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森林研究所たより 無花粉スギ研究の今後の展望(林業にいがた2015年2月号記事)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0058556 更新日:2019年3月29日更新

1 経緯

 本県では無花粉スギに関する試験研究を平成11年から行っており、現在までに無花粉スギ(富山不稔及び新大不稔1号)と精英樹を交配させた無花粉スギ100個体を開発し、さし木供給するための採穂園を長岡市日野浦地内に造成しました。この開発経緯については林業にいがた688号(平成22年2月号)に掲載しています。

2 100個体開発の理由

 無花粉という特徴は実生になると失われたり、出現割合が少なくなったりします。そのため、さし木苗(クローン苗)での供給となりますが、数クローンだけでは気象害や病虫害などで大被害が出る可能性があり、それらのリスクを分散するには多様な性質を持つ個体群で林分を構成するのが重要です。さし木でありながら実生苗のようなばらつきを持たせるという考えで100個体を開発しています。
 しかし、さし木造林は新潟県など多雪地帯ではあまり行われず、実生苗の造林が主体です。その理由として、実生苗はさし木苗と比べて根の発達がよく、初期成長も良いと考えられているためです。

3 実生無花粉スギは可能か

 無花粉は劣性遺伝のため、通常の交配では後代実生苗はすべて通常スギになりますが、母樹や花粉親を工夫すると50%の確率で無花粉スギ実生苗を出現させることが可能となります。
 但し、この場合、育苗中に無花粉スギかどうかを確かめる「検定」という作業が必要になります。富山県は検定作業を行い、無花粉が確認できた実生苗を平成24年から供給し始めました。

4 本県の取り組み

 このような検定作業を行うことはコスト高となるため、「無検定」で実生苗を生産できないでしょうか。本県は平成25年度から新潟大学と共同で、無花粉スギの出現確率を50%超にする試験研究を開始しました。具体的には無花粉発現遺伝子が異なる「富山不稔」と「新大不稔1号」のどちらの要素でも無花粉が出現する個体を交配によって作出し、それを用いることで、理論上、得られる種子の75%が無花粉となる手法です。得られる苗のうち75%は無花粉になるので、無検定でもよいと考えられます。

人工交配の作業の様子(交配袋かけ)の画像
人工交配の作業の様子(交配袋かけ)

5 おわりに

 現在、順調に交配試験を進めていますが、75%が無花粉になる種子が採れるまでには、あと数回の交配が必要で、それには7年ほどかかりますが、無花粉スギ実生苗の実現にはどうしても必要な時間となります。
 このように時間がかかる林木の品種改良ですが、将来、無花粉スギが多くの方に必要とされ、日本の大切な財産となっていくものと信じて研究を進めておりますので、ご理解を頂くとともに、これからの無花粉スギの普及についてもご協力をお願いします。

森林・林業技術課 岩井淳治

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