そのため、新しい知識や技術の取得にも意欲的。上越市の中山間地という自然豊かな土地にある建設会社ですが、ICTなど先進的技術を積極的に導入し、かつ、それらを(外注発注ではなく)できるだけ内省化して自社の武器としながら成長していくことを信条にしています。
株式会社 郷土建設藤村組
本社所在地/上越市
業種:土木工事 建築工事 他
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